(8)
東の島で共に暮らすようになって日が浅いグリフィンは、東の者達の深い事情まではまだ知らないでいる。
そんな中マージェスから想像したのは、途轍もない罪悪感か、後悔を抱いているのではないかという事。
それを、生活を送る中で殆ど隠してきているのか。
何ともない振りをして生きている事の方が、実は多いのではないか。
グリフィンは、唯一船乗りだった彼を見ながら思い巡らせた後、見送りの言葉をかける。
「無事に連れてきてやってくれ。
こっちの事は心配しなくていい。
彼女も、これから一仕事してくれるようだ」
波打ち際で背を向けるシャンディアの鱗の腰巻きが、冷ややかな潮風に靡きながら波の飛沫を受けて光った。
マージェスは彼女を暫し眺めると、そのまま島をぐるりと見渡す。
ここに南の者達を避難させ、纏まって警戒態勢をとる。
東の島の人数と然程変わらず、僅かに少ない。
スタンリー曰く、小さな子どもは襲われたその子が唯一だった。
他と接点を持ち、生活の輪が広がる事はいずれ、世界の復興に繋がる可能性がある。
実にありがたい事とはいえ、キッカケは皮肉にも程がある。
「悪いな……ちょっくら、行ってくる」
マージェスは、見送りに来ていた傍の仲間の松明を目に灯すと微笑みかけ、心を入れ替えると同時に漁船に向かった。
曇天の夜空の下、シャンディアは視線を感じながら、辺りに意識を集中している。
鏡の帳が完全に下ろされた時、互いに見えなくなる事は既に告げていた。
彼女は目を閉じると、胸の小さな装飾に両手を当て、成功を祈る。
頭で東の島一帯を俯瞰し、広さをイメージした。
全体を捉えた時、胸の両手を水平に弧を描くように広げ、鏡の瞳を力強く見開く。
併せて放たれる鋭利な銀の眼光は、太陽を直視するようで、対面する漁船の者達の目を眩ませた。
鏡の双眼が左右に往復するのに併せて、光力は更に増していく。
這う視線が、隔たりを生み始めた。
それは輪郭を持たず、ただ、銀の射光が宙に複数走るのみ。
辺りに銀の光が細かく舞うと、颯の如く島を周り続ける。
それらは速さによって、光の輪と化した。
両手が緩やかに下ろされては、宙を掴んだ拳が上を向き、重く持ち上げられていく。
光の輪は、上昇すると共に幕を引き始めた。
その光景は柔らかなベールのようで、人々の頭上に着く頃にはオーロラを彷彿とさせた。
その刹那――
「あ!」
声は、互いの消失に合わさる。
島と漁船を見失ったこの場に、鏡の帳は下ろされた。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




