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世界戦史の中で~研究所長の狂人マスラさん!~  作者: ルミネ
第4章 マスラさん、山姥と出会う
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第4章3話 山姥は子供を欲する


「随分と手酷くやられてしまったようですねぇ~…」

 そうマスラはマミの身体をスキャンしながら言った。


 現在マスラはルイを引き連れノエト山にいる。

 瞬間転移などを使用してはいない。

 車をすっ飛ばしてきたのだ。


 居場所は衛星から監視していたので分かる。

 そのためマミが山姥によって叩かれまくった事も知っている。


「この惑星の文明レベルに合わせた移動手段だった為、救助が遅れてしまいました」

 と、残念そうにルイは言った。

 下手にワープ装置など使ってしまえばこの惑星を管理するヴァルカ軍に見つかってしまう恐れがあるからだ。


「ふぅむ。死にはしない傷でしょうが、アザは結構残りそうですね。治療しますのでその後はマミさんを研究所まで運んでおいて下さい」

 マスラはそう言って掌を弄るようにマミの体の上を移動させる。

 そしてマスラは掌からは青白い光を出す。どうやら治療をしているようだ


「ん~…これでいっかなぁ?あ、そうだ。ついでに発信機も取り付けておこう!」

 余計な事をするマスラである。


 そして治療を終えると、

「後はルイがやっといて~」

 と、後はルイに仕事を投げる。


「畏まりました」

 ルイはそう言ってマミを担いで山を走って降りていく。


「さて、私は山姥を追いかけなくては」

 マスラはにやりと笑うとそのまま走ってヒジリと山姥を追いかけた。



--------------------------------------------------------------




「(もう嫌っ!もう嫌ぁぁぁ)」

 ヒジリは必死に逃げていた。どこへ隠れても見つかってしまう。そういう心理に囚われていた。

 例え民家に逃げ込んだとして警察を呼ばれてしまえば家へと帰されてしまう。

 そうすれば叔母の『モトムラ・カズエ』に子供を盗られてしまう。

 だから警察に頼むわけにもいかなかった。

 そう言ったことがあったため、電話をしようとしていたマミに対しても警察には連絡をしないでと頼んだのだ。


 勝手に決められたルールのせいで何故愛する人との子供を手放さなくてはならないのか。そう思えば思う程ヒジリは自分の子供を守りたいという欲求が強くなってきた。

 親としては当然。そう考えたからこその行動であった。



「どこへ行ったぁぁぁぁぁぁ」



 遠くの方でモトムラの声が聞こえてきた。


「(もう声が届く位まで追いつかれたの!?)」

 自身の叔母の執念にヒジリは驚く。


「(これじゃぁさっきの子が言っていた通り本当に山姥ね…)」

 と、心の中で叔母を罵倒しながら必死に逃げた。山を登っても下っても、更には逆方向へ行ってもなぜか叔母は追いついてくる。恐怖でしかない。


 お腹の中の子を気遣いながら必死に逃げるヒジリ。


「(大丈夫。大丈夫よ。きっと助かる)」

 そう子供に言い聞かせるように心の中でヒジリは思った。



「見つけたぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 しかし、残念な事にヒジリは山姥…いや、モトムラに見つかってしまった。

 どうやって聖が進んだ道と同じ方向へ進むことが出来たのか全くの謎である。


「ひっ!?」

 ヒジリは声がした山の上の方を見ると、叔母が物凄い勢いで木と木の間をすり抜け全力で下ってくる姿が見えた。

 これでは本当の妖怪である。


「そんな…もうダメ…なの…?」

 ヒジリの心は折れてしまった。

 恐ろしい形相で自分へ近付いてくる山姥を見れば誰もが恐怖するだろう。

 その恐怖にヒジリは負けてしまったのだ。



 すると、



「イソダきーっく!」


「ぐべへぇ!!?」


 間抜けな技名と共に黒い影が山姥を蹴った。

 山姥は走っていた勢いをそのままに倒れこみ、そのままグルグルと回転しながら山を駆け下りていった。


バシーン!!


 山姥は途中の木にぶつかりようやく停止をする。


「あ…あ…あ!」

 ヒジリは山姥を蹴った人物を見て驚愕した。


「ゆ、ユウイチ!」

 そう。山姥を蹴ってヒジリを助けてくれたのは他でもない、ヒジリが愛して止まない刑務所に居るはずのイソダ・ユウイチだったからだ。


「やぁ、ヒジリ。助けに来たよ」

 元教師イソダは優しく微笑ながらヒジリへと近付く。


「ユウイチ!ユウイチィィィ!!」

 ヒジリはユウイチの胸へと飛び込み泣きじゃくる。


「(これは本物!ユウイチの暖かさ。ユウイチの匂い)」

 ヒジリは自身を山姥から助けてくれた王子様的な元教師イソダに再びメロメロになっていまった。

 すると、


「(あれ…私…なんで急に…。安心…した…から…かな?)」

 と、いきなりヒジリに睡魔が襲ってきた。

 ヒジリは安心したからなのかと"勘違い"し、そのまま眠ってしまった。


「はい。こっちで眠っててねぇ~」

 と、元教師イソダは近くの落ち葉が集まった場所へとヒジリを寝かした。


「うひひひひ、では後はこっちですねぇ」

 そう言っていまだにうーうーとうめき声を上げる山姥。モトムラ・カズエへと近付く。


 もうお分かりであるかと思うが、この元教師イソダに変装した男の正体。マスラである。


「ぐ…このぉ…お前は誰だぁ!」

 蹴られたことにより痛む右わき腹を押さえ立ち上がり、射殺すような目でマスラを睨みながらそう言ったモトムラ。


「うひひひひ。いやぁ、貴方のお望みを叶えてあげようと思っている者でございます。ご安心してくださぁい」

 と、ニンマリと不気味な笑顔でそう言いながらモトムラに近付くマスラ。


「!?……」

 流石に目の前の人物の異常さに気付いたモトムラはたじろぐ。


「うひひひ。貴方の望みは子供が欲しい。違いますか?」


「…そうよ。私は子供が欲しい。主人は子供に興味が無かったみたいだから作ることは出来なかった。だけど私は欲しかった。ならばその子から子供を貰おうとしただけよ!何が悪いの!?私が貰わなかったらその子の両親。私の妹夫婦によって捨てられていた子よ!?」

 と、モトムラは熱弁を始めた。必死に自分は悪くない。と言っているかのようである。


「おぉぉ。それは立派な志。確かにせっかく授かった命を無駄にするなんて貴方にとっては許せない行為だぁ」


「あ、貴方もそう思うのならばなんで邪魔をしたの!?私はその子の親からちゃんと許可を貰っているのよ!」


「しかぁし、父親…。ナカガワ・ヒジリのお腹の中にいる子供の父親には許可は取っていないでしょう?」


「当然じゃない!その子のお腹の中に居る父親は塀の中よ!」

 その塀の中に居るはずの人物がここに居る事に疑問を抱かない山姥。

 そもそも父親の顔を知らないからこそこのような反応なのだろう。


「うひひ。うひひひひひひ!そうですねぇ。貴方はその塀の中に居る父親の子を貰いたい。そういう考えでよろしいのですか?」


「そんなの聞くまでもないわ!子供には罪は無い!」


「うひひひひひひ。そうですかそうですか…。ならば貴方の願い聞き届けましょう…」


「そう、分かってくれたのね。ならそこをどいて…」

 モトムラはホッとし僅かに笑みを浮かべた。

 だが、


「いえいえ。別にこの子お腹の子を盗らなくても良いんです。私が子供を提供しましょう」

 と、言うマスラの提案にモトムラは訝しげな表情をする。


「あ、あなたは…人身売買でも持ちかけようとしているの…?」

 流石にそれはヤマタイ共和国でも犯罪なのでモトムラは躊躇する。


「うひひひ。違いますよぉ~、簡単な話です。この子のように嫌々子供を手放すような人物ではなく、ちゃんと納得した上で譲ってくれる方が居るんですよぉ~。勿論料金なんて要りません。まぁ、手術費は普通にかかりますけどそれはこの子の子供の場合と一緒ですよね?」


「……」

 話が旨すぎる。

 そんな条件は滅多に存在せず、今までそういった機関に登録しても順番待ちとやらでそう言った機会にめぐり合う事はなかった。

 既に成長した養子を迎え入れるという案は存在するが、やはり自分自身で産んでみたい。それがモトムラ自身の希望であった。


「もしあなたに納得していただければ、生まれてくるはずの命が救えるのですよ?」


「う…」

 先ほど自身が正論としていっていた事を返された。

 モトムラは子供自体は嫌いではない。むしろ好きな部類だ。

 命を救えると聞いてモトムラの心の中にふつふつと命を救うという義務感が湧いて出てくる。


「さぁ、行きましょう。手術を引き受けてくれる病院へは私が案内しますよぉ」

 マスラはそう言ってモトムラへ向けて手招きをした。


「………」

 モトムラはマスラの言葉が悪魔の囁きのように捉えたが、自身の欲望の方が勝ってしまった。


「えぇ、いいでしょう。行きましょう…」


 モトムラはこれほどあっさり自身がこんなに怪しい話しに飛びつくとは思わなかった。


 まぁ、実際はマスラが"催眠誘導"をしていたのでこれほど簡単に納得させることができたのだが…。


「あ、性別はどっちが良いとか希望があります?こちらとしては男女両方を産んでもらいたいのですが…」


「ふ、双子ですか…。経済的には余裕があるので別に構いませんが…」

 既にモトムラはマスラの言う事をすんなりと受け入れてしまう存在となってしまった。


「(さて、これで解決しましたかねぇ)」

 と、面倒くさそうに下山するマスラだった。


 勿論マスラはナカガワ・ヒジリを抱きかかえて――――――。



--------------------------------------------------------------


―マルカワ研究所所長室―


「今回の件、ありがとうございました」

 カザトは深々と頭を下げてマスラに礼を言った。


「いえいえ、お気になさらず。私も楽しみなんですよぉ、ヒジリさんが将来見せる絶望の表情が」

 と、さらっと怖い事を言うマスラ。


「はははっ、そうですか。ですが俺の復讐に協力していただいていることも事実です。しかし、今回は驚きました。まさか病院に居る医者を操ってしまうなんて大胆な事するとは思いませんでしたよ。それが出来るのであれば他の方にもやってしまえばよろしいのでは?」

 と、カザトは提案した。


 カザトが言うようにマスラは今回、結構大胆に人を操った。

 医者や看護師等々、一時的ではあるがマスラの言う事を聞かせるようにしたのだ。


「うひひひひ。それはダメなんですよカザト君。一時的、更に一つの事柄にのみしか操る事は出来ないんですよ私は。そうしないとバレてしまいますからねぇ。Dr.ジュパーソンやヴァルカ軍の連中に」


「では何故今回はそのような手に?」


「実験をしてみたかったのです。私が作った"カンラ"がちゃんと生まれて育つかどうか」


「!?」

 カザトはマスラのその発言に驚いた。

 なにせカザトが習った宇宙連邦の法では特定の種族ではない限り人工的に子供を一から作ることは禁止されているからだ。

 つまりマスラがやったことは違法行為である。


「で、ではモトムラ・カズエのお腹の中に居る子は…?」


「えぇ。立派な人工生命体"カンラ"です。どの位立派かというと文武両道。容姿端麗。性格も良く造りました。君とヒジリさんとの子とは違ってねぇ」

 と、マスラは自慢そうに言った後、カザトの心を容赦なく傷つける。


「…そ、そうですか。それで、ヒジリの方は今どうしているんです?」


「あぁ、彼女は今彼女の自宅に居ますよ」


「え…?」

 一瞬カザトは青い顔をする。が、


「うひひひひ、大丈夫ですよぉ。安心なさい。彼女の両親には私から弁護士を派遣しておきましたから。彼女の両親には彼女のお腹の子に手を出したら訴えるというようにしておきましたから。それに金も有る程度彼女の部屋に置いておきました。元教師イソダの名前をメモ書いて添えてね」


「そうですか…何から何までありがとうございます。では俺は仕事に戻ります」


「うん。そうして下さいな」

 マスラは満足そうにそう言ってカザトが所長室から出て行くのを見送った。

 そして入れ替わるようにルイが部屋へと入ってくる。


「失礼致します。マミさんが目を覚ましました」

 ルイは入ってくると同時に報告をしてきた。


「そうですか。ではマミさんに会ってみますかねぇ~」







 マスラはマミが寝て居た部屋へノックをしてから入った。

 いくらマスラでもその位の常識はある。


「やぁ、マミさん。今日は災難でしたねぇ」

 と、満面の笑みでマミへそう言った。


「……ほんっっっっっとうに!死ぬかと思いましたよ!何なんですかあれ!?あの子の叔母とか言ってましたけど信じられません!埋蔵金の守り神…いえ、悪霊ですか?あれは!」


「さぁ。私は何も見ていませんのでなんとも…」


「傷だって消えてるしっ!あれだけ殴られて痣一つ無いってどういうことですか!?」


「さぁ。私は何も見ていませんのでなんとも…」


「痛みもないんですよ!?」


「さぁ。私は何も見ていませんのでなんとも…」


「全部夢だったんでしょうか…?」


「さぁ。私は何も見ていませんのでなんとも…」


「そういえば、一緒に逃げていた女子。ナカガワ・ヒジリさんを知りませんか?あの子も追われていたんです」


「さぁ。私は何も見ていませんのでなんとも…」


「……私の事馬鹿にしていますよね!?」


「いいえ?まっさかぁ。そんな事あるわけないじゃないですかぁ。それよりも、金属探知機という名の地雷探知機はどこへ?」


「……それはそれとしてあの山にはしばらく近付くのは止めておきましょう!今回は良い教訓になりましたよマスラさん!」

 と、突如話をそらすマミ。


「……一応ナカガワ・ヒジリという子の確認をとっておきますよ。その子確か前の盗難事件の関係者だった子ですよね?」


「…はい。よろしくお願いします…」


「まったく。つくづくトラブルに巻き込まれる人だ…」

 本当にどうしようもない人だといわんばかりの目をしながらマスラはマミを見た。

 マミはシュンとしてしまい俯いてしまっている。


「(まぁ、何にせよ私やカザト君の楽しみを減らさずに済むことが出来ましたし…。多少の苦労も仕方がないでしょう)

 と、マスラは思っていた。



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