第4章1話 お宝探しをしていたら
―マルカワ軍需品研究所所長室―
「なるほどなるほど~。で、ナカガワ・ヒジリはカザト君に助けを求めて来た…と」
「はい。そういうことです」
現在、この研究所の所長マスラとカザト、そしてエミリの三人が来賓用のテーブルに座ってルイから配られた茶を飲んでいた。
「つまり話をまとめますとぉ、カザト君の元カノのヒジリさんは今お腹の中にいる子供を親戚にとられそうになっている。と、いう事ですねぇ?」
「はい、移す対象の親戚とやらには子供が居ないようでして…。それに犯罪者との子供であるのならば世間体が悪いだろうという事でヒジリからヒジリの親戚の…『モトムラ』って人に移す計画を勝手にヒジリの両親達が立てているようなんです」
「うひひひひっ、お腹の中の子を別の人間に移したところで犯罪者の子供という点は変わらないでしょうに!そんなのは詭弁で実質は子供を奪おうという計画じゃぁないですかぁ」
マスラは何がおかしいのか軽快に笑っている。
「えぇ、それでヒジリは『実は教師イソダの子供じゃなくて、フソウ市警察署長の息子の子なの!』って嘘を吐きたいから協力してくれって言っているんですよ…」
「うひひひ。実際には嘘ではなく、貴方の子ですからねぇ」
「まぁ、そうなんですけどね。ですのでヒジリには考えさせてくれと言ってあります。このままでは俺の計画が頓挫してしまいますから…」
と、会話に出ていた通り、ナカガワ・ヒジリは自身のお腹の子を教師であったイソダという人物との子供だと思っている。
しかし、実際はカザトとの子で、ヒジリや教師イソダはその事を知らない。
さて、何故カザトやマスラはその事実を隠しているかというと、
「うひひ。そうですねぇ…、ヒジリに子供を生ませてしっかりと愛情を注がせながら育てさせ、立派になった所で実はカザト君との間に出来た子供でしたぁ!っていうドッキリ計画が台無しになってしまいます!これは由々しき事態ですなぁ」
とまぁ、こんな感じの非常に悪趣味な計画である。
「………」
そんな計画を聞かされていたエミリは渋い顔でマスラを見ていた。
「おんやぁ?どうしたんですかエミリさん。浮かない顔をしていますよぉ?」
マスラは首をいきなりぐるんとエミリの方へ向けて問いかけた。
「はぁ…、いえ。貴方の悪趣味はいつもの事ですからなれています。ですが、ちょっと気になっていた点がありまして…」
と、エミリはポツリと言った。
「んむむぅ?どういう点ですか?少しでも疑問点があればおっしゃっていただきたいですなぁ。不安要素をちょっとでも削っておきたいのです!」
マスラは目をらんらんと輝かせてエミリに問う。
明らかに努力する内容を間違えている。
「はぁ、まぁちょっとしたことなんですが、まだヒジリって子のお腹の子供って3ヶ月目を過ぎている頃ですよね?そんな子供を他人の女性の腹へ移す事ができる医療技術がこの惑星にあると思っていなかったもので…」
エミリがそう言うとマスラは納得したように話を始めた。
「ははぁん、そのことですか。実はDrジュパーソンが実験をする惑星の特徴として、総じて医療技術が高いんですよ」
「それは何故です?」
「これは私の推測になるのですが、おそらくせっかくの実験体をくだらない理由で死亡させたくないってことだと思いますよ?見事に軍事利用されそうなものは殆ど見られないのがこの説を確証つけるものになっていますよぉ~。うひひひひ」
「そう…ですか」
かなり重要な事を聞いた気がするが、マスラの気が抜けた話し方により既にどうでもよく感じるエミリ。
「それはさておき、『ナカガワ・ヒジリ』の子供を守る作戦。早々に立てて実行しなくてはなりませんねぇ。私も彼等がどういう反応になるのか楽しみなんです!!」
「お願いできますでしょうか?」
カザトが不安そうに尋ねると、
「うひひ。まぁ、なんとかなるでしょう」
と、マスラはヘラヘラと笑いながら返事をした。
「そういえば今日はあの子…、モチダ・マミさんは一緒ではないんですね」
カザトはそういきなり話題を変えてエミリに聞いた。
「え?あぁ、いつも一緒なわけないでしょ。あの子だって毎日研究所にきているわけじゃ…」
「今日朝早くに来ましたよぉ~」
「「え!?」」
突如マスラからもたらされた情報にカザトとエミリは驚く。
「なんでも宝探しをするから金属探知機を貸して欲しいと急にスコップ片手にやってきました。金属発見できればなんでもいいかなぁ~っと思って地雷探知機を渡しました」
「あぁ…そういえばそんな事を言って私を誘ってきてたわね…。私は断ったけど…。はぁ……あの子は何を考えて生きているのかしら」
「「さぁ」」
--------------------------------------------------------------
カザトがマスラへ相談していた頃、相談の元となったヒジリは逃げていた。
お腹に子供がいるため、気遣いながら必死に逃げていた。
そうしないと自分の子供が他人に盗られてしまうからだ。
「(なんで…こんな目に!ユウイチ、助けて!)」
今は刑務所に入っているヒジリのお腹の中の子(と、ヒジリは思っている)の父親、イソダ・ユウイチの事を想いながら。
そしてヒジリは山の中に逃げ込む。
こんな山の中に逃げ込んで逃げ切れられるわけは無い。
だが、カザトからの連絡があればカザトの家へ逃げ込むことは出来る。
そうヒジリは思っていた。
しかし、やはりただ地べたに座って待つのは嫌だ。何処かに拠点となる場所はないだろうか。
そう思って山の中を探していると、
ガサッ。
「「え?」」
ヒジリは自分と同じくらいの年の女の子に出会った。
手には長い棒の先に円盤が付いている道具を持っている。
背中にはスコップ。そして頭には黄色いヘルメットを装着している。
ヒジリには目の前の人物が何者なのか全く理解できなかった。
一方ヒジリの目の前に居る少女、『モチダ・マミ』はというと、
「(あれ…?この子何処かで…――――。あ!確か盗難事件の時のナカガワ・ヒジリ!)」
と、マミの方がいち早く目の前の人物が誰なのかわかったようだった。
お互いがこんな所で何をしているのだろうかと思っていたところ、
「待ちやがれぇぇぇぇぇーーーーーー」
突然、ヒジリの後ろから声が聞こえてきた。
「ん?」
何事かとマミはヒジリの後方を見る。
「ひぃぃ!」
ヒジリは声に驚いたようで顔を青くしていた。
「んん?」
マミはヒジリが異様にビクついていることを不思議に思う。
「た、助けて」
ヒジリはマミへと縋りつき助けを乞う。
「へ?え?何から??」
マミは何がなにやら分からないという顔をするが、直ぐにヒジリが恐怖を感じている理由が理解できた。
「見つけたぞぉぉぉおおおお!!!私の子供を返せぇぇぇええええ!!!」
「うぉえぃ!?」
マミは山の下から物凄い勢いで駆け上がってくる女に対して恐怖を感じた。
一目で言うと山姥。妖怪の類であると感じ取ったのだ。
ボサボサの髪を振り乱し、形相は絶対に普通の人では作ることが出来ない怒りの表情だ。
「「ひぃぃぃいい!?」」
マミとヒジリは同時に悲鳴を上げた。
一方ヒジリはマミの後ろへ回り込み、マミを盾にする。
「ちょっ!なに!?」
突然の事で頭が付いていかないマミ。
戸惑っているともうマミの目の前に山姥が迫っていた。
そして山姥は口を開き、
「なんだいお前は!!お前には用は無いんだよ!そこの娘のお腹の子は私が貰うんだよ!分かったらさっさと退きなっ!」
そう高圧的な物言いでマミへと迫る。
マミは焦った。
マミは母親から昔聞いた山姥の伝説を思い出したからだ。
曰く、山姥は人を攫い人を喰らう。
曰く、山姥は人の中でも子供の肉が好き。
曰く、山姥は妊婦の腹を引き裂いて子供を取り出しその場で喰らう。
何故こんな話をマミの両親は自分の娘にしたのかは分からないが、マミはこの事を思い出し行動に出た。
「や、山姥め!さっさと立ち去れ!そうでないとこの超科学的文明利器がお前を打ち滅ぼすぞ!」
と、マミはやや芝居がかった台詞で金属探知機と言う名の地雷探知機を振り回し、ヒュッヒュッと風を切る。もうヤケクソだ。マミ自身何を言っているか意味が分からない。しかしこの奇行もヒジリのお腹の子のためだ。恥ずかしさも我慢し山姥へ立ち向かった。
ヒジリのお腹の中に子供がいるということは学校中に噂になっている為知っていた。
とにかく子供だけは守らなくてはいけない。マミはそう考えて行動に出たのだ。
だが、マミの発言を聞いた山姥は、
「誰が山姥だぁああああああ!!」
と、激怒した。
どうやら山姥には効果が無かったらしく、更なる怒りに触れたらしい。
「あっ!」
マミは山姥にあっさりと地雷探知機を奪われてしまった。
「こんなもんで私を脅そうってのかぁあああ!!!」
「「ひゃぁぁぁぁあああああ!!!」」
山姥は奪い取った地雷探知機を振り回し、それに恐れをなしたマミとヒジリはその場から逃げ出した。
--------------------------------------------------------------




