第3章2話 ペーパードライバーマスラさん
2日後。
「よぅ!よぅ!俺等のイカれた仲間を紹介するぜ?」
マスラはテンションMAXの状態でファンキーな格好をしながら後ろに二人を紹介する。
「まずは、目の前を遮る奴ならジジババガキでも轢き殺す『ロードローラーのカザト』ぉ!」
と、同じくフォンキーな格好をしたカザトが指名された。
「いえーい!」
カザトは舌をベロンと出して目を剥き挨拶をする。
「「「いえーい!」」」
マスラ意外の方々もノリノリだ。
全員フルカスタムされた車に乗り、カラフルな格好をした若者である。
いわゆる『走り屋』。そう分類される者達である。
「続いても一人紹介するぜ!その容姿で男共を脇見運転!俺はこの子の脇見て運転!『キューティールゥゥゥイィィィィ』」
マスラは再び紹介に戻り、隣に居たルイを紹介する。
「皆ぁ~!よっろしくぅ~」
ルイがお色気たっぷりでそう言って挨拶をすると、
「「「いやっふぅ!」」」
ピーピー!
ヒューヒュー!
と、歓迎の声がそこら中から上がった。
さて、なぜマスラ達はこんなふざけた格好をしてこのような集団の中にいるかと言うと、ルイの調査により暴行されたササノ・ケイコが居た峠をよく利用する人物達の情報を掴んだからだ。
その集団は今マスラ達が潜入している走り屋であった。
あまり普通の人は通らない道である。
ケイコを暴行したとしればこの者達が怪しい。
と、たった数日で以上のことを調べ上げ、潜入の準備まで整えたマスラ部下達は非常に優秀である。
本来、マスラは参加する事は無かったのだが、
「なにその集団おもしろそう!」
と、いう一言で急遽マスラはカザトをつれて走り屋の集会に参加することになったのだ。
「ふはははは!面白れぇ奴等だなオメェラ!気に入った。歓迎してやろうじゃねぇか!」
そう言って前に出てきた男は、緑のモヒカンの髪にピアスだらけの顔面。痩せ型でギョロッとした目が特徴であった。
「俺はマッスーラってんだぁ。よっろぃくぅ!」
と、マスラも自己紹介をする。
「おう!よろしくな。俺はホンジョウ・ゴウ。この峠の事なら何でも聞いてくれ」
と、そのモヒカン男が言う。
「へへっ!了解でさぁ!よろしくお願いしますぜぇ兄貴ぃ!」
「うははっ!兄貴はよせ、兄貴は」
気をよくしたのかホンジョウはマスラの背中を叩いて一緒に歩いて走り屋集団に近付く。
そして、
「おい!"マミ"、新入りを連れて来たぞ!ここでのルール。教えてやれ!」
と、ホンジョウは一人の女の子を呼びつけた。
「はい!ボス!」
少女は勢い良く飛び出してくる。
「(……)」
マスラはここで呆れ顔をしないようにするのが精一杯であった。
「貴方が新人の…」
少女がマスラの顔をマジマジと見ながらそう言うと、
「へいっ!マッヒュールァーっていいまさぁ~。よろしくおねげぇします。姉御ぉ」
と、マスラは自己紹介をした。
この時、マスラは顔を変えていて良かったと思った。
勿論ルイやカザトも微妙に変えている。
「え?あ、うん。よろしくね?マッヒューリャー…さん?」
目の前の派手派手の化粧をした少女は名前を言い辛そうであった。
マスラが顔を変えていて良かったと思った理由…。
それはマスラの見知った人物がいたからだ。
そう。目の前には何故か『モチダ・マミ』が居たのだった。
――――――。
「それじゃぁ、新人達のレースは最後から二番目よ?分かった?」
「「「へい!」」」
マミの説明で大体のここでのルールは理解できた。
「<(マスラ様。やはり目の前に居る人物のバイタルパターンは『モチダ・マミ』でした)>」
と、ルイがテレパシーでマスラの脳内に直接報告をする。
「<(でしょうねぇ。まったくなんでこんなに厄介ごとに首を突っ込むんでしょうか)>」
マスラも呆れている。
「<(どうすればいいんです?彼女も一応調査に参加しているようなので、協力しますか?)>」
と、カザトもテレパシーを使いこなしながらマスラに問う。
カザトもマスラにより脳内にナノマシンを入れられ、テレパシーが使えるようになったのだ。
「<(いえ、我々は顔を変えているんです。我々の正体がバレたらややこしい事になるので伝える事はやめましょう)>」
そう言ったマスラの言葉によりマミとの捜査協力はしないことになった。が、
「う~ん、貴方達なんだか知り合いに似ている気がするんだけど…名前ってなんだっけ?」
と、鋭い勘でマミは三人を疑いだす。
「俺はマヒュールァァってんだけど、先輩、何をいっているんどぅあぁぁい?オレッと知り合いって、マジですかぁぁい?」
と、応えるマスラ。名を名乗るたびに名前が変わる。
「わたしはぁ~リュールィィ~」
「ひゃっは~!!キュヅァートゥだぜぇ」
他の二人もきわどい偽名を使う。だが、
「う~ん。やっぱり似ているようで違うなぁ」
と、マミを誤魔化す事に成功した。
しかし、マミもこの程度の観察眼では一緒に調査をするのは難しいだろう。
「(思った以上にやり辛くなりましたね…)」
マミの存在であまり派手に動き回れなくなったマスラ。
無法者には容赦などないが、善良な一般市民であるマミを傷つける事はできないので、大人しく行動をするしかなくなってしまった。
それはさて置き、今回いろいろと調査をする中で、マスラはレースに参加しなくてはならなくなった。
まぁ、走り屋の集会でただ突っ立ってるというわけにはいかないだろう。
中心人物にお近付きになる為にもレースで良い成績を出さなくてはならないのだ。
現在、既にレースは始まっており、走り屋達が二台ずつ物凄い勢いで走っている。
観客も奇声を上げている。歓声なんだろうがその声は奇声である。
「(どの車もかなりのスピードを出していますねぇ)」
安全運転とは程遠い走りをする彼等を冷ややかな目で見るマスラ。
と、いうよりも元々彼等に興味が無いため、マスラは車遠目で調べている。
塗装、へこみ、傷等々を調べ『ササノ・ケイコ』を轢いた上に暴行をした犯人の車を特定しようとする。
「(事故車をそのまま使用することはありえませんか…。では、当たらしめな塗装やパーツを調べていきましょう…)」
ジーっと見ているマスラの目は真剣そのものだ。
普段こんな大勢の人間の中では決して見ることはできない光景である。
「(無いですねぇ…)」
残念ながらマスラはレースをする車の中で、怪しい車を発見する事は出来なかった。
「よう、新人。次はお前の番だぜ」
と、マスラの後ろから声が掛かった。
「あ、ホンジョウの兄貴!チーッス」
マスラはマヒューラだかマチュラだかのモードになってホンジョウに挨拶をした。
「はははっ、真剣にレースを見ていたようだが、参考になったか?」
「へい!そりゃぁ勿論。皆さんマジパネェっスねぇ~」
マスラはそう褒めるとホンジョウは気をよくしたようで笑顔でマスラの背中を叩いて、
「おう、そりゃ当然だろ?ここに居るやつ等は皆魂をマシンに同化させた奴ばかりだよ。よし、お前も言って来い」
「へいっ!(魂をマシンに同化…ねぇ)」
そうマスラはホンジョウに背中を押されてレースへと向かう事になった。
「さぁさぁ、本日の目玉。新人の二人がレースをするぜぇぇ!!」
「「「「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
峠の道では異常な盛り上がりをする走り屋達。
マスラはマシンを噴かせる。
ドゥゥウウウン!ドゥゥウウウン!
とてつもない爆音だ。
今日のために用意した特別なカスタム車である。
つまり宇宙連邦の技術が満載された車である。
「(隣の車も違うようですねぇ)」
マスラはそんな事を思いながら隣の車を見ていた。
隣の車に乗るレース相手の走り屋はマスラの視線に気付き、ニヤリと笑った。
レース相手である隣の男も今日からこの峠で走り屋を始めるそうだ。
それは己の自信から来る笑みであったが、マスラはそんな挑発めいた表情など見てはいなかった。
「レディー、GO!!」
合図がされ、二台の車が思いっきり走り去った。
ブワァアアアアアアアン!!
ドゥヲオオオオオオオン!!
爆音が過ぎ去った瞬間、
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」」」」」
と、歓声…いや奇声が上がった。
異常な熱気。異常な盛り上がり。
だが、ここに居る連中は皆車の事を愛し、車の走りに魅了されている。
「さて…どうなりますかね」
カザトはそう心配そうにルイに語りかけた。
それに対し、
「本日中に犯人を見つけ出す事は難しいかもしれません」
ルイはしばらくの間このレースを続けるであろうという見越しを立てる。
「(いや…そうじゃなくて勝負の行方について聞こうと思っていたんだけどな…。まぁそんなのは杞憂なのかもしれないけど)」
カザトはそう一人で納得した。
この勝負。もはや決まったようなものである。
「(いやぁ~自動運転は楽ですねぇ~♪)」
マスラはハンドルを軽く握ったまま左や右にハンドルを切られるままに腕を動かしていた。
アクセルやブレーキも勿論踏まれていない。
この車は完全にオートで動いているからだ。
併走している車に乗る男は苦しい表情を浮かべている。マスラのマシンに付いていくのが必死なようだ。
「うひひ。では、そろそろ本気を出しましょうか…」
別にマスラが本気を出すわけではない。
宇宙連邦の技術を満載したマシンのAIが本気を出すのである。
「マスラ号。スピードを上げなさい」
ピピッ!
マスラのその一言でマスラのマシンは加速した。
「ちょっと気分を味わってみたい…」
と言ってギアをガチャガチャ弄りハンドルをキュッキュと動かし、アクセルとブレーキを同時に踏んだ。ギアはバックに入っている。
だが、完全自動運転のマスラのマシンはハンドル、ギア、アクセル、ブレーキは飾りであったため何の問題もない。マスラは適当にそれっぽく操作をしただけなのだ。
「んん~♪いいねぇ~」
と、気分を高揚させるマスラ。
更にマスラの奇行は留まる事を知らず、
「うひひひひ!手放し運転!」
※危険運転です。現実世界ではこのような運転は止めてください。
など、無茶苦茶なことをカーブでしていた。
ここからの道はマスラの独壇場だった。
手の空いたマスラは人工衛星を操作し自身のレースの様子を撮影していた。呑気なものである。




