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おそろい

 宿でゆっくりと休んで昼になった。今から出発するわけだけど……アレを受け取りに行かなきゃいけない。

 丁度門に行く途中にあるからな。ギリギリまで黙っておこう。ちょっとしたサプライズだ。


「次に行くのって初心ノ洞窟だよね?」

「ああ。南西に真っ直ぐ向かえば着くな」


 地図を開いて確認する。途中で皇都や王都を経由してもいいけど……このダンジョン巡りはパパッと終わらせたいしなあ、直接行くか?

 それにしても初心ノ洞窟かあ。最初に攻略したダンジョンだけど、一体どんな異変が起きてるんだろうな。あまり難しくなってないといいんだけど。

 それからも軽い雑談をしながら歩いていると、あっという間にあの店についた。


「みんな、ちょっとここで待っていてくれ」

「え? うん、わかった!」


 店は相変わらず客がいない。街の人というよりは商人向けにでも商売してるのかな?

 店員から頼んでいた物を受け取る。愛想は良くないけど、仕事さえしてくれれば充分だ。緩む口元を引き締めながら店を出た。みんなは喜んでくれるだろうか?

 不思議そうにこちらを見るみんなに上品な色合いの青い箱を見せる。


「その、みんなにプレゼントがあるんだ」

「プレゼント?」


 青い箱を開けると、五つのブレスレットが並んでいた。昨日相談した通りに作ってもらえてるな。想像していたよりも良い出来だ。


「わ〜っ、キラキラしてる!」

「リーファ、左手を出してくれ」

「うんっ!」


 差し出された細い手首にブレスレットを巻く。花モチーフの小さな飾りをちりばめた金属のチェーンは魔石を練り込んで艶のある青色に仕上がっている。一際大きい花の中央には俺が選んだ宝石をはめ込んであった。

 リーファの宝石はオレンジ色のサファイアだ。店員と相談している時に聞いたんだが、この宝石は才能を呼び覚ますエネルギーを与えてくれるらしい。めきめきと魔法の才を伸ばしている彼女にぴったりの石だろう。

 彼女は手を上げてブレスレットを眺めている。彼女の瞳もキラキラと輝いていた。


「きれいなお花! これ、もらっちゃっていいの?」

「ああ。感謝の印であり仲間の証でもあり……みたいな感じでさ。どうかなって思ったんだけど、どう?」

「すっごく嬉しい! ありがとうエスカくんっ! えへへ、キレイだなぁ。こういうのって初めてつけるよ〜」


 リーファはふにゃりと柔らかく笑った。いろんな角度からブレスレットを見ては、くふくふと笑っている。

 よし、いい反応だ。この調子でみんなにも付けてあげよう。


「次はケイトな。ほら、手を出して」

「おうっ!」


 しゃがんで、小さな手にブレスレットを巻いていく。ケイトの分はレッドスピネルという宝石らしいな。名前の通り綺麗な赤色の宝石だ。好奇心や探究心を高めてくれるらしく、各国の料理に興味を持つケイトにぴったりだと思う。


「仲間の証かあ……へへっ、ありがとな」


 頬を掻いたケイトはぴょこぴょこと跳ねながら満面の笑顔でブレスレットを空にかざした。チェーンが細めだからか、ケイトの小さな手にも似合うな。あ、耳がピンクになってる。最近気づいたけど、ケイトは笑ったり喜ぶと耳がピンク色になるんだよな。かわいい。


「次はオリヴィエだ」

「お願いします」


 白い手が差し出される。……今更だけど俺がつける意味あったかな? ちょっと気恥ずかしくなってきた。でもほら、やっぱり直接が大事だと思うんだよ。うん。

 オリヴィエの宝石はシーブルーカルセドニーというそうだ。マットな質感の水色が珍しく見えたのと、何より彼女の瞳に合うと思ったから選んだ。博愛や平和といった意味があるらしく、愛情深い彼女にぴったりだと思う。

 オリヴィエはブレスレットにそっと触れると、柔らかく目を細めて微笑んだ。まさに慈愛の笑みって感じだ。


「ありがとうございます、エスカさん。大切にしますね」

「へへっ、なんか照れるな……次、レイス」

「ああ」


 レイスに選んだ宝石はシトリン。ほんのりオレンジがかった黄色い宝石だ。意味は幸福、希望、あと……社交性。彼は自分の言葉選びを気にしてるみたいだから丁度いいと思う。最近は結構柔らかくなってきてると思うから、ぜひともこの調子で頑張ってほしい。


「なるほど、魔石を練り込んでいるのか」

「色重視で青い魔石しか使ってないんだけどさ。こうすると色も綺麗になるし、少しだけど魔力を貯めておけるって聞いたから多少は役に立つかなって」

「……ありがとう、エスカ。大事にしよう」

「へへっ」


 レイスは小さく笑うと、目を細めてブレスレットを眺めた。

 みんなに喜んでもらえたみたいだ。よかった、昨日は勢いで作りに行っちゃったけど一晩経つと冷静になるものなんだな。逆に迷惑になるんじゃないかなんて考えも過ったりしたけど……ああ、本当によかった。

 あとは俺のだな。箱の中に残った一つを細い指がつまみ上げる。


「アタシがつけてあげるねっ」

「おお、頼む」


 左手を出す。リーファは丁寧にブレスレットを巻きつけて、そっと留め具をつけた。俺の宝石は緑色のダイアモンドだ。再生や回復って意味があるらしい。

 色だけで決めた宝石達だけど、みんなにぴったりの意味を持つ石を選んでたみたいだ。俺の直感に感謝だな。


「はいっ、できたよ!」

「ありがとう、リーファ」


 誰が言うでもなく、みんな集まって左腕を出す。光を反射してキラリと煌めく五つの青い勿忘草のブレスレット。真実の愛という意味を持つらしい、かつての英雄が身につけていたという花。それぞれの瞳の色で輝く宝石達。おそろいのアクセサリーが俺達の絆をより深めてくれたような気がした。


「これからもよろしくな、みんな」


 互いに笑い合い、門へと向かい始める。軽い足取りで進む道も輝いて見える。

 今日はとてもいい日だ。心からそう思えた。

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