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魔物は討伐しません、診察します〜転生獣医のもふもふサファリパーク開拓記〜  作者: あおにし
第3部 魔王軍接触

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第71話 また同じ屋根の下で暮らします

いつも応援ありがとうございます!お楽しみください!

サラは、ギルドから戻り母親のメリナと食卓で温かい夕食を食べていた。


「モルガナさんに話して、冒険者を辞めて保護区で働くことにしたよ。モルガナさんも快く送り出してくれて」


「モルガナさんは優しいね。ずっとサラのことをかわいがってきたからね」


「うん。私もモルガナさんと一緒に働きたいと思っていたから、伝えるのは少しつらかったけど。でも、ギルドの登録は残してくれるって言ってくれた」


「そうなのね」


メリナはパンをちぎって口に入れた。


「自分で決めた道を進むといい。……ただ、そうなると、レオンも、お前も、みんな保護区へ行ってしまって、この家も静かになって寂しくなるね」


メリナはふと寂しそうに微笑んだ。


サラはメリナの言葉を聞き、身を乗り出した。


「それならお母さん、お母さんも一緒に保護区で働いたらどう? あそこは今、すごく忙しくて、仕事ならいくらでもあるよ! そうしたらね、みんなで保護区の家族用の住居に住むことができるの。またみんなで一緒に暮らせるよ!」


メリナは目を大きくした。


「家族みんなで、また一緒に……。そうね、それなら私も前向きに考えてみるわ。明日の朝、今働いている仕立て屋の親方に、仕事を辞められるか聞いてくる。そのあと、午後から二人で一緒に、保護区へワタル先生を訪ねてみましょう」


「うん!」


サラは嬉しそうに頷き、スープを一口飲んだ。


***


翌朝、ルシェルドの往診と古傷の治療を無事に終えた俺、リコ、エーリスは、森の除染作業に合流した。


全員が息守りマスクを装着し、トーマの指示でそれぞれの持ち場についている。


俺とマルタとエーリスが草を刈った。リコは刈った草を脇へ寄せながら、浄化排水の樽の残量を確認している。


リュシアは浄化排水の濃さを確認し、ノクシアは瘴気の濃い場所を指し示した。その後をプルツーが進み、黒ずんだ土を少しずつ清浄に変えていく。


オルフェンは周囲の魔物の気配を見ながら、どこまで作業を進めてよいかを判断していた。


保護区からはずいぶん進んできたように思えるが、まだ森の奥の湖までは距離がある。今後も地道に草を刈り、浄化排水を撒く作業を続けなければならない。


退院したばかりのレオンは、周囲の警戒に当たっていた。しかし、先日魔王軍との直接接触があったばかりなのもあり極度に張り詰めた様子で周囲の藪や森の影へ鋭く気を張っていた。


俺はレオンの隣に歩み寄り、優しく声をかけた。


「レオン君。まだ病室を出たばかりの病み上がりなんだから、あまり最初から無理をしないでね。焦らず、自分のペースで少しずつ戻していこう」


レオンはハッとし、少しだけ肩の力を抜いた。


「はい、ありがとうございます……!」


そう言って、また森の周囲に目を凝らした。


***


午前の除染作業が終わり、汗をぬぐいながら職員食堂に向かうと、そこにサラと母親のメリナがいた。


サラが一歩前に出て、「ワタル先生、お話があるんです」と頭を下げた。


二人が緊張しているのを感じ、俺は優しく微笑んだ。


「わかりました。でも、まずは美味しいお昼ご飯を食べてから、ゆっくりお話ししましょう。一緒に食堂へどうぞ」


サラとメリナは俺に続いて職員食堂に入った。


食堂では、ダリオとセリア、ベルナが忙しく立ち働いていた。


開拓作業を終えた職人や職員たちは、同じ大きなテーブルを囲み、湯気の向こうで楽しそうに談笑している。種族も、身分も、ここでは席を分ける理由にはなっていなかった。


「すごい活気……」


メリナが呟いた。サラが笑った。


「そうね。いつも笑い声が聞こえる場所なんだ」


さらに、ダリオが腕を振るった温かい料理を一口食べ、そのあまりの美味しさにメリナは目を丸くして驚いた。


「まあ……なんて温かくて、美味しいお料理なのかしら……」


配膳をしていたセリアが、嬉しそうに胸を張った。


「ふふ、そうでしょう? ここではね、新鮮なマルタさんの野菜と、バロウさんの牧場から届いたばかりの本当に良いお肉を供給してもらっているの。だから、ダリオも心置きなく腕が振るえるのよ」


「ここは、ただ働く場所ではなく、人が心から安らぎ、豊かに暮らす生活の場なんだね」


スープを飲み、メリナが呟いた。そんな母親をサラは優しく見守っていた。


***


昼食後、新棟のダイニングテーブルでサラとメリナの話を聞くことにした。保護区側は俺とリコ、エーリス、ノクシア、オルフェンが座っている。


リコが全員にお茶を配り、落ち着いたところでサラが口を開いた。


「ワタル先生。先日まで保護区で働かせてもらい、ありがとうございました。短い期間でしたが本当に充実していました。お給金までいただいて」


「本当にレオンのことで色々ご迷惑をおかけしているのに、サラにも良くしていただいて、親としても本当に感謝しています」


メリナもそう言って頭を下げた。


「いえいえ。サラさんの働きでずいぶん助けられました。感謝するのはこちらの方です」


俺はサラとメリナに伝えた。サラは俺の瞳をまっすぐに見据えた。


「それで、ワタル先生。私、正式に、この保護区で働きたいんです。警備員ではなく、魔物たちの暮らしを見守る『観察員』として」


その言葉を聞き、ノクシアが目を細めた。


「本当ですか? そうなるのであればこちらも嬉しいです」


続いてサラは、隣に座るメリナを見た。


「それから、母のメリナです。これまで村の仕立て屋で働いていました。体はあまり強くありませんが、縫い物や、布の扱いにはとても慣れています。保護区も今とても忙しいと思います。できれば、母も一緒に保護区で雇ってもらえませんか?」


「村の仕立て屋の親方に話したら、今は仕事に余裕があるからやめても大丈夫だと言ってもらえました。ですから、すぐにでも働くことができます」


メリナがゆっくりと言った。


「本当!? メリナさんが来てくれるなら、ものすごく助かるのだ! 新しい職員や職人さんが増えて、シーツや服の洗濯が山積みになっていて、私一人じゃ本当に手が回っていなかったから」


リコの銀色の耳がぴんと立った。


「ええ。病室の清潔なシーツや、治療に使う包帯、清潔布の管理・洗濯がスムーズになるのは、治癒士としても本当に助かりますわ」


エーリスも優しい笑顔で言った。


俺はサラとメリナを見つめた。二人とも真剣な目をしている。


「サラさん、メリナさん。お二人の力は、今の保護区に最も必要なものです。喜んで、二人を保護区の職員としてお迎えします。これからよろしくお願いしますね」


「ありがとうございます!」


二人の声が揃った。サラとメリナは顔を見合わせ、心からの安堵と喜びの笑みを浮かべた。


「サラさん。また一緒に働けるのは嬉しい。よろしくね」


「はい。ノクシアさん。私ももっとノクシアさんに教えてほしいです」


「では、今度からは一緒に記録をつけましょう。私も、サラさんから教わることがありそうです」


ノクシアは嬉しそうに微笑んだ。


「……それで、さらにお願いがあるのですが……」


サラは気恥ずかしそうに言った。


「なんでしょうか?」


「あの、ワタル先生、リコ。できれば……家族で一緒に暮らせる、家族用の住居に住むことはできますか?」


リコはパタパタと帳簿の宿舎管理ページをめくり、笑顔で答えた。


「ええ、家族用住居、まだ空きがある! ……でも、一緒に暮らすレオンの意見も聞かないと。レオンを呼んでくるのだ」


リコは席を立ち、外で軽作業をしていたレオンを呼びに向かった。


ダイニングに連れてこられたレオンは、そこに母親のメリナと妹のサラが座っているのを見て、目を丸くした。


「えっ、母さん!? サラ!? どうしてここに……」


「二人が正式に保護区で働くことになり、明日から家族用の住居に一緒に引っ越してくることになったよ」


俺はレオンに告げた。レオンは呆然としていた。しかし、状況を理解した瞬間、レオンの顔にゆっくりと喜びが広がり、目元がくしゃりと歪んだ。


「本当ですか……!? 家族みんなで、また一つ屋根の下で生活できるようになるなんて……。俺、本当に嬉しいです。ありがとうございます……!」


「お兄ちゃん、これからは毎日しっかり働いてもらうからね。家の中でも」


「相変わらず、サラは厳しいな」


「厳しいのはサラだけじゃないのだ。今住んでいるレオンの部屋をきれいにして明け渡してね。次に入る人のためにもね」


リコがレオンに言った。


「リコさんはサラよりも厳しいな」


レオンは頭を掻いた。笑い声がダイニングを包んだ。


サラ一家は翌日、保護区の家族用住居へと正式に引っ越してくることが決定した。


***


その日の夜、温かい灯りがともる職員食堂。


仕事を終えた保護区の全スタッフが一堂に会する中、俺は立ち上がった。


「明日から、サラさんとメリナさんが正式に仲間に加わることになりました」


サラとメリナは立ち上がって頭を下げた。レオンはその横で嬉しそうに笑っている。


「サラさんには、これまでと同じくノクシアさんと一緒に働いてもらいます。メリナさんには当面、保護区の洗濯や布の扱いを中心に行ってもらいます」


「これで洗濯も食堂もさらに大助かりね! 大歓迎よ!」


料理の皿を持ったセリアが大きな声で言った。


ダリオが腕を振るったごちそうがテーブルに並び、仲間たちが新しく加わった家族を心から歓迎する。


サラとメリナ、そしてレオンが同じ卓に並んで座る。三人の前に、同じ湯気の立つ皿が置かれていた。


その光景を見て、俺はようやく、この場所が仕事場だけではなく、誰かの家にもなり始めているのだと思った。


歓迎の食卓は、夜が更けるまで賑やかに続いていった。


【施設管理カルテ】

生活・労務管理:サラを魔物観察員見習い、メリナを洗濯・清潔布管理担当として正式雇用する。メリナは体調に配慮し、病室シーツ、包帯、清潔布、作業着等の洗濯・補修管理を中心業務とする。

住居管理:雇用に伴い、従業員寮の世帯用住居へレオン一家の入居を決定。翌日より引越しおよび常駐を開始予定。

生態管理補助:サラはオルフェンおよびノクシアのもとで、魔物の行動観察と記録補助を担当する。

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