第6章5話 戦
現在、ヤマタイ共和国の各所で、公開してきた宇宙連邦軍の陸戦部隊とヤマタイ共和国陸軍との間で激しい戦闘が繰り広げられていた。
戦況はヤマタイ共和国に不利な様子である。
「本隊、応答しろ!おい!っくそぅ」
ヤマタイ共和国陸軍の軍曹はそう言って乱暴に通信機を投げ捨てた。
「軍曹!どこの部隊からも反応がありません!恐らくこの区域の部隊は我々のみになってしまったのではないかと…」
と、部下が報告をする。
「あれだけの部隊がこんな短時間でだと…?化け物どもめ!」
敵は全てパワードスーツを着たような全長2m程の異星人。
実弾も勿論ながらビームや高威力弾をバカスカ使い、住民を虐殺していた。
出動命令を受けたヤマタイ国軍は即座に各地に展開する異星人部隊の制圧に乗り出したが、彼等の高威力の武器、硬い防御力の前にヤマタイ国軍は殆ど太刀打ちできなかった。
悔しそうに唇を噛み締めるヤマタイ国軍兵士。
もうダメだと嘆き家族の名前を連呼する兵士。
まだいける。と打開点を見つけようと思案する兵士。
生き残った兵士達の心情は様々であるが、どうする事もできなかった。
姿を見せれば殺される。
ただそれだけであった。
ドババババババ!
ズババババババ!
急に止みつつあった銃声が再び激しくなるのが聞こえた。
軍曹は援軍、もしくは生き残りの部隊が特攻を仕掛けたのかと思いチラッと戦場の様子を確かめる。
「は!?な、なんじゃあれ!」
軍曹が見たものは防弾チョッキなど見慣れた防具に身を固め、武器だけは見たことが無い銃を持った青い半透明な人間が異星人を殺している様子だ。
一方的ではないがそれなりに優勢なようだ。
「異星人同士で戦っているのか…?」
軍曹は最初にそんな感想が出た。
見たことの無い兵器と見たことの無い人種が戦っていればそう判断するのは当然だろう。
「どうします?彼等と協力して…」
と、別の兵士が思わぬ援軍に対し感極まり物陰から出て行こうとする。
だが、
「馬鹿野郎!味方かどうかも分からん内から出て行こうとするな!見るからにあの青い半透明の軍勢が優勢のようだから、あのパワードスーツの連中が居なくなってから様子を見てこちらに害がなさそうならば話しかけてみるぞ!」
「わ、わかりました!」
部下の兵士は不用意に浮かれていたことを反省し、上官である軍曹の言葉に従った。
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一方惑星の住民達を襲っていた世界連合軍という名の多国籍軍の降下部隊は突然の急襲により混乱していた。
「<正体不明ノ敵ト交戦中…>」
「<おい!"ベケン人"防具は違うが、ありゃどう見ても宇宙連邦軍の武器だろうが!>」
「<裏切リノ可能性デショウカ?>」
「<だ、だが通信によると宇宙連邦軍第9艦隊の降下部隊とも戦っているようだぞ!?あの青い半透明な奴!>」
「<ヴァルカ軍…にしては小奇麗ですねぇ。やはり連邦軍の別働隊…グエ!?>」
「<うわぁ!"サキョリン人"の兵士がやられたぞ!>」
銃弾が飛び交う中、各国の兵士達は連携をとり突然攻めてきた青い半透明の兵士達に必死で応戦している。
展開しているシールドも軽々と突破する銃弾。
乗ってきた装甲車を一発で破壊するような砲撃。
事前の調査の結果からどれもこの惑星の技術レベルでは到底そろえられるようなものではないと彼等は考えていた。
「<ならばようやくヴァルカ軍が出てきたと考えたほうが妥当かもな…>」
と、一人の兵士が呟いた。
その瞬間兵士達の間に緊張が走った。
自分達とは同程度とはいえないが、それなりの装備を持つ存在が出てきたのだ。
彼等は今まで通り楽な戦闘を行えないと考えた。
「<ヴァルカ軍艦隊は見えなかったから恐らくこの惑星に有る程度隠れていたんだろう…。ならば…それほど数は居ないはず!>」
そう誰かが言った。
だが…。
「<敵のBW接近!これは…なんだあれは…>」
「<なんだと?どこに……―――え?>」
彼等の目の前に現れた巨大ロボット。
その顔は…巨大な人の顔が張りついたようなデザインであり、なぜか涙を流していた。
「『うぉぉおおおお!!たすけてくれぇぇぇぇええええええええええええ!!!』」
と、巨人…いや、巨大ロボットは大声で助けを求めていた。
「<ひぇっ…>」
あまりの異様さに多国籍軍の反応が一瞬遅れた。
その間に巨大ロボットの手に持つビームライフルで彼等は蒸発していく。
「<て、撤退!撤退!!>」
多国籍軍の誰かがそう叫ぶと蜘蛛の子を散らすように多国籍軍は逃げていった。
「お、終わったのか?」
物陰に隠れていたヤマタイ共和国軍の軍曹はそうポツリと呟いた。
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「何だと?壊滅状態?」
宇宙連邦軍第9艦隊惑星833攻略艦隊司令官『ドルーイ・フトラス』大佐は報告を聞いてスッと表情を冷たくした。
今報告を聞いたのはナンジャワレ共和国に攻め込んだ部隊が殆ど壊滅したという話を聞いたからだ。マスラの居るヤマタイ共和国での事ではない。
「宇宙怪獣の数が多く出現するようになってきたようで、被害の数が多くなってきたようです…」
そう報告をするフトラス大佐の部下。
それに対しフトラスは冷酷な判断を下した。
「そうか…。ならばやはり惑星…いや、あの国ごと滅ぼそう。主砲による砲撃を行う。惑星ごと破壊しないように気を付けろよ?高威力砲撃用戦艦前へ!」
「ま、待ってください!あそこにはまだ他国の部隊も展開しているのですよ!?」
と、止めようとするフトラスの部下。
「そのような悠長な事を言える状況ではないだろう?発射用意!」
無情にも部下の進言は拒否され、フトラスはこれから高威力の砲でナンジャワレ共和国を消そうとしていた。
部下もそれ以上は言えず黙ってしまった。
「<エネルギー充電率100%。いつでも撃てます>」
と、オペレーターから連絡が入る。
「よし、目標惑星833、ナンジャワレ共和国!ケンル大繁殖地帯。主砲発射!!!」
これにより宇宙連邦軍第9艦隊の命運が決まった。
「惑星833ナンジャワレ共和国に命中!映像出ます!」
「「「おぉ~」」」
艦橋内でそう感心したような声があちこちから聞こえた。
ナンジャワレ共和国は砂煙でまみれていたが、映像処理により大きなクレーターができていたことが確認できたからだ。
「命中前にケンル大繁殖地帯より高エネルギー反応がありました!…これは…ワープです!!」
「な!?逃げられたのか?宇宙怪獣や基地内のヴァルカ軍に!?」
フトラス大佐は焦った。何匹居るかも分からない強力な力を持つ宇宙怪獣や基地内に居ると思われるヴァルカ軍に逃げられたとなれば、たとえこの戦闘に勝利できたとしても何かしらの処罰はあるだろう。そう考えていた。
しかし、ケンル達はフトラス大佐から逃げたわけではなかった。
「近隣宙域にワープホール出現反応?こ、これは!!大佐!大変です。ケンル達がこの艦隊の近くにワープしてきます!!」
「なんだと!!?」
そう。ケンル達は…正確にはヴァルカ軍のシステムによって惑星外に放り出されただけであった。
休眠カプセルに入ったまま…。
幾つものワープホールから次々と出現するケンル入りの小型カプセル。
出現してから次々とカプセルが割れ、ケンルが目を覚ましてムクムクと大きくなり羽を伸ばしていく。
モコモコなので少し可愛い。
数は10万はいるだろう。
「…な…あ…攻撃、早く攻撃をしろぉおおおおおお!!!」
慌てたフトラス大佐は攻撃指示を出す。
「りょ、了解!全艦攻撃開始!目標ワープにて出現した宇宙怪獣ケンル!!あの宙域には味方は居ない!躊躇はするな!!」
オペレーターもそう指示を出す。
フトラス大佐の命令により宇宙連邦軍第9艦隊は一斉に攻撃を仕掛けた。
だが、
「ケンル側も攻撃をしてきました!!」
と、オペレーターが報告をしてきた。
目覚めたケンル達はいち早く第9艦隊を敵と認識し、攻撃を仕返してきたのだ。
ケンル達が口から放ったエネルギー弾により相殺される宇宙連邦軍のミサイルやビーム砲。
勿論命中したものもあれば避けられたものもある。
結論から言うと殆ど命中しなかったのだ。
「ぐぅぅ!!化け物共め!!生存競争から敗れて絶滅したようなゴミなどにぃぃい!!」
フトラス大佐は悪態を吐いて次の攻撃を指示しようとした。
その時、
「援軍の反応!!数万規模の艦隊です!!このコードは…!?第3艦隊!!宇宙連邦軍第3艦隊の派遣部隊です!!」
「な!?何故第3艦隊がここに??」
この報告にフトラス大佐は混乱した。
なぜならばフトラス大佐にはこの惑星を制圧し、惑星クラレスの住民を救うのはフトラスが指揮する第9艦隊の一部隊と多国籍艦隊だと知らされていたからだ。
「ま、まぁいい!何にせよこちら側の援軍が来てくれて助かった!!至急第3艦隊の指揮官に連絡をしろ!ヴァルカ軍共が作った宇宙怪獣の駆除に協力せよとな!!」
「了解です!!」
オペレーターはフトラス大佐に言われた通り電文をこちらに続々とワープしてきた第3艦隊に宛てて送った。
第3艦隊の惑星833派遣艦隊は第9艦隊よりも離れた位置にワープをしていた。
フトラス大佐は考えていなかった。
何故多国籍の軍と共に敵地に派遣される司令官が自軍の援軍について知らされていなかったのか。
何故10倍ともいえる援軍の他にも『グラフト・ダ・マスラ』という軍艦数万隻にも値する戦闘能力を持つ友軍が派遣されている事を知らなかったのか。
何故出現した第3艦隊の連中が自分達を盾にするように出現しているのか…。
それを考えなかったばかりに悲劇が起きた。
「し、指令!駆逐艦ペゼローン、ポッキスターク。巡洋艦セクチョン、モモンキー。戦艦ゴボゴゼフィス、第3艦隊からの攻撃により消滅!!!」
「はぁ??」
理解できず呆け顔になったフトラス大佐は続々と報告される友軍艦轟沈の情報を聞き流すしかなかった。
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