第5章 プロローグ
ヴァルカ軍支配惑星833。
この惑星には知的人工生命体が数十億存在し、いくつもの国が作られていた。
この惑星の知的生命体の殆どは人工生命体であり、性格や記憶も人工的に作られたものである。
国は現在マスラが居る島国のヤマタイ共和国の他に、古代怪獣の研究所があるとされる大陸にあるナンジャワレ共和国等々が存在する。
「そして今回、私達は現地調査の為、ナンジャワレ共和国へと降り立ったのです!」
「「……」」
一人だけ勢い良く発言をしたマスラ。そしてその両隣にはニコニコと張り付いたような笑みを浮かべるの男女が2人。ルイとモリノ・エイサクことエイクック・ビ・メンメルである。
マスラ達は今、ナンジャワレ共和国にある大きな都市に来ていた。
目的はマスラが言った通りナンジャワレ共和国にあるとヴァルカ軍の秘密基地の潜入調査である。
今回その任務の内容上、流石にカザトはヤマタイ共和国へ置いてきたようだ。
「なんですか二人とも?元気が無いですねぇ~」
ただ笑顔なだけでマスラを見つめる二人に対しおどけた格好で聞くマスラ。
「「申し訳ありませんマスラ所長」」
だが、そう返答した表情も態度も一向に変わらない二人。
「ぐぬぬ。こういう時は普通『誰に向けて説明しているんだ!』とか、『空港のロビーで騒がないで下さい!』とかいろいろ言う事があるでしょう!?」
「「はい、以後気をつけますマスラ所長」」
「ぐぬぬぬぅぅぅぅ!!」
あまりの返答のつまらなさに憤慨するマスラ。
「もぅ!それじゃぁとにかく案内をお願いしますよモリノ君!!」
「了解。ではこちらへ」
プリプリと怒りながらモリノに命令するマスラ。
それに対しモリノは淡々と答えてマスラ達を案内する。
空港内で「ママぁー。なにあれー」や、「見ちゃいけません」とか言われていたが気にしてはいけない。
ちなみに何故モリノが案内役かと言うと、モリノはここしばらくナンジャワレ共和国に滞在しヴァルカ軍研究所の調査を進めていた。その為、今回マスラ達の案内役に抜擢されたのだ。
さて、このナンジャワレ共和国。
この国の説明をしよう。
最初に説明した通り、島国であるヤマタイ共和国の隣の大陸にある国家だ。
更に細かい事説明をするとヤマタイ共和国とは海を挟んで隣の隣の隣にある国である。
文明のレベルは非常にレベルが近い"地球"基準で例えると発展途上国に相当する。また、惑星833内の国々から見てもナンジャワレ共和国は発展途上国である。
大陸の南側にある国家で、ヤマタイ共和国の倍の面積を誇る。
しかし、人口はヤマタイ国の3分の1程しか居ない。
人口が少ない理由は国の半分が荒野で荒野には猛獣がうろついているからだ。
人口も少ないので無理して荒野の開発には乗り出していない。しかしその環境を利用しヴァルカ軍は荒野の地下に巨大な研究所を作っていたのだ。
ちなみにこの国の上層部はヴァルカ軍と結託していると考えられている為(というか殆どの国の上層部も)、モリノの潜入も非常に困難なものであったらしい。
そんなわけでマスラ達一行は空港の出入り口までやって来た。
後はモリノが停めてある車がある駐車場まで行くだけだ、が。
「パパぁ~、早く早くぅ!」
「こらぁ、そんなに急がなくてもボボンガは逃げていかんぞぉ」
と、楽しそうに会話をする親子の声が聞こえてきた。
ただ単に聞くと普通の親子の会話だが、マスラはこの声にいち早く反応し、ギギギと不自然な動きで声のする方向を見た。
マスラがそんな態度を見せた理由。それは聞き覚えのある声であった為である。
「(何で!?)」
なんとそこにはトラブルメーカーのモチダ・マミとその父であり大口の取引相手モチダ大佐が居た。モチダ大佐の隣に立っている女性は恐らく大佐の妻だろう。
「あ!」
「(しまった!)」
厄介な事にマミとマスラの目が合ってしまった。
「パパ!こんな所にマスラさんだよ!マスラさん!」
と、マミははいしゃいでモチダ大佐に知らせている。
「何?…おっ!本当だ。やぁ、マスラ所長。奇遇ですなぁ」
そう言いながらモチダ一家がマスラ一行へ近付いてきた。
「は、はい。奇遇ですねぇ、ご旅行ですか?」
マスラは営業スマイルで場を切り抜けようとする。
めんどくせぇとかは流石に言わない。いくら常識が欠けていると常日陰口をたたかれている人物だが、このぐらいの常識は持ち合わせているのだ。たぶん。
「あぁ、マミがどうしても夏休み中に野生のボボンガの群れを見たいと言っていたんでな。少しばかり私も長期休暇を貰って家族サービスをしたんだ」
「なるほど~ボボンガですかぁ」
モチダ大佐の話ににこやかに答えるマスラ。
ちなみにボボンガとは大型の兎のような草食動物だ。
短い毛で覆われているが、首元はライオンの雄のように雄雌共に鬣が有る。
動物園ではモフモフ動物として有名だ。
そしてマスラにとって全く興味を引く事は無い動物であった。
「マスラ殿は本日営業で?」
「えぇ~、そうなんですよ。旧式と言えど彼等にとっては新しいものが多々ありますからね。この国のお偉いさんにはやはり開発にも携わった私から説明をした方が良いでしょうから」
「ふはははは。それもそうだな。ではその売り上げを元にドンドン最新のものを開発し、我が国へ貢献してもらいたいな!期待しているぞ」
「はい。お任せ下さい」
こんな会話を一通り終わらせてモチダ一家は去って言った。
「…夏休みでしたか……トラブルメーカーが居たんじゃ気をつけなくてはいけませんねぇ」
マスラは言い知れぬ不安感が襲われ、そんな事をモチダ一家の背中を見ながら呟いた。




