第3章4話 誕生!機械生命体
翌日。マルカワ研究所。
所長室。
「と、まぁこんな具合です」
そう愉快そうにマスラは話を区切った。
「はぁ、今日のマミが授業中ずっと寝ていた理由が分かったわ。とりあえず安全に送り届けてくれたことにお礼を言っておきます」
と、エミリは言った。
マスラはそんな発言にツッコミを入れないように気をつける。
だが、
「(今、自然とデレた!普段アレだけマミさんの事を厄介者扱いしているにもかかわらず!送り届けてありがとうとか言った!)」
と、僅かに興奮していた。
そんなマスラの様子を不審に思いつつ、
「どうかしましたか?えっと、それよりもどうなったんですか?そのホンジョウ・ゴウという人物は」
話を途中で止められてしまった為、エミリは続きを早く聞きたくうずうずしていた。
「うひひひ、そう焦らないで下さいな。結果は既にご想像できているかと思いますが、ホンジョウ・ゴウは黒でした」
「あら?」
マスラの答えに意外そうな顔をしたエミリ。
「おや?どうかしました?」
エミリの表情に疑問を感じたマスラはその表情の意味を問う。
「いえ、いつもであれば嬉々揚々と成り行きを語っていたので、これほど素早く回答をいただけるとは思っていなかったんです」
マスラといえば自分の推理の結果を相手へ自慢するかのように聞かせるのが通例である。
だが、今回それをしなかったことにエミリは驚いたのだ。
「うひひ。確かに過程というのは大事ですからねぇ。しかし、今回それをすっ飛ばしてしまうほどの結果が出てしまったんですよ!いやぁ、非常に愉快な"結果"になりましたぁ」
と、一人で盛り上がるマスラ。
そして何を興奮しているんだ?と怪訝な顔をするエミリ。
「ところで、その調査というのはそのホンジョウとかいう男の脳みそを穿り返して調べたという事でよろしいですか?」
若干浮かれているマスラを冷ややかな目で見ながらマスラにそう問う。
「いえいえ、ちょっと『貴方に先日轢き飛ばされ、暴行を加えられた少女の事を知っていますよ』と、言ったら逃げ出そうとしたのでルーイ君が押さえつけたらピーピーと事実を認めるようにササノ・ケイコに暴行した理由を話しました」
そう話したマスラにエミリは先ほどマスラが話していた『結果』というのを知りたくなった。
なにせ今マスラが説明したホンジョウ・ゴウがササノ・ケイコを轢いた上に暴行を行ったという話。その中でもマスラが今までしていた、『相手はどんな表情で絶望していたか』をおもしろおかしく語ってはいない。いつもならばしていることなのでエミリは気になった。
「ふぅ、ではその後の話を聞かせてください。先生がそれほど興奮する理由。是非教えてはいただけませんか?」
この時、エミリは好奇心に負け、とんでもない選択肢を選んでしまった。
「えぇえ!?興味があるんですか!?興味があるんですね?エミリさん」
と、マスラは興奮しながらエミリに詰め寄った。
「うぐっ。彼がその後なんの対処もされず野に放たれたのであればことですからね。結果だけでも知りたいんです」
マスラの興奮にウザさを感じたエミリは仰け反りながらそう答えた。
「うひひひひひ。まぁいいでしょう。では結果は見たほうが早いので、地下室へどうぞ。ルーイ、付いて来なさい」
と、マスラはエミリを地下室へと誘う。
「地下ってまさか地下牢にでも閉じ込めているの?」
一応カモフラージュはしてあるが宇宙連邦軍の施設である為地下牢があっても不思議ではない。
ましてやマスラという人物が管理する建物であるならば地下牢がある可能性はグッと上がる。
「いえいえ、彼は有る意味野放しですよ」
そう言ってマスラは先頭をスタスタと歩いていってしまう。
エミリは慌てて駆け足で付いていく。
「(野放し?まさかカザトと同じように仲間に引き入れたというの?)」
エミリはそう考えて顔を強張らせた。
何せカザトとは違い惑星クラレス人に傷が残るほどの暴行をした人物である。
そんな人物を仲間に引き入れるという行為はかなり嫌悪されるべき事柄である。
エミリはムスっとした顔でエレベーターに乗って地下室へと向かった。
「~~~♪~~~♪」
マスラの心情はエミリとは正反対で、呑気に鼻歌を歌っていた。
チーン。
「さぁ、着きましたよ」
と、マスラは目的の階に到着した事を告げた。
エミリは降りる際、
「先生。もしホンジョウ・ゴウが然るべき扱いを受けていない場合は私は貴方に対し惑星リョーキューの市議会議員として何かしらの対応を取らなくてはなりません」
と、一応釘をさしておく。
「ギクッ!」
マスラはわざとらしく反応した。
だが、
「あ、でも…。う~ん…あれダメなのかなぁ?」
と、マスラは不安になったのかルイに相談している。
「十分アウトだと思います」
などとルイからは言われてマスラはショックを受けている。
ルイの発言でエミリはますます気になってしまった。
「…さぁ、ホンジョウ・ゴウを見せてもらいましょうか?どこに居るんです?」
広いフロアだ。
マスラが今回の件で使用したレース用の車や、宇宙連邦軍の車両が置かれている。
「えぇ、こちらですよ…」
マスラはそう言ってエミリをとあるシートに包まった車の前に連れて来た。
シートは上からクレーンを使い紐で吊り下げられており、上へ吊り下げる事によりシートを外せるようだ。
「?」
エミリは何が何だか分からないという表情だ。
「ではルーイ。シートを外して下さい」
「はい」
マスラの指示でルイは近くにあったボタンを押した。
グイーン。
と、クレーンが上がり、シートが持ち上がる。
そしてシートから一台の車が出てきた。
そしてマスラはその車を紹介した。
「名付けて、『ホンジョウ・ゴウ』改め、『ホンジョウ号』です!」
イントネーションの違いである。
「ひっ!?」
エミリはその車を見て小さく悲鳴を上げた。
「生き…ているの…?」
エミリがそう質問をすると、
「えぇ。生きていますよ」
と、マスラは答えた。
目の前にあったもの。それはホンジョウ・ゴウが乗っていた緑色のカスタム車だ。
しかし、ただのホンジョウ・ゴウの車というわけではない。
なんと車のフロント上部にホンジョウ・ゴウの顔が大きく張り付いているのだ。
色は車と同じ緑。目がキョロキョロと動き、口をパクパクとさせている。
「この人がホンジョウ・ゴウです。いやぁ、野放しにしていますけどご覧の通りエンジンをかけなければ動き回る事が無いのでご安心してください~」
と、マスラはエミリに向かって言った。
もはや何を安心するのか分からなくなったエミリは、
「私は…そういうことを言ったわけではありません…。この件は確かに公表できませんね…」
と、苦々しいといった表情をしながら言った。
「あ、そうそう。クラクションを鳴らせば話をすこともできますよ!一押しで一言のみなのは残念ですが…。ルーイ!」
マスラはルイに声をかけ、車のドアを開ける。
そしてルイは何度もクラクションを叩いて鳴らす。すると、
ポンッ!
「<たー>」
ポンッ!
「<すー>」
ポンッ!
「<けー>」
ポンッ!
「<てー>」
ポンッ!
「<くー>」
ポンッ!
「<れー>」
「うひひひひひひっ!うひひひひひひっ!気持ち悪すぎっ!」
マスラは大笑いであった。
「……」
一方エミリはマスラをゴミを見るかのような目で見ている。
「一応聞いていきます。なぜこんな事に?」
エミリはマスラを睨みつつそう質問をすると、
「え?あぁ、それはですね。ササノ・ケイコを襲った動機を聞いたら『俺の魂レベルまで同化している車を傷つけたんだ。殺さないだけありがたいと思え!』って言ったんですよ。でもよく見てください?あぁ、今は無理ですけど…、話を聞いた時はどう見ても車とホンジョウ・ゴウは魂レベルまで同化していなかったんですよ。まぁ、今回このような結果となったのは私からの個人的なご褒美です。だって車と魂レベルで同化したかったみたいだったんですよ?」
そう悪びれずに言い放ったマスラ。
「はぁ…先生はそういう人でしたよね。比喩が通じないっていうか…」
と、エミリは頭を抱えてしまった。
「まぁ、こんなことになっているんで牢とかには入れていません。これ以上の罰が必要でしたらご提案を頂きたいんですよねぇ」
そう困ったなぁという顔で言ったマスラ。
「いえ、いえ…これ以上の罰なんてないわよ…」
エミリがそう言うと、
ポタッポタッ。
いきなり車と一体化したホンジョウ・ゴウ。いや、ホンジョウ号の目から涙が出ていたのだ。
「あ~、こら!ウォッシャー液もタダじゃないんですよ?」
と、マスラはホンジョウ号に向かって怒っている。
「まったくぅ。下手に生物に近づけたのがいけなかったんですかねぇ。今後は会話が出来るようにカーナビを介して会話が出来る機能をつけようかと思ったんですがやっぱりやめますか…。騒がれると面倒ですからねぇ…」
などと言ってマスラが言うと、ホンジョウ号はイヤイヤと目を左右に動かしている。。
「ちなみに自動運転も可能ですよ?」
と、マスラはいらない情報をエリカへ伝えた。
「はぁ…もういいですよ…。その人物がこれほどの目に遭っているのであれば私から特に何も言う必要はありません」
そうエリカが言うと、
「そうですか。それはありがたい。それでは試しにこの車に乗ってみます?」
などととんでもない事を言ってきた。
「いえ、結構です」
「さぁ、ルーイさん。エンジンを掛けてください」
「話を聞けよ!」
マスラはエミリの拒否など聞き入れずルイに指示をした。
ブロロロロン!!ブロロロロン!!
ルイは車にエンジンが掛け離れる。
「さぁ、こっちまでおいで!」
と、マスラはまるで犬か猫に話しかけるかのようにホンジョウ号を呼んだ。
すると、
ウイーン!
と、ホンジョウ号は動き出す。
「お?」
マスラはわくわくとまるで子供のように興奮していた。だが、
ドガーン!!
なんと、ホンジョウ号はいきなりバックをして後ろの車へとぶつかってしまった。
「<ぎゃーーーーーー!!!>」
プーーーーーーーー!!!
ぶつかった衝撃で二台の車がクラクションの音を上げる。いや、一台は叫び声である。
「もう帰っていいですか?」
何処かと遠い目をしたエミリがそうマスラに言った。
「うひひひひひ!まぁ、今日のところはこれ以上楽しめそうは無いので、後日という事にしましょうかねぇ。しかし、まだ自信の制御が上手くできていないようですねぇ」
と、なぜかマスラは嬉しそうだ。
そしてマスラはその後、ホンジョウ号と後ろの車の接触具合を見て一言呟いた。
「いやぁ、しかし車同士で合体したいだなんて…。はははこれじゃぁ、いや、これが本当のカーセッ」
「黙れ!!」
エミリの怒声が研究所に響いた。
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