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本章「(ともしび)」は

漁船内の人々の心模様を描いた 旅の道中の章







 光を失くした宵の空は、人々の心そのものか。

その昏さは、嵩張る黒い雲に流されるように夜の世界へ誘われる。




 鏡の帳が下ろされた事で、東の島は音もなく姿を眩ませた。

漁船はすっかり、漆黒の大海原に囲まれている。

船内に備えていた1本の松明が、水面に柔らかな灯を乱反射させていた。

そこに合わさる微かな水光や波を見ても、未知で広大な母なる海に変わりはない。




 しかし桟橋に結ばれた係留ロープを見れば、紛いの風景が島の存在をさり気なく主張している。

その奇妙な光景を見た漁船の皆の脳裏に過るのは、今朝目撃した、周囲一帯に同じ画が並ぶ現象だ。




 人々は、シャンディアによって島が守られている事に一時安堵するも、絶たれた訳ではない異常事態に顔を険しくさせる。




 力を激しく消耗したシャンディアは、不安定な足取りで漁船に向かう。

待機していたグレンがシャンディアを漁船に誘導すると、係留ロープを解いた。




 出船し始める中、グレンはシャンディアの様子を気にかける。

術の1つ1つの負荷が大きい故に、彼女の顔色は悪くなっていた。




「大丈夫……」




気を抜くまいと己を叩き上げているのだろうが、微笑みは弱々しい。






 階段を上がると、闇夜を照らすような真新しい帆が出迎えた。

幸運にも良い風が吹いており、それをいっぱいに受ける帆は、漁船を南へ速やかに押し進めていく。

舳先では、ビクターが腹這いになって遠くを眺めていた。

いつもそのようにして過ごしている事など、シャンディアはお見通しだ。

そこへシェナが、水の入ったカップを笑顔で差し出す。

フィオは海水をなみなみ張った桶に、シャンディアを導いた。




 一方ジェドは、船縁に膝を立てて腰掛け、海面に目を光らせている。

その対角線上ではマージェスが、じっと進行方向を見据えていた。




 主に見張り台を担当するのはレックスだが、代わりにカイルが番をしている。

レックスは船室でスタンリーから南の事を聞きながら、常備している槍やライフルの確認作業をしていた。




 開けたままの船室から煌々と漏れ出す炎の光は、船内を行き来する者達の長い影を揺らす。

4人は、方角確認で頼りになる星々が覆い隠された寂しげな空を静かに見上げながら、独りの空間に籠り始めた。




 寒暖差が激しいこの時季の為に、複数の布を折り重ねて繕われたローブを積んでいる。

グレンはその1着をジェドに渡すが、彼はまだ要らないと言って足元にトサッと置いた。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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