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世界戦史の中で~研究所長の狂人マスラさん!~  作者: ルミネ
第2章 マスラさん、遺伝子を調査する
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第2章4話 囚われのお姫様



 マスラはマミが去った事を確認し、

「はぁ~…。まったくあの子の謎の行動力には困ったものですねぇ…。あの子に万が一の事があったらあの子のお父さんとの取引にも影響がでるかもしれないというのに…」


「では、護衛を派遣いたしますか?」

 と、紅茶のカップを片付けに来たルイがそう提案をした。


「ん?そうですねぇ~…それも視野に入れておいた方が良いかもしれません…」

 マスラはそう言った後、所長の机にある固定電話に手を伸ばしピッポッパと、電話番号を入力していく。


トゥルルルルルルルルル。


「ンッうーうー。あーあー」

 マスラは呼び出し音の間に声帯を変えた。


トゥルルルルルルルルル。


ガチャッ。


「<はい。ナカグラです>」


「あ、エミリ?私ー、マミだよ?」


ガチャッ。


ツーツーツー。


「……」


ピッポッパ。


トゥルルルルルルルルル。


トゥルルルルルルルルル。


ガチャッ。


「<…なに?私、今忙しいんだけど…>」


「うひひひひ。全くマミさんも嫌われたものですねぇ~」

 そう。マスラはマミの声帯模写をしてエミリに電話をかけたのだ。そして現在も続行中だ。


「<!?ちょっと待って、貴方…誰…?いえ、もしかしてマスラ先生??>」


「うひひ、大正解です。宇宙連邦軍宇宙連邦軍第232独立科学技術部隊隊長グラフト・ダ・マスラ准将です」


「<…はぁ…。ちょっと人気が無いところに移動しますのでお待ちを…>」


「はい。お手数をかけてすみませんねぇ~」




 それから少ししてから、


「<どうぞ。なんのご用件でしょうか?>」

 と、エミリから質問があった。


「うひひ。実はですねぇ~」


「<ちょっと待ってください。いつまでその声を続けるおつもりですか?>」

 そう。マスラは今だマミの声帯模写を続行中なのだ。


「おやおや。大切な友人の声真似をされると、さすがの貴方も頭にきてしまいましたか…」


「<ちょっ!ちがっ――>」


「ん"ん"。あーあー、エッヘン!どうでしょう。これで怒りを静めていただけますでしょうか?」

 マスラはようやく声を戻した。


「<クッ…はい。もういいです…それで?>」

 エミリは文句を言う事を諦めた。


「あ~…実はですね?マミさんからの伝言で、昨日マミさんが例の学校に蔓延っていると噂されている薬の売人を突き止めようと調査をしたみたいなんですよね」



「<本当に行ったのね…。あの子ってやっぱり馬鹿なのかしら>」


「かもしれませんが、収穫はありました。マミさんは旧校舎とやらで麻薬を元締めの学生達が別の学生達へ売買する現場を見てしまったようなんです」


「<なんですって!?>」


「まぁまぁ落ち着いて。本題はそこじゃありません。問題なのは、どうやらこの前我々がお仕置きしたイソダという教師が麻薬の売人だったらしく、逮捕されてしまったため新たな売人を探す事になったようなんですよ」


「<そうですか…。でも何でその情報を私に?私はここの警察にはコネはありませんよ?>」


「いえいえ。実はその新しい売人候補が問題なんです」


「<はい…?誰なんです?>」


「おめでとうございま~す。新たな売人候補はナカグラ・エミリさん。貴方に決まりましたぁ!」


「<なんでよ!!!>」

 エミリの怒声が電話越しに響く。


「まぁまぁ、落ち着いてください」


「<落ち着けるわけないでしょ!?何で私!?私の設定ってそんなに不良少女だったの!?>」


「いえいえ、貴方に落ち度があるわけではありませんよ。話を聞くに、友達も居らず、一人寂しくいつも下校し、無口で暗い性格の女性がターゲットだったようです」

 学生達はそこまで言っていない。


「<うっ…>」


「まぁ、貴方が普段どう学校生活を営んでいたかは知りませんが、何も負の要素ばかりが選ばれた対象ではありません。実はそこには『美女』という条件が必須だったようです。良かったですね学生達がいくら年をとっていても美女ならなんでもいいって奴等で」


「<いくら年をとっていてもって何ですか!?私はそんな風に言われる年齢ではないです!ってか、一言一言が余計な事を言う人ですね!この女の敵っ!!>」


「うっひっひ。まぁまぁ、あ、そうだ良い事を教えましょう。彼等は貴方の体を薬漬にして堪能したいようですよ?」


「<それ、ちっとも良い事じゃないですよね!?そういう一言が余計だって言ってんだよ!!>」

 と、怒りのあまり敬語を忘れるエミリ。


「うひひ。いいじゃないですかそれだけ貴方が魅力的って事ですよ。まぁそれはさておき、そんな訳なので貴方を本日からしばらく護衛対象とさせていただきます。護衛をするものはこちらで派遣をします。今から始めようと思いますので、現在エミリさんが居る場所を教えていただけますか?」


「<……>」


「おや?どうしましたか?」

 あまりからかい過ぎたので怒ってしまったのかとマスラは思ったが、


「<出来ればもう少し早くそれを知りたかったし、してもらいたかったです…>」


「へ?」

 突然なんの事かとマスラは思ったが、直ぐにその言葉の意味を理解した。


「<キャー!止めて!何するのっ!?…やめろっつってんだろこのクソガキ共っ!!―――キャッ>」


「エミリさん?エミリさん!」


ガチャッ。


ツーツーツー。


 どうやらエミリは誘拐されてしまったらしい。


「いかがされましたか?」

 ただならぬ様子を察知して、ルイがマスラに尋ねた。


「う~ん、エミリさんはたった今誘拐されてしまったみたいなんです。どうやら本当に彼女は囚われのお姫様属性を持っているらしいですねぇ」

 と、マスラはにこやかに言った。


「言っている場合ではないかと思いますが?」

 ルイはそう不思議そうな顔をして首を傾げながら言った。


「んもう。相変わらず冗談が通じませんね!もう少しユーモアを持ちなさい!それと直ぐに通信記録から逆探してエミリさんの居場所を探して下さい!衛星の使用も許可します」


「ユーモアの件、善処します。それでは直ぐにナカグラ・エミリの捜索を開始します」

 ルイはそう言って所長室を出て行った。




--------------------------------------------------------------




―フソウ市内のとある廃ビル―




「んーんんーー!!」

 エミリは口元をガムテープで塞がれ、喋る事が出来ない状態であった。

 そして体も椅子に縛られて動けない。


 そんなエミリの目の前には、旧校舎で麻薬を販売していたヒョロ男がニヤ付いた表情をしながら座っていた。

 そしてそのヒョロ男が、

「おい、喋れるようにしてやれ」

 と、命令すると、その場に居た二人の男の内一人が乱暴にエミリの口に貼り付いていたガムテープを引き剥がす。


「イタッ…」


 エミリはそう小さく声を出し、ヒョロ男を睨む。

 それを見てヒョロ男は、

「はははっ、これは意外だったな。そういう表情もできるのか…。もう少し大人しい女だと俺は思っていたんだけどなぁ」

 と、笑いながら言った。


「クッ。貴方達ね?旧校舎で麻薬を売っていた学生ってのは」


「ん?」

 エミリの言葉で眉を上げるヒョロ男。


「テメェ、何でそれを?」

 ヒョロ男とは違い、体格の良い男がエミリに近寄り凄みを利かせる。


「待て待て、はぁ…それだと白状しているようなもんだろう…。まぁいいやそれは後から聞こう。その前に質問がある」


「な、なによ!」


「ナカグラ・エミリ。お前、俺の女にならないか?」


「………は?」

 エミリはあまりの展開についていけない。


「俺の女になればお前が普段使っている小遣いの倍、いや三倍以上の金が使い放題だぞ?」

 と、ヒョロ男が提案を持ちかけた。


 ちなみにエミリ…エリーナ・グークスカは惑星クラレスという丸々一つの惑星を一つの市とした市議会議員である。

 更に彼女は惑星クラレス市の市長の娘である。

 更に更に、彼女はこの惑星に永住するつもりは無く、むしろこの惑星の紙幣の価値は将来的に考えて無い物と考えている。

 故に彼女の出す答えは決まっていた。


「お断りするわ」


 まぁ、そもそも好みでもない男。しかも自分より若いとはいえ犯罪者の男になびく筈が無い。


「ふん…そうかよ」

 ヒョロ男はあからさまに機嫌を悪くさせる。


「はぁ…、先生が言っていた通りね。私が『はい』と言わなければ薬を使って言う事を聞かせようとしているんでしょ?」

 エミリがそう言うと、その場に居た男子学生達は驚愕の顔を見せる。


「麻薬の事を知っていたのは、誰かが口を滑らせたのかもしれない…と、思っていたがまさかイソダの他に知っていた教師が居たのか!?」

 と、ヒョロ男が立ち上がってエミリに問いかけた。

 その後ヒョロ男は椅子を蹴り飛ばし、


「クソッ!クソッ!テメェら女って奴はどいつもこいつも教師と関係を持ちやがって…テメェもなんだろ!?誰と付き合ってやがる!」


 ヒョロ男の豹変振りに驚いたエミリであったが、


「何を勘違いしているか知らないけど、あんな奴好きになるわけがないじゃない!それと、学校の教師じゃないわよ!」

 と、エミリも怒る。

 仮にもかつて家庭教師をしてくれた人を『あんな奴』呼ばわりである。

 まぁ、彼の性格を知って一緒に過ごしていればそう言いたくもなるかもしれないが…。


「…何だと?」

 エミリの発言に僅かに冷静さを取り戻すヒョロ男。


「はぁ…間違ってもあんな奴と付き合っているなんて妄想止めてよね。それと…教師と付き合っているって…あなた『ナカガワ・ヒジリ』と何かあったの?」

 エミリは溜息を吐きつつ、ついつい頭に浮かんだ人物の名を口にした。


「ん?ははっ、まじめな感じのナカグラ・エミリさんもあのビッチの事は知っているのか。あはははは」


 と、急に笑い出したヒョロ男。


「あいつの話をしてやろう!あいつはなぁ、実は1年前まで俺の女だったんだ」

 そう急に話を始めたヒョロ男。


「それまでそいつはお前と同じようなもの静かで大人しい性格の女だったよ…だけど、あの数学教師のイソダに出会ってあいつは変わった!急に俺に別れを切り出し、あいつの女になっちまったんだからなぁ!」

 そんなヒジリも結局は教師イソダに見捨てられた。


「あいつ…イソダも俺のことを散々馬鹿にした!ふざけやがって!あいつ、俺の事をなんにも出来ない父親の権力に縋っているだけのお坊ちゃんとか言いやがったんだ!!」

 と、再びヒートアップしていくヒョロ男。


「だから復讐してやったんだ。他人を通じて薬を渡していったら奴も薬中になってな。奴を売人にさせてからは学校に薬をばら撒いている主犯の正体が俺だとばれない様にパソコンから印刷した指示書や覆面被っての取引なんかを続けていたのさ!」

 今度は愉快に話し始めた。

 感情豊かである。


「ここからが面白い話だ。つい最近な?あいつ、ヒジリと結婚するって言い出したんだ」

 ヒョロ男はニヤリといやらしい笑みを浮かべながら言った。


「くははっ俺は声をボイスチェンジャーで変えていたから奴は気付かなかったから深いところまで話を聞けたよ!」

 すごくテンションが高い。


「なんとな?ヒジリの奴、妊娠してたんだよぉ」


「そ、それって貴方にとってそんなに面白いことなの…?」

 思わず聞いてしまった。どう考えてもNTRと呼ばれる分類の出来事である。目の前のヒョロ男が特殊な性癖ではない限り、喜ぶはずが無い。


「くはははは!そう思うよな?普通はそう思うよな?だけど、ヒジリの腹の中に居るガキってのは、俺のガキなんだぜ?」


「え…?」

 エミリは混乱した。

「(目の前のヒョロ男とヒジリが一年前まで付き合っていて…教師イソダとヒジリがその後に付き合って…で、つい最近ヒジリの妊娠がわかって…え?え?どういうこと?こいつ等って妊娠が発覚するまで一年かかるの??)」


「くはははは!いや~、分けわからんって顔しているな?まぁ、種明かしだ。ある時、あいつだけが取引に来た日があったんだ。そんで、あの女に麻薬を嗅がせた。あいつラリって必死に腰振ってたぜ?唯一気に入らなかった点はずっとイソダの名前を呼びながら嬉しそうに腰を動かしていた点だけどな!」


「(はぁ~…)」

 エミリは心の中で溜息を吐いた。


「そんで、ヤッた後、後から来たイソダも同じように薬を嗅がせてヒジリの隣に裸にして放って置いたんだ。そしたらやっぱり覚えてねぇでやんの!影で隠れて見てたら二人して『あ~…薬使いすぎちゃった…』ってさ!馬鹿だろあいつ。自分達が薬使ってラリってヤッたと思ってやんの。くははははっ!」

 エミリは納得したがどの道虫唾が走る答えである。

 どっちにではなく、ヒョロ男、ヒジリ両名にだ。両方屑である。


「それからな?三ヶ月後にイソダの奴、急に金が欲しくなったって言って売る量増やして欲しいって言ってきたんだ。まぁ、需要と供給の率があるからそんなに増やせなかったが、あいつ、結婚資金か生まれてくる子供の為にでも貯めていたのかねぇ?ははははは!俺の子供だって知らずに、子育ての金を貯めてたのか?はははははは!イソダの奴な?『おっかしいな~。避妊してたのにな~』って不思議がってたよ。くはははははは!あったりめぇ~だよ!俺が避妊してなかったんだからさぁ!くはははははははは!!ってか、あいつ金が足りなさ過ぎてコソ泥してたんだぜ?他の女子使ってな!馬鹿だろ?くははははははっ!」


 本来であればドン引きであるが…、いや、エミリはどちらかと言うとドン引きしていたが、既視感を覚えていた。


「(あ、そうか。マスラ先生だこれ。マスラ先生を見てるみたい)」


 失礼である。

 マミがそんな事を思っていると―――。







「困っちゃったなぁ…私のお気に入りの"人"になっちゃったじゃないですかぁ~…。苦しめて始末しようかと思っていたのにぃ…」




 と、声が聞こえた。



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