表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界戦史の中で~研究所長の狂人マスラさん!~  作者: ルミネ
第6章 マスラさん、戦いの為に動き出す
37/40

第6章3話 兄


―惑星833付近宇宙空間―


「なにぃ?あのマスラ准将が邪魔をしてきただとぉ?」

 惑星833の人工生命体『カンラ』を死滅させるべくやって来た宇宙連邦軍第9艦隊司令官『ドルーイ・フトラス』大佐は部下から情報を聞いて目を尖らせた。


「はい…どうやら以前から潜入をしていたようでして…」

 と、フトラスの部下は若干ビクつきながらそう答えた。


「ちっ。やはりDr.ジュパーソン関係だったから出しゃばって来たか。ならばヤマタイ国エリアはもういい。他のエリアを集中して攻撃しろ!」

 イラついた様子で舌打ちをしたフトラスはそう部下に命令をした。


「はっ。しかし、ナンジャワレエリアに発生した宇宙怪獣により、かなりの被害が出ています。いかが致しましょう?」


「例の『ケンル』とかいうDr.ジュパーソンが復活させた古代宇宙怪獣か…。どの程度の被害を受けた?」


「現在までに28機損失。11機大破、8機中破されました。一方討伐数は393。特殊能力人兵士達が随分と活躍してくれたようです」


「そうは言ってもかなりの損失だな…。やはり惑星ごと破壊した方が楽かな?」


「それをいたしますと惑星クラレス人保護をする気が無かったと知られてしまいますが…」


「ふん、冗談だ。さすがの私でもそこまではせん…。いや、待てよ?宇宙怪獣が大量発生したという事にして惑星ごと吹き飛ばすしかなかったと言えるのではないか?」


「それもダメですね…。マスラ准将が居ることは、この惑星が指令本部にとってかなり重要な可能性が大きいかと…。破壊した後帰ってしまえば糾弾されるのでは…?」


「くそっ、またマスラか。本当に厄介な存在だな!」

 更に気分を悪くしたフトラスは椅子の肘掛を勢いよく叩いた。

 そしてポツリと、

「仕方が無い…。あの手を使うか」

 と、呟いた。


「あの手?」

 フトラスの部下は不思議そうに首をかしげる。


「後続の部隊にマスラの件を任せる…」


「!?まさか他国の連合軍を捨て駒にするのですか!?」

 フトラスの部下は驚いた。

 今回の作戦には第9艦隊惑星833攻略部隊の思想に賛同した各惑星の部隊が参加する予定になっていたからだ。

 それを援軍を全てマスラに当てようとしているのだ。


「奴とて他国の軍相手にそう派手にはやり合おうとはしないだろう」


「な、なるほど…」

 フトラス大佐の意見を聞き、それもそうかと納得する部下。


「それとなんですが…」

 と、話を続けようとするフトラスの部下。


「なんだ?」


「監査局の巡洋艦から再三カンラを無差別に殺すことを止めろという通達が…」

 と、フトラスの部下が心配そうに言った。


 第9艦隊所属惑星833派遣艦隊には戦争犯罪を防ぐ目的で宇宙連邦軍監査局から巡洋艦1隻と駆逐艦3隻が派遣されていた。

 実は既に監査局の駆逐艦が1隻破壊されており、強制的に黙らせていた。


「チッ。また痛い目に遭わないと黙れないのか?まぁいい、無視しろ。ただし砲門は今まで通りやつ等に向けておけ。通信妨害や転送妨害もしっかりと今まで通りやるんだ!」


「はっ!!」


 監査局へのこのような行為は前代未聞であった。


 フトラスはこの作戦が終了し次第監査局の残りの艦船を破壊しようと考えていた。

 ヴァルカ軍との戦闘により破壊させたと偽って…。






 こうしてこの瞬間より、様々な思想が戦場を駆け巡り、己の利益を上げようとしたがためにこの戦場の戦闘は激しさを増すのであった。



--------------------------------------------------------------


―ヤマタイ共和国フソウ市マルカワ軍需品研究所地下施設―


「そんなわけで無事ヤマタイ共和国は守ることができました!」

 と、マスラは嬉しそうにエミリへ話しかけた。


「えぇ…ありがとうございます」

 エミリは一旦帰り…というか帰るふりをしてマミと別れ、マスラの研究所へと戻ってきていた。

 エミリはマスラの報告を聞いたが少し納得していないようだ。


「おや?いかがいたしましたか?」

 マスラはそんなエミリの表情をみて問いかけた。

 すると、


「いえ、よくやっていただけたかと思います。ですが、ヤマタイ共和国だけではなく他の国々も守ることは出来なかったのですか?現在この惑星に侵攻してきている部隊の指揮官の階級は大佐との事でしたが、准将であるあなたが言えば引くのでは?他の国々にも私と同郷のクラレス市民がいるのです。こうしている間にも次々と同じ宇宙連邦人の軍隊に殺されているのですよ?」

 段々と声の音量を大きくし、興奮した様子でマスラを問い詰めるエミリ。


「あ~…残念ですけど、それやるとこの国も攻撃来ますよ?」

 と、ニヤケ顔であるが残念そうにマスラは言った。


「何故です!?」


「いやぁ~、指揮系統が違うんですよ。この惑星に来ている第9艦隊の面々は更に上の階級の者達の命令を拡大解釈といいますか、随分とひん曲がって捉えているだけです。わざとでしょうがね。私は第9艦隊の作戦を邪魔する権限はありません」


「では、何故今回彼等を退去させる事に成功したのですか?」


「それは私の作戦を邪魔するも権利は彼等にはないからですよ。まぁ、これは武力をちらつかせたっていうのもありますが、お互い自分の最低限の領域を守ることで合意したにすぎません」


「そんな…」

 エミリは悔しそうに顔を歪め、


「こんな事が…こんな事が許されるわけがありません!連邦軍には然るべき処罰が与えられるでしょう!」

 と、エミリはマスラに言った。

 無論マスラに処罰を下すという意味ではなく、宇宙連邦軍第9艦隊の部隊に対してだ。

 恐らくこの問題は連邦軍の更に上の立場の者達にまで影響を与える事になるだろう。


「まぁ、そんなの古代生物との戦いでクラレス人を守れるほど余裕が無かったーとか言い訳されそうですけどねぇ~」

 などと、エミリとはテンションを大きく違い気の抜けたような対応をするマスラ。

 そして、

「あ、そうそう」

 と、話を続ける。


「貴方のお兄さん来ているようですよ?」


「……は?」

 突然何を言い出したんだと目が点になるエミリ。


「うひひ、どうやら適勢力を排除するついでに貴方も殺そうとしているみたいです♪」


「……え?」


「いやぁね?私もハッキングしてたり本国との通信とかして知ったんですけど、どうやらあなたが居なくなった後、貴方の家であるグークスラ家から市議会議員を仮…と言いますか臨時として出したみたいです。ははは、戦時中の特別選出だったみたいでスムーズに政治経験もろくに無いお兄さん…えっと名前なんだっけな…。あ、そうそうベケゼス君が選ばれちゃったみたいです」


「……」


「それでね?どうやらお兄さんはエミリさんの代わりなので『臨時議員』という役職をを名乗っていますが、『臨時』を外したいみたいでして…。エミリさんを殺して本物の議員さんになりたいみたいなんですよねぇ~。え?惑星クラレスってそんな感じで議員になれちゃったりするんですか?」


「そんな…訳ないでしょう…。あくまでも戦時中の臨時議員…。戦争が終わればまともに選挙が行われて選出されます。臨時政府的な状態の市議会で議員資格を取得したとしても、戦中にろくな動きを取れなければ評価だってされないでしょうに…」


「うひひひひ!やっぱり?うひひひひ。これまでに随分とこの惑星に居たクラレス人が犠牲になっちゃってますから既に議員生命も危ないでしょうに。うひひひひ。馬鹿ですねぇ~。エミリさんを救出すれば英雄になれたでしょうにその逆をしようとしているのですから笑ってしまいます。うひひひひ!」


バシン!!


「全く笑えません!!!」


 と、マスラが笑っていると机を思いっきり叩いたエミリが叫びマスラを睨む。


「ありゃ?怒っちゃいました?プンプンですかぁ?」

 尚もおどけた態度を見せるマスラ。


「いえ。マスラさんの態度は今に始まった事ではありませんのでもう良いです。諦めてます。ですが、私の怒りの対象は兄にあります。マスラさん、どうか愚兄を止めて下さい。出来れば惑星クラレスの市民を救う為、第9艦隊の部隊にも対処をお願いいたします!」

 と、エミリはマスラへ頭を下げた。

 目が若干冷ややかなのは先ほどのマスラの態度のせいだろう。エミリもそれを隠せるほどまだ完璧ではないらしい。しかし精一杯の気持ちを込めて頭を下げた。


「え?そんな事私に頼んだら運悪くお兄さん死んじゃうかもしれませんよ??」


「…覚悟はしています。元々愚兄の行動が原因で私どころか私の周りに居る人々にも危害が加わろうとしているのです…。立場上死んで当然…とは言えませんが、それなりの覚悟でお願いをしています」


「それでも十分問題発言ですよエミリさん。いえ、エリーナ・グークスラ議員?」

 マスラは、兄を攻撃して殺しても良いのか?本当にその覚悟はあるのかと、真面目な表情を作って尋ねる。


「はい」

 どうやらエミリの意思は変わらないようだ。


「う~ん。しかし、命令権が無い市議会議員のエミリさんから救助はともかくそんなお願いや命令されたとしてもねぇ~」


「そんな…」

 やはりダメかとエミリは肩を落とす。

 ただの市議会議員の自分ではこの戦争を左右するお願いなどできるはずがない。そう思ってエミリは悔しそうに顔を悲しみの色へと変えていく。


 だが、

「ですが、安心してください。もとよりそのつもりで我々はここにいるのですからぁ~」


「は!?」

 突然安心しろと言われたエミリは何を安心して良いのか?と理解できず固まった。


「えっとね?ですからぁ~、もとからこんな暴挙許されるはずが無いでしょう?こんな事宇宙連邦軍のお偉いさん方が放っておくはずが無いじゃないですか。うひひひひ。しかし、女の子をからかうって面白いですねぇ~。うひひひひひひ!」


「くっ!こんな時にまで!!」

 エミリはやられた!と感じた。

 散々絶望をさせられた後実は大丈夫でした~。というイタズラを掛けられたのだ。


「てめぇ!今この状況ですることかよっ!!」

 ついにエミリが切れた。


「うひひひひ。ほら、あれですよ。リラックスさせようとしただけですよぉ」


「全然リラックスできねぇわ!むしろストレスが溜まったわ!!帰国したら覚えて置けよ!!」


「あれ~そんな事言っていいんですかぁ~?私のテンションが下がったら惑星クラレスの市民の救出に集中できないかもしれませんよぉ~?」


「このクソ野郎がぁ!人質のつもりかぁ!コラァ!!」


「あ~あ~。聞こえな~い」


「ガキかっ!」


「まぁまぁ、落ち着いてくださいな。これからクラレス市民を助けるんです。そんなに興奮していてはスムーズに動く事はできませんよ」


「誰のせいよっ!!はぁ、はぁ。まぁ良いわどんな風に助けてくれるのかしら?」


「それは教えられませんねぇ~」


「なんでよっ!」


「いえ、まじめな話。正義丸出しのエミリさんには耐えられない内容でしょうし、知らない方が良いでしょう…」


「???」

 急に雰囲気を重くするマスラにハッとするエミリ。


「いったい…それは…。いえ、犠牲なくしては救助できないくらいは覚悟していますよ!例え味方であるはずの第9艦隊を多少攻撃したとしても…」


「ほぅ。そこまでの覚悟はありましたか…。ですが、黙っていてもらえると非常に助かりますねぇ。帰ったらいきなり批判とかされても困るんですよぉ」


「…わかりました…。愚兄の行動をどうにかして欲しいと頼んだ私です…」


「うひひ。言質は取りましたよ」

 マスラこうして不正を正すや正義の塊であったエミリに話をつけることが出来た。

 もっともエミリは精々自分達を攻撃してくる連邦軍艦隊を退ける程度と考えていたからこの発言をしたのだ。


 マスラは…いや、マスラ達はもっと恐ろしい事を考えているとは知らずに。



--------------------------------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ