みんなで料理
「そろそろ夜ご飯作らなきゃな」
リビングでくつろいでいると、ケイトが耳を立てて呟いた。そうか、もうそんな時間か。
「そうだ、またみんなで料理をしないか?」
「お、いい考えだぞ。なら、みんなで作れる料理にしなきゃだな!」
さっそくみんなでキッチンに並ぶ……とさすがに手狭だな。ま、そもそも一人用だし当然か。俺とケイトだけがキッチンに立つ。手も洗って準備万端だ。
ケイトはパンを水につけてから、二種類の肉をまな板の上に置いた。
「よし、まずは挽肉を作るぞ!」
「おー。ここにある肉を全部細かくすればいいんだな?」
ケイトと一緒に、ひたすら肉を細かく刻んでいく。五人分だから中々の量だ。手が疲れてきそうだな……。
「肉は合挽だ。牛とボアを七対三で混ぜるぞ」
「ふむふむ」
刻み終わったら同じ器に挽肉を入れる。
次はにんにくとパプリカ、タマネギだな。
「これも細かくするのか?」
「そうだぞ。しっかり刻んでくれ」
野菜達も細かく刻んだら、肉と同じ器に入れた。リーファが興味津々に見ている。
ケイトが水につけていたパンも器に入れたら卵を割り入れて、スパイスを振りかけた。
「これをよ〜く混ぜ合わせるんだ」
「おう」
しっかり混ぜ込んでいくと、だんだんと粘りが出てくる。これくらいでいいかな?
「次は?」
「タネを作るぞ! みんな、手を洗ってくれ」
混ぜ合わせた肉と大皿をリビングに持っていく。手を洗い終わったみんなが戻ってきた。
「ちょっと平べったい丸にするんだ。こんな感じだな」
ケイトがお手本を見せてくれる。その通りに手のひらに肉を乗せて、丸く整えていく。
「レイスは焼く時に手伝ってくれ!」
「ああ」
「うーん、うまくいかないなあ。でも楽しいね!」
大皿に並べられたリーファの肉だねは少し歪だ。俺とオリヴィエが作ったものはまあまあ綺麗で、ケイトが作ったものは一番整っている。あと……明らかにサイズが小さい。うわー、かわいいな。そうだよな、手ちっちゃいもんな。
肉だねを作り終えたら、今度は焼くらしい。これはケイトとレイスがやってくれるみたいだ。
「肉だねに小麦粉をつけて、油をひいたフライパンで焼くぞ。そしたらひっくり返すんだ」
「こうか」
「その調子だぞ!」
ジュウジュウと肉が焼ける良い音が聞こえてくる。美味しそうな匂いも漂ってきた。お腹がくぅと鳴く。
リーファはそわそわしていて待ちきれない様子だ。
「すっごく美味しそうなにおい! はやく食べたいなあ」
「そうだな。きっとすごく美味しいだろうよ」
暫し待つと焼かれた肉と野菜、パンが乗せられた皿が運ばれてきた。ホカホカと湯気を立てている。
「おまたせ。できたぞ! 帝国料理、フリカデレだ」
「わ〜っ、美味しそう!!」
リーファが目を輝かせる。
全部の皿を運び終えて、みんなが席につく。さっそく切り分けて一口。
スパイシーな肉は柔らかく、噛む度にじゅわっと肉汁が広がった。
「ん〜っ、おいひい……!」
「うまいな。スパイスが効いてる」
「お肉がやわらかくて、口の中で溶けていくようです……!」
みんな美味しそうに食べている。黙々と食べ進めているレイスもわずかに微笑んでいた。
にしても……やっぱりケイトが作った分はちっちゃいな。ふふっと笑って、一口サイズのそれを頬張った。
「あ〜、美味しかったあ!」
「また食べたいな、これ」
「トマトソースをつけても美味しいらしいぞ。次作る時はソースもかけよう」
「いいですね」
綺麗に平らげた皿を片付ける。今日はオリヴィエが洗ってくれるらしい。キッチンから洗い物をする音が聞こえてくる。
「明日の朝は何にしようかな」
ケイトはレシピ本を開いて明日の朝食を吟味している。どんな料理が出てくるのか楽しみだな。
さて晩ご飯も食べたことだし、もうやることもないな。ゆっくり休むか。食後のお茶を飲みながらくつろぐ。
この部屋は暖かいし、寝袋で寝ようかなあ。
「ねえねえレイスさん、明日魔法を教えてほしいの。杖がなくても魔法が使えるようになりたいんだ〜!」
「……いいだろう。お前なら杖がなくとも魔力の心配はないだろうからな」
「やったあ!」
リーファとレイスは魔法の練習をするのか。じゃあ俺はどうしようかな……特にやることもないんだよなあ。たまにはゴロゴロだらけるのもいいか。
窓の外はすっかり暗い。ゆっくりと夜が更けていく。
「そろそろ寝るかあ」
「そうだね、お腹いっぱいになったら眠たくなってきちゃった」
ふああとあくびをしたリーファが寝袋を敷く。ケイトも眠たそうで、レシピ本を開いたままうつらうつらと舟を漕いでいた。
「ケイト、寝るならちゃんと寝袋で寝な」
「んんう……まだ焼けてないぞ……」
「もう夢の中だな。仕方ない」
ケイトを抱き上げて寝袋の上に寝かせる。このままじゃ寒いかもしれないから毛皮を被せておこう。レシピ本は横に置いておいた。ケイトはもにゅもにゅと口を動かしている。どんな夢を見ているんだろうな。やっぱり料理の夢かな。
「ふふ、ケイトちゃんかわい〜」
リーファは眠気からかぽわぽわした喋り方になっている。ケイトのほっぺを指先で軽くついた彼女は、もぞもぞと寝袋に入っていった。
「あら、皆さんおやすみですか? ではわたくしも休むとしましょう。おやすみなさい」
「おー、おやすみ」
皿を洗い終えたオリヴィエも戻ってきた。寝袋に収まった彼女は目を閉じる。
それじゃ俺も寝ようかな。
「おやすみ、レイス」
「ああ。おやすみ」
寝袋に入ると明かりが消された。彼は自室で眠るのだろう。
暖炉の中でパチパチと踊る炎の音が心地良い。暖かさと相まってだんだん眠たくなってきた。目を閉じれば自然と意識が落ちていく。




