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異世界転生してやっぱ中世ヨーロッパっぽいなって思ってたら近世ヨーロッパに転生してました…  作者: あああ


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第98話 新旧

 荒れ狂うドーバー海峡の海上で、雷鳴をも打ち消す重砲の轟音が響き渡り、空が不気味な赤紫色に染まった。


 イギリス海軍の英雄、ネルソン提督率いる八十隻を超える艦隊。


 対するは、ラトゥーシュ=トレヴィル提督が率いる、アランソンの最新技術を結集したフランス海軍の装甲蒸気艦隊。


 歴史上類を見ない、新旧の覇者が激突する極限の大海戦の火蓋が完全に切って落とされた。


「ひいぁぁぁッ!? 側胴をやられた! 浸水が止まらん!」


「火を消せ! 弾薬庫に引火するぞーッ!」


 フランス艦隊が放つ重砲は、イギリスの伝統ある木造戦列艦を次々と炸裂させていった。巨木のマストがへし折れ、木屑と火柱が空高く舞い上がる。


 旗艦『ヴィクトリー号』の甲板で、ネルソン提督は降り注ぐ黒煙と火の粉を浴びながら、鋭い眼差しで戦況を見つめていた。


風に逆らって自在に急旋回し、我が軍の砲撃を分厚い鉄の装甲で跳ね返す……。これほどの怪物と真っ向から砲撃戦を演じるなど、正気の沙汰ではない!


 だが、ネルソンはただやられる男ではなかった。


彼は片目を細め、風向きとフランス艦隊の過酷な機動力の「僅かな隙」を見破った。


「全艦に伝達! 距離を詰めよ! 単縦陣での砲撃戦は捨て、敵艦の隙間に突入して『白兵戦』を仕掛けるのだ!」


「「「なっ……白兵戦ですか!?」」」


 副官たちが息をのんだ。


「そうだ! 奴らの船体がどれほど硬かろうと、大砲の威力が凄まじかろうと、操舵を行っているのは人間だ! 乗り込んで乗組員を斬り伏せ、機関室を内部から奪取する! それ以外にこの状況を打ち破る術はないッ!」


 ネルソンの激しい叱咤を受け、イギリス艦隊の陣形が変貌した。


死を覚悟した数十隻の木造戦列艦が、自船が火達磨になるのも構わず、凄まじい執念でフランス装甲艦隊の隙間目掛けて突進を開始したのだ!


 一方、フランス旗艦『マサト号』。


「……ほう。装甲と火力の差を悟り、捨て身の肉弾突撃に切り替えてきたか」


 ラトゥーシュ=トレヴィル提督は、望遠鏡に映るネルソンの見事な即応力に感嘆の吐息を漏らした。

だが、その表情に一切の動揺はない。自らの背後には、パリで静かにフランスを統率するマサト総裁の周到な戦略が存在するからだ。


「マサト総裁はすでに仰っていた。『追い詰められたネズミは牙を剥く。だが、その牙すらも計算に入れて叩き潰せ』とな」


 提督は右手を高く掲げ、冷徹に命じた。


「全艦、外輪のボイラー圧力を全開へ! 敵の突進をかわしつつ、近接に備え銃を手に取れ!寄ってくる小舟と甲板を薙ぎ払え! 一隻たりとも接舷させるな!」


 ゴオオオオオオッ……!!


フランス艦の煙突から真っ赤な火の粉が噴き出し、巨体からは想像もつかない速さで荒波を切り裂いて旋回を始めた。


肉弾戦を挑もうと接舷を試みたイギリスの戦列艦に対し、フランス艦の甲板には小銃の一斉射撃が火を噴く。突撃しようとしたイギリス兵たちは吹き飛ばされ、海へ叩き落とされた。


「くっ……! 寄せることすら叶わんというのか……!」


ネルソンは歯を喰いしばり、白煙に包まれる海を見つめた。

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