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帰ってきた大森林

 そんなこんなでノーデン大森林までやってきた俺達は、レイスの案内でエルフの所に向かっていた。ちゃんと引き受けてもらえるか不安だ。

 レイスの家からそう遠くない、大きな白い岩がある広場まで辿り着く。すぐにガサガサと近くの木が揺れて、木の上から一人のエルフが飛び降りてきた。前に会った金髪に青目のエルフだ。

 エルフはキッとレイスを睨みつける。現れて早々に不穏な雰囲気が漂う。

 でも、なんで俺達じゃなくてレイスを睨んでいるんだ? どっちかというと俺達に向ける視線だと思うけど。

 つかつかと迫ったエルフはレイスの右袖を掴んで声を荒げた。


「これはどういうことだ」


 地を這うような低い声で詰め寄られても、レイスは顔色一つ変えない。こっちはピリピリした雰囲気で息が詰まりそうなんだけど。


「少々下手を打っただけだ。お前には関係ないことだろう」

「……ああ、そうか。そうだな。それで何の用だ? まさかその見るに堪えない姿を見せに来ただけとは言うまい」


 袖から手を離したエルフは腕を組んでアゴを上げる。さっさと言えと言わんばかりだ。


「彼らの武器を作ってほしい。弓と炎属性の杖だ」

「武器? ワタシに人間どころか雑種の武器を作れと?」


 雑種って。まあ俺はこの森のエルフとナーダの森にいるっていうダークエルフとの間に生まれたらしいから、そういうことなんだろうけど。

 にしても、やっぱりコイツいちいちチクチクする言い方をするよなあ。ずっとコイツとしか話してなかったら、そりゃあレイスだって高圧的な口調にもなるよ。仕方ない仕方ない。

 レイスはため息をつくと腕を組む。いいぞ、強気な態度でいけ。エルフに負けるな! ……なんか違うな。別にこれは勝負じゃないし。


「彼らは私の大切な仲間だ。余った素材はいつも通り自由に使ってくれてかまわん。引き受けてくれるか」


 淡々と続けるレイスを前にエルフは口をつぐむ。納得いってなさそうだなあ。ちらりと俺を見た彼は苦虫を噛み潰したような顔をした。キレイな顔をしているだけに威圧感がすごいな。

 中々承諾しないエルフに対し、レイスは目を閉じると深く頭を下げた。


「……頼む」


 レイスが頭を下げたのを見てエルフがたじろぐ。何度も俺達とレイスを交互に見た彼は、とても長く重いため息をついた。


「……分かった。貴様がそこまでするんだ、ワタシも誠意をもって応えよう」


 渋々といった風に承諾したエルフは、腕を組むと苛立たしげに指を動かした。

 頭を上げたレイスは小さく笑うと口を開く。


「助かる。杖は打撃武器としても使えるようにしてくれるとありがたい」

「注文が多いな貴様……」


 呆れたような顔をしたエルフは俺を睨みつけてチッと舌打ちする。なんだよー、俺が何をしたっていうんだ。


「勘違いするなよ、雑種。ワタシは貴様を認めたわけではない。この隣人に感謝することだな」


 俺達に背を向けたエルフは指を一本、二本、三本と立てた。


「杖は使い慣れた物に寄せた方がいいだろう。その杖と似たサイズのエルダートレントの枝を持ってこい。弓もエルダートレントの枝を使う。弦はアラクネの捕縛糸だ。杖に使う魔石は高品質な物。ワタシに頼む以上、相応の量を持ってくることだな」


 エルフは早口に告げると木の上へと飛び上がる。木の上を飛び渡っているのだろうか? あっという間に気配が遠ざかった。すごいな、生粋のエルフ。

 なにはともあれ引き受けてもらえたみたいだ。あのエルフ、俺達には厳しいけどレイスには少し甘いんだな。助け合う仲って言ってたし、持ちつ持たれつなんだろう。


「素材を集めに行くぞ」


 レイスが森の中を迷いなく進んでいく。その後ろについていきながら疑問を投げかけた。


「エルダートレントとアラクネの捕縛糸、それから魔石だよな。どこにいるか知っているのか?」

「ああ。エルダートレントは私の杖の素材でもあるからな。私自ら狩りに行ったのだから当然だ。そしてアラクネはトレントの枝に巣を張ることを好む。自然と見つかるだろう。魔石については灼熱ノ洞窟で見つけた物を使う」


 それじゃあ見つからなくて困ることはなさそうだな。さっくりと進みそうで安心だ。

 リーファが口元に指を当てて空を見上げる。


「トレントって木の魔物だよね。エルダートレントは……おじいちゃんのトレント?」

「……間違ってはいない。老齢のトレントは魔力伝導率が非常に高く、魔術師の杖として最適な素材となる」

「へえ〜! おじいちゃんトレントってすごいんだね!」

「短剣と包丁の柄としても使えるだろう。多めに取っておいて損はない」


 エルダートレントの枝って万能だなあ。木材として最高品質なのかな。

 ……ん? あ、そうか。魔力を通しやすいってことは短剣や包丁に魔力を込める時もやりやすくなるのか。それで柄にぴったりなんだな。それじゃあエルフへの献上分も含めてたくさん取っておかないといけない。


「ここからもう少し歩く。そう遠くはない」

「おじいちゃんトレントってどんなのかなぁ?」

「大木の魔物なのでしょうか?」

「オイラの包丁で切り倒せるかなあ」


 わいわいとエルダートレントについて話しながら歩くこと数十分。段々と木々の色が暗いものに変わり、おどろおどろしい雰囲気が出てきた。まだ日は高いのに、まるで夜のようだ。


「ここがトレントの生息範囲だ。エルダートレントが多い場所はこのように暗くなりやすい」

「つまり良い狩場ってことか」

「エルダートレントは幹のどこかに魔核が入ったコブがある。そのコブを破壊するといい。他の場所に傷をつけるな。素材としての品質が下がる」


 狙うのはコブか。よし、気合い入れていくぞ。

 まずはエルダートレントを探して……探し……え、どうやって普通のトレントとエルダートレントを見分ければいいんだ?

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