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世界戦史の中で~研究所長の狂人マスラさん!~  作者: ルミネ
第3章 機械の命と風を感じたマスラさん
18/40

第3章1話 事件捜査は他人任せ


 マルカワ研究所。

 所長室。



 この日、マスラは所長室にてとあるDVDを見ていた。


 機関車が楽しく会話してドタバタ劇を繰り広げるシリーズ。

 車達が友情を高め合う映画。

 謎の異星人ロボット生命体が乗り物に変形し、敵の異星人ロボット生命体を倒す映画。

 子供向けだけではなく、大人も楽しめる作品も中には混じっている。

 全てこの国の映像作品ではなく、別の惑星のとある国の作品である。

 その惑星出身の知り合いがマスラへ貸してくれたのだ。


 どれも人気のある作品である。


 だが、マスラはあらかた見終わった後、目を見開きながら、




「なにこの生命体…。気持ち悪い…」




 と、驚愕していた。

 これを貸してくれた知り合いがマスラの発言を聞けば怒っていた事だろう。

 マスラの首が物理的にお別れするかもしれない。


「いかがされましたか?物凄く精神状態が不安定なようですが…」

 と、心配したルイがマスラへ尋ねてきた。


「え?え、えぇ…ちょっと奇妙なモノを見ましてねぇ…これなんですが…」

 そう言ってマスラは各種DVDパッケージを見せる。


「これは…?」


「うん。地球のアニメーションと実写とCGが合わさった映画だけど…」

 と、マスラは応えた。


「なるほど。確か"親衛隊第二部隊"の隊長がお貸ししてくれた作品でしたね」

 どうやらルリは目の前のDVDの出所を知っているようであった。


「うん。退屈になるからなんか面白い生命体の映像作品ないか聞いてみたら、こんなのを貸してくれたんだ」


 と、マスラはショボンとした顔で言った。ちょっと珍しい。

 そもそも退屈というのは少しおかしい。本来ならばマスラは忙しい身である筈だ。

 この暇な時間というのは、殆どの仕事を部下に仕事を押し付けたからできた時間である。


「なにかお気に召さない内容だったので?」

 そんなマスラの怠慢を叱る訳でもないルイがそう聞くと、


「うん…。いや、機械生命体がうんたらかんたらの映画は良かったんだけど、それ以外の作品がちょっと理解できなくてね。なんで生きてるの?なんで目が動いてんの?眼球入ってんの?口とかタイヤとか動いているけどあんたら金属で出来てるんだよね?流体金属なの?何で喋れるの?これはホラー作品だよっ!!」


「落ち着いて下さいマスラ様。そのような歪んだ思考で見ているのでその程度の捻くれた感想しか出てこないんです」


「あれぇ!?ルイちゅぁ~ん?今日はちょっと辛辣じゃないかな!?」

 ルイはどうやら仕事のサボりを咎めない代わりにキツい口調になったようだ。


「そんな事を言って後で怒られるのはマスラ様です。これは幼児たちが楽しく乗り物という概念を理解する映像作品なのです。決してホラー作品ではありません」


「…ん、まぁ確かにあの子はおっかないからなぁ」


 どうやらルイの今回の辛辣さはDVDを貸してくれた人物の恐怖からきているらしい。

 マスラもその人物の怖さを認めているようだ。


「まったくなんであの惑星の連中も親衛隊の隊長連中も皆あんなに恐ろしいんだろうねぇ」

 と、マスラはさめざめとした様子で言った。


「研究意欲が湧きますか?」


「あんな連中の研究をしようとしたら逆にこっちが人体実験されちゃいそうになっちゃったよ!」


「もう既に手を出した後でしたか…」

 ルイはそう言って呆れたようにしていると、





「マースーラーさーん!」





 と、聞きなれた声が聞こえてきた。


「げっ」


 マスラはその声の主を想像しあからさまに嫌そうな顔をして、机の上に広げてあったDVDを自身が出した異空間の中へ仕舞い込む。

 直後、


バタン!


 勢い良く扉を開けたのはやっぱりマミだった。


「おや?今日はどうしたので?」

 マスラは何食わぬ顔をしてマミに話しかけた。先ほどの嫌そうな表情は微塵も無い。


「えっと、マスラさんこんにちは!」

 マミがそう言うと、後から、


「こんにちはマスラさん」

 と、最近雑務係りとして雇ったアルバイトのハヤセ・カザトが顔を出す。

 カザトは学生であるため、学校帰りに行うアルバイトである。


「こんにちはハヤセ君」

 そう普通に挨拶を返すマスラ。


 そしてカザトはそのまま奥の部屋へと行ってしまった。


「さて、それで今日はどうしたんですか?あ、どうぞお座り下さい」

 マスラはそう言ってソファーへ案内する。

 マミは一応取引相手のお偉いさんの娘である。丁寧に対応しなくてはいけない。いくら問題ばかり持ち込むと言っても…。


「実は…」

 マミはそう言葉を途切れさせた後、扉の奥を見た。


「おや?エミリさんではないですか」

 マスラは少々驚く。

 最初からエミリが一緒にいるのは珍しかったからだ。


「こんにちは。マスラ先生」

 エミリはそう言うと部屋に入ってきて挨拶をした。


「どうぞ、エミリさんもおかけ下さい。どうしたんですか?二人仲良く深刻そうな顔をして…」

 エミリはともかくマミの方は普段のはしゃいだ様子ではなく、若干気分が沈んでいるようだった。

 そして、話を切り出したのはエミリの方だった。


「マスラ先生…。実は私のクラスメイトの友人が大怪我をしまして…」


「おやまあ。大丈夫だったんですか?」


「…今も目を覚まさない状態です」


「ありゃりゃ」


「原因はフソウ市とイズモ市の間にある峠を歩いていたところ、車に轢かれてしまった上、暴行を受けたようなんです」


「へ?車に轢かれて、更に暴行を受けた??その子はよっぽど誰かに恨まれていたんですか??」


「違いますよ!そんな訳無いじゃないですか!!ケイコは恨みを買うような子ではありません!!」

 と、マミが必死に否定していた。


「そうなのですか?じゃぁ、なんでそんな恐ろしい事に?」


 マスラのその質問にエミリは再び説明を始める。


「実は…」






 話の内容はこうであった。







 同級生のエミリとマミの『ササノ・ケイコ』は、その日年上の大学生の彼氏と一緒に今は使われていないフソウ市とイズモ市をつなぐ峠までドライブをしていた。


 だが、ケイコはデートではなく別の目的があった。ケイコは大学生の彼氏に別れ告げる予定だったのだ。


 そしてドライブの途中、ケイコは大学生の彼氏に別れを告げた。


 しかしこれに怒った大学生の彼氏はケイコを人気の無い峠に降ろし、一人で帰ってしまったとの事。


 携帯の電波も繋がらない峠にてケイコは一人フソウ市へ徒歩で帰っていった。


 その途中、ケイコは別の何者かの車に轢かれてしまい、更に恐らくそのケイコを轢いた人物が車から降りてきて介抱するわけではなく暴行したと怪我の状態と現場の様子から推測された。

 犯人が暴行した理由は分からない。性的な理由からではないようだ。


 それが起きたのが2日前の夜との事。

 現在もケイコは目を覚ましていない。










「詳しいですね。エミリさん」

 マスラがそう疑問を感じていると、


「私のお父さんがフソウ市の警察署長さんと知り合いだったし、カザト君も…」

 そうマミが説明すると、


「あぁ。そういえば、彼のお父さんはフソウ市警察署の所長さんでしたねぇ」

 と、マスラは思いだし、ポンッとてを叩いた。


 エミリは説明を続け、

「一応ケイコを人気の無い場所へと降ろした大学生の彼氏とやらは警察に事情聴取を受けている途中だけど、問題はケイコを暴行した人物なんです。そいつはまだ捕まっていなくて…」


「まさか私に捕まえて欲しい…と?」


 マスラは真剣な目でエミリを見ながらそう聞いた。


 エミリはコクッと頷く。



 それを見たマスラは溜息を吐き、

「ふぅ~。まったく貴方達は私を何だと思っているんですか?探偵ではないんですよ?」

 と苦笑いをしながら言った。


「それに、その大学生の彼氏とやらがやった犯行ではないんですか?」

 マスラがそう聞くと、


「いえ、それは彼氏の車を調べた結果彼が轢き逃げ暴行犯ではないことは分かったようです」


「ふむ…。では、何故エミリさんはそれほどまでにもそのクラスメートの"仇"をとろうとしているんです?」


「簡単です。あの子…、ケイコは私の特別な友人です」

 エミリはかつて無いほど真剣な目でそう言ってマスラを見ていた。


「(ん?)」

 その発言にマスラは違和感を覚えた。


「そう…ですか。まぁ、私に出来る範囲で調べて見ますが、皆さんはここが軍需品研究所という事はよ~~~~くご存知のことかと思いますので、あまり期待はしないでくださいね?」


「え~」

 マミは不満そうな声を出す。


「そんな目をしても駄目です。今までは場所の特定や目的の人物自らが姿を現したから私だって対応できたんです。距離も遠く、誰が犯人かも分からない状況では私も手が出しようもありません。後、ここは探偵事務所ではないんですよ!!」


「う~…」

 マミはマスラの意見に不満そうにしていた。

 しかし、諦めたのか、


「はぁ~…仕方が無いなぁ~…今回は流石に無理なのかな…。エミリ、帰ろっか?」

 と、マミはエミリを促す。


「私はまだ紅茶を飲み終えてないので、飲み終えた後に帰るわ。マミさんはお先に帰っていただいて結構ですのよ?」

 エミリはルイが出してくれた紅茶をゆっくりと飲んでいる。

 マミは既に飲み終えてしまっており、マミの手前にあるカップは空である。


「…それじゃぁ待ってようかなぁ~」


「言っておきますけど、一緒に帰って私の自宅を突き止めようとしても無駄よ?私、マスラ先生に車で送ってもらうつもりだから」


「えぇぇ~」


「ははっ…」

 マスラはエミリにより平然と足として扱われている事と、マミのストーカー紛いの策略に苦笑いを浮かべる。


「ぐぐぐ…。今度は絶対に突き止めてやる…」

 マミはそう危ない発言をして恨めしそうにエミリを見ながら帰っていった。





「「……」」

 所長室にしばらく沈黙の時間が流れる。



「行ったようですね…」

 マスラは脳内へと通信によって、マミが研究所を出た事を部下から報告を受けた。


「それで…エミリさん。ここに残った理由やマミさんすら巻き込んであの話をした理由。何かあるんですか?」

 マスラはエミリの雰囲気から何かを感じ取り、質問をした。


 エミリはチラチラと落ち着きなく周りを見渡したあとため息を吐いて、


「…ふぅ。完全に私の落ち度でした。あそこまで動揺してマミに悟られてしまうなんて…」

 エミリは自身をそう反省しつつ口を開く。




 そしてとんでもない事実を話し始めた。




「今回の事件の被害者『ササノ・ケイコ』は、私と同じく惑星クラレス出身の者です」


「ほぅ?」

 エミリからその情報を聞いたマスラは眉を上げる。

 話の雰囲気からして"やはりか"とも思っていた。


「本名『ケイ・サーノ』。人種は私と同じで、高校生時代からの友人なんです。勿論この惑星で私が立ち上げた『クラレス会』のメンバーで、明後日マスラ先生が用意してくれた脱出用の"定期便"に乗って脱出する予定でした」

 エミリが話した"定期便"とは、マスラが宇宙連邦軍の作戦本部と掛け合って用意された誘拐されて来た惑星クラレス人の脱出用の宇宙船のことである。

 この度マスラの努力で早期実現でいたのだ。


「なるほどなるほど」

 マスラはうんうん、と頷いている。


「しかし、彼女は…ケイは記憶を失っていた僅かな期間にこの惑星の男の人造人間カンラを……好きになってしまい、事件のあった日別れを告げに向かったようです…」


「それで別れを告げられた彼氏さんは激昂して彼女を山奥の夜道に一人置き去りにした…。はぁ、百年の恋も冷めるような冷酷さですねぇ彼氏さん。最低な男ですねぇ」


「(あんたも大概だけどな)」

 と、そんなことをエミリは心の中で思った。


「おや?なんですその渋い顔は?」

 顔に出ていたのかエミリは渋い顔をしていたようだ。


「いえ、なんでも」

 と、エミリはごまかす。


「おほん、話を続けます。この惑星同士の人間であればこの惑星の…この国の捜査機関が動けばいい。ですが、我々は宇宙連邦人。捜査機関である警察がいない以上…」


「我々"軍"に捜査を依頼する。と言うわけですかぁ?」


「はい。上からも我々の護衛、任されているのでしょう?」


 上層部から調査を命じられているマスラの部隊は誘拐されてきた惑星クラレスの住人達の保護も任務に入っている。

 マスラ達は軍警察ではないが、特殊な任務の性質上、一応潜入している惑星内で起きた事件の捜査をする権限は持っていた。


「ふ~む、確かにそう考えると身元が既に判明している惑星クラレス人の保護ができていなかった時点で我々の責任もありますからねぇ~。分かりました。そのご依頼引き受けましょう」


「えぇ。よろしくお願いしますね」


 こうしてマスラは新たな任務を請け負う事になってしまった。

 内心は面倒に思いつつも、迅速に行動を開始した。


「ルーイ君、ルーイ君。ちょっと調べてもらいたい事があるんだけどね?」


 全て人任せという手段で…。




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