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挿絵(By みてみん)




 海上で切羽詰まる2人を気にしていた漁船の皆は、宙が割れ始める現象に騒ぎ立てる。




「本当は晴れてるのか!?」




ビクターが真上の大きな亀裂を仰ぐと、船首に駆け登って周囲を見渡した。






 漁船は進んでいるが、風景は変わっていない。

先程見た岩がまた接近してきており、まるで桶の中を回っているようだ。

だがその壁も、(じき)に壊されようとしている。

完全に破壊するにはまだ力が足りないのか。




 奇妙な空間からの脱出に難航する最中、シェナが(しか)め面を浮かべて柱の人魚に向かう。

それを見たフィオも後を追った。




 「ちょとあんた!あたし達をどうしようっての!?

この状況、どうにかしなさいよ!

何か言ってみなさい!」




シェナの鋭い声に乗せられた感情に合わせ、火に当たるような温かい突風が吹きつけた。

柱の人魚の尾鰭が激しく揺れ、(しゃが)れ声を搾り出しながら苦しみを訴える。

真下の緑の血溜まりにその姿を映し、滴る流血に輪郭を歪めた。




 フィオは、人魚に刺さった槍に触れる。

怖い。怖いのだが、放っておけなくて仕方がない。

シェナがそれに驚き、彼女の名を放つ。

その叫びに合わせて次は冷たい突風が吹き、人魚の尾鰭や船内の者達の髪など、靡くもの全てを横殴りにした。




「返そう!返してって言ってる!」



「何言ってんだ、さっきから!」




ジェドが慌てて槍に触れるフィオの肩を掴み、人魚から引き離す。




「嬢ちゃんあんた、そいつの言ってる事が分かるのか!?」




南から来た老人は目を丸くさせた。




「そんな気が……

でも…でも言っている事がどうとかじゃない!

早く返してあげよう!

だって、彼等の居場所は陸じゃない!苦しそうよ!」




フィオは固く突き刺さった槍を再び握ると、引き抜こうと全身に力を加える。

そこにカイルとマージェス、他の3人も加わった。






 激痛に悲鳴を上げる人魚。

カイルが投擲(とうてき)した最長まで伸ばされた槍により、暴れる鋭い爪を持つ両手から、辛うじて距離ができていた。

前方に大人2人、その後方に4人が並び、引き抜く動作を繰り返す。




 やがて、柱から軋む音がし始めた。

木屑(きくず)が落ちながら、減り込む先端が直に顔を出そうとする。

槍には人魚の重みが圧し掛かり始めた。

相手が抵抗する事で激しく振られ、握力が分散する最中、やっと人魚が柱から落ちた。




 肩に槍を残したまま、弱々しい威嚇を見せる。

定まらないオレンジの眼球を泳がせる光景に、一同は僅かに身を引いた。

鋭利に光る汚れた尾鰭。

床に叩きつける傍から、細かい鱗が飛び散った。




「これ…こいつらの……

昨日からこの辺にいたのか…!?」




ジェドは、昨日の漁で引き上げた網に大量に付着していたそれらに、煩わしい思いをした事が過ぎる。




 高低差をつける人魚の悲鳴は、床に爪を立てる音と重なると引っ掻きながら、身を前進させてきた。

その先にはやはり、フィオが立っていた。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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