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002 こりゃまるで乗っ取りって話だぜ


(・・・こっちよ!)

事務所のドアの前からエレナの声が聞こえる。


ガタガタ、ガチャン。


建付けの悪い事務所のドアが開きエレナが入ってくる。

「気を付けてね!」


体格のいい男が、背中からゆっくりと事務所に入ってくる。


「何やってんだ、お前」

俺がゴミ屋敷と化した事務所のゴミを片付けながらエレナに聞く。


「ソファーよ」


「は?」


「いいから・・あ!コッチ!こっちよ!ココに置いて!」

体格のいい2人の男が、真新しいソファーを事務所に運び込む。


ソファー・・・?

何だ?どういう事だ?


「このボロボロのソファーはいらないわ!持って帰って処分してくれる?」

エレナが体格のいい男たちに指示を出す。

2人の男が、俺のお気に入りのソファーを事務所から運び出す。


は?運び出す?

「おい、それ、俺の、ソファ、」


「ゴミよ」


「は?」


エレナは俺の言葉を食い気味にかき消し、腕組みをする。


「アレはゴミよ。なんか文句ある?」


「・・・・・」


「文句あんの?」


「・・・ない」


「よろしい」


「ヘイ、ミス!それじゃ、オレたちはこれで!また何かあったらすぐ連絡を!まいど!!」

体格のいい男たちが、俺のお気に入りのソファーを持って事務所から出て行く。


「うん!ありがとう!!また!

 ・・・て、アンタ!全然片付いてないじゃない!」

エレナの眉間にシワが寄る。


「何言ってんだエレナ。見違えるようにキレイになってるだろ?」

俺がゴミだらけの部屋で右手を広げる。


「はぁ!?綺麗なのは私が持って来たソファーだけじゃない!

 てか何で掃除してるのに窓開けないのよ!」

エレナが勢いよく窓を開ける。


「ぁ待てッ!!」

俺が叫ぶ。


ガタンッ!!!

窓が外れて落下する。


・・・・・・・・・ガッッシャーーーン!!!!!


窓が粉々に砕け散る音がする。


「・・・何よ、コレ・・?」

エレナが落下した窓を覗く。


「壊れてるんだ、その窓・・」


「コラーーッ!ボビー!!何やってんだ!危ねぇーだろッ!!」

下からバーのオヤジが叫ぶ。


「何よあのオッサン。うるさいわね」


「下のバーのオヤジだ」


「何でバーが昼間っから開いてんのよ?」


「この地域を見りゃわかるだろ?

 それにあのオヤジはここの大家だ。

 そもそも悪いのはお前だろ?」


「ふんッ!」

エレナが鼻であしらう。


この女、本当に元警官なのか?

口と態度、悪すぎだろ・・・


「何やってんのよアンタ」


「は?何が?」

突っ立ってる俺に、怒りの矛先が向く。


「早く下行って窓、片付けて来なさいよ」


「はぁ?あれは、おまえが、」


「なんか文句ある?」


「・・・・・」


「なんか文句があるか聞いてんのよ!?あんの?」


「いや・・・ない」


「よろしい。行け」


「チッ!」俺はお前の犬じゃねぇ!

俺は舌打ちをして事務所から出る。


何なんだコレは・・・

というか、あの女・・・目的は何だ?

俺を殺す気ならとっくにやっているはず・・・

だいたいあのソファーは何だ?

まさか、このまま事務所に居座る気じゃないだろうな?

わからん・・・

目的がわからん・・・


俺は落下した窓を片付ける為、階段を降りる。


「おい、ボビー」

階段を降りた所で、バーのオヤジが俺を迎え撃つ。

相変わらずの巨漢だ。


「何だ?」

俺はバーのオヤジを見上げる。


「お前、女連れ込んで何やってる?」


「は?」


「さっきソファーを入れ替えてただろ?」


「ぁ・・ああ」


「ボビー、まぁ、お前が上で何やろうが知ったこっちゃねぇ。

 だがよ、新品のソファーに買い替える金があるなら家賃を払え。

 もう3か月分も溜まってるんだぜ?」


「分かってるよ、もうちょっと待ってくれ」


「いや、もう待てねぇ・・・窓までぶっ壊されちゃ、もう我慢の限界だ、いいかげん、」


「いくらなの?」

俺の後ろからエレナの声がする。


「んあ!?」

言葉を遮られたバーのオヤジがエレナに聞き返す。


「だから、いくらなのよ?滞納してる家賃」


「・・・3か月分・・だから・・・」

バーのオヤジが暗算を始める。


「これで足りる?」

エレナが札束をオヤジに渡す。


「え!?」

オヤジが驚く。


「足りるの?」


「あぁ・・・か、かなり、多い、」


「取っといて。窓の代金も入ってるわ」


「サ!サンキュー、お嬢ちゃん!

 おいボビー、窓!片付けとけよ!

 あと、あんまり騒ぎを起こすんじゃねぇぞ!」

オヤジが上機嫌でバーに戻って行く。


「さっ、これで私もれっきとした共同経営者よ。

 ほら!さっさと窓、片付けて上がって来て。やる事たくさんあるんだから」


「・・・・・」

どういう事だ?

この女、あっさりと家賃を払いやがった・・・

いったい何のために・・?

まさか本気で共同経営するつもり、なのか・・?


「何、突っ立ってんのよ?動けッ!」

階段の上からエレナが叫ぶ。


「はい!・・・」

反射的に返事をする。

俺は確実にしつけられているのを感じる・・・


俺は階段の下から、建付けの悪いドアの看板を見る。

(エスコット探偵事務所)

もしかして、本当に事務所を・・・


これじゃ、共同経営どころか乗っ取りだぜ。

そんな事を思いながら俺は、砕け散った窓を片付ける・・・


さて、俺は一体どうなるのだろうか・・・




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