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世界戦史の中で~研究所長の狂人マスラさん!~  作者: ルミネ
第6章 マスラさん、戦いの為に動き出す
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第6章1話 妹


 宇宙連邦軍第9艦隊所属惑星833派遣艦隊ヤマタイ共和国攻略部隊。


 やたらと長ったらしい名前のこの艦隊は、大小艦船50隻で島国であるヤマタイ共和国の攻略を目指していた。


「いやぁ~、そろそろですねぇ。ヤマタイ共和国」

 一人の青年がそう嬉しそうに言った。

 わくわくうきうきしているようで、体を小刻みに揺さぶっている。


「落ち着いてください『ベケゼス・グークスラ臨時議員』。それにしても本当によろしいので?"妹"の『エリーナ・グークスラ議員』が居る国を攻め落としてしまっても…?」

 と、隣に居た連邦軍士官の中佐が質問をした。


「ふん、何を心配する必要があるのです?貴方達は忌まわしきカンラという存在を消す為にこの惑星に来たのでしょう?ならば、私の妹一人救出する為にこの作戦を中止すると言うのですか?」

 馬鹿にしたような態度でそう言いはなったベケゼス。


「分かりました…良いでしょう。攻撃隊を発艦させます」

 連邦軍の中佐はそう言って部下に指示を出し始めた。


「(ふん、これでようやくあの妹を始末できる…)」

 ベケゼスは発艦されるBWや戦闘機を見て一人ほくそ笑んだ。


 昔から自身よりも優秀であった妹のエリーナ。

 代々惑星クラレスの議員として名を馳せてきたグークスラ一族の今世代の議員として自分ではなくエリーナが選ばれたことにベケゼスは納得していなかった。

 このままでは名を残せないままベケゼスは生涯に幕を閉じたであろう。


 だが、そんな彼に転機が訪れた。惑星クラレスがヴァルカ軍に強襲された後、散り散りになった惑星クラレス市民により新たに立ち上げられた市議会。そこに行方不明となった代わりに議員一家のグークスラ一族としてベケゼスが選ばれたのだ。


 有名なグークスラ一族として暖かく迎えられたベケゼス。

 肉親からは落第生としての烙印を押されたが、彼の周りにはそのことを知る者は殆ど居なかった。身内の恥と思われ世間にはその話を出さなかったのだろう。

 慣れない政治も半ば臨時政府的な状態であったことから仕方が対だろうという名目を立たせることができた。

 順調に行けばこのまま臨時議員から正規の議員までのし上がることが出来る。そうベケゼスは考えていた。




 だが、ベケゼスにとって面倒な事態になった。


 妹がヴァルカ軍が管理する惑星で見つかってしまったのだ。しかも、妹は一緒に誘拐された惑星クラレス市民を纏め上げているとの事だった。

 ベケゼスは拙いと思った。

 誘拐されながらも必死に市民を守り続けた妹は帰国後英雄になることは間違いないだろう。

 臨時議員である自分は早々に蹴落とされ、妹が再び議員として復帰するのは目に見える。


 案の定、ベケゼスは肉親から早々に妹と市民の救出を言い渡される。


 しかし、ベケゼスはこれに素直に従わなかった。

 惑星クラレスの代表として乗り込んだ連邦軍の軍艦。第9艦隊所属の艦にて、偶々兵士達が口にしたことを聞いてしまったのだ。


「敵の惑星に住むカンラと惑星クラレス人の見分けが着かない」

「見分けがつかないならば全員殺してしまえと言われている」


 と、会話をしていたのだ。


 この事を先ほどベケゼスと話をしていた中佐に問い詰める。すると、

「聞かれてしまったのであればしかたがない」

 と、銃口を向けられてしまった。

 中佐はこれから攻め落とす惑星の住人を虐殺する事を知られるわけにはいかなかった。

 だが、ここでベケゼスはニヤリと笑い。

「取引をしよう」

 と、持ちかけたのだ。


 取引の内容は惑星クラレス市民虐殺に目を瞑る代わりに、妹の『エリーナ・グークスラ』を殺せ。


 と言った内容だった。


 最初は中佐も戸惑っていたようだが、最終的には取引の内容に合意し、今に至る。


「(さぁ、これであの忌々しいクソ妹とおさらばできる!ははは!首を洗って待っていろエリーナ!!)」


「うはは、うはははははは!!!」


 ベケゼスは笑いを抑えきれず妹を亡き者にするであろう連邦軍の発艦した戦闘機やBWの大部隊を見送った。



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―ヤマタイ共和国防衛艦隊旗艦司令室―


「敵、艦載機多数接近。レーダーには映っていません!」


「目視による数は約100!」


「巨大な人型も確認!か、かなりのスピードです!」


 司令室は蜂の巣を突いたような騒ぎであった。


「攻撃開始!ミサイル、艦砲、対空機銃なんでも使って何が何でも落とすんだ!」

 司令官の合図により一斉に放たれる砲弾。

 本来、この惑星の科学力並の国家であればこの飽和攻撃を受けてはただでは済まない。


 だが、


「敵部隊健在!」


「まさか…一機も落とせていません!!」


「くぅ…やはりか…」

 ヤマタイ共和国軍上層部や国連からの情報にあった通り、傷一つ付けられない敵部隊。

 艦隊司令官は苦悶の表情で呟いた。


「攻撃を続けろ!なんとしても国に近付けさせるな!」

 相手はなにも声明を出してこない。全ていきなり仕掛けてきてただ黙々と自分達を殺すような奴らだ。

 話し合いをする為に様々な周波数の電波やスピーカによる音声。看板。その全てに反応はなかった。

 今更話し合いに応じるわけがない。

 そう考えたからこそ艦隊司令官は勝てるはずがない、効くはずがないと分かっていても攻撃を続けるしかなかった。


「味方の戦闘機部隊の反応途絶!」

「敵、艦隊に接近!」


 オペレーター達から絶望の知らせが届く、

 先に空母や近くの空軍基地から出撃していた航空部隊は全て撃ち落とされたようだ。



 そして!


「敵部隊攻撃!ギャッ!?」


 艦隊は一瞬の内に破壊された。


 100近く存在する敵の宇宙連邦軍戦闘機や巨大ロボットの内、異常に機動性が良く、食べ物に群がるショウジョウバエの如く近くを高速で飛び回った機体が10機程、その機体達が艦隊の3分の1を撃破、残りを後続の敵部隊がミサイルやレーザー兵器で沈めていった。






―ヤマタイ共和国防衛本部基地―


「第2防衛艦隊消滅!」

「第4潜水艦隊、通信途絶!」

「海上及び陸上の第3防衛ライン戦闘開始!」


 現在ヤマタイ共和国の海岸線にて宇宙連邦軍の部隊とヤマタイ共和国陸海空軍が激しい戦闘を行っていた。


 宇宙連邦軍は既に海上の第2防衛ラインも突破し、いよいよヤマタイ国内の制圧に来たのだ。


「くそう!くそう!何故敵は我々を攻撃してくるのだ!」

 と、ヤマタイ国側の海軍の指揮官は憤怒し、机を叩く。

 拳からは血がにじみ出ている。


「こうなれば、新兵器を投入するしかありませんね…」

 そう陸軍の指揮官が呟いた。


「アレを…か?1年前から極秘裏にマルカワ研究所で作られたという…」

 次に空軍の指揮官が訝しげな目で陸軍の指揮官を見た。


「確かにあんな兵器何の役に立つのかとお思いでしょうが、アレは今までの兵器とは一線を画するものです。既にマルカワ研究所からも新型が次々と送られてきています」

 そう陸軍の指揮官が説明をすると、


「ではさっさと出撃させるんだ!今は砲一門でも戦力が欲しいんだ!」

 と、悲痛な叫びを海軍指揮官が発する。


「あぁ、了解した…。あの新型兵器達は我が国の盾となる事を保証しましょう」

 陸軍指揮官はそう返答して近くの部下に新兵器部隊の出撃を命じた。




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