↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生してやっぱ中世ヨーロッパっぽいなって思ってたら近世ヨーロッパに転生してました…  作者: あああ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/121

第78話 反転

東部国境、ライン川沿いの平原は、二日目に突入しても激しい砲声と硝煙に包まれていた。


「前進! 前進せよ! フランス軍の中央は確実に疲弊しているぞ!」


 プロイセン・オーストリア連合軍の総司令官は、高台から眼下の戦況を見下ろし、確信に満ちた声を張り上げた。


 正面での激しい削り合いにより、両軍ともに凄まじい損害を出している。だが、連合軍の陣形は依然として分厚く、数において圧倒しているという自負があった。フランス軍は火力の高さで耐えているに過ぎず、このまま押し込めば必ず崩壊すると踏んでいたのだ。


 しかし、彼らは知らなかった。

 ナポレオン・ボナパルトという男が、戦術の天才であると同時に、マサトの持ち込んだ技術を誰よりも完璧に使いこなしていたことを。


「全工兵隊、作業完了! 湿地帯への仮設レール

の敷設、終わりました!」


 激戦の裏側、敵が「底なしの泥沼で進軍不可能」と断定していた右翼の湿地帯。


 アランソンから運ばれてきた膨大な鉄板と簡易レールを敷き詰め、フランス軍の機動砲兵隊と新式ライフル部隊が、音もなく夜陰に乗じて迂回を終えていた。


「……愚か者どもめ。戦争の常識に縛られたまま死ぬがいい」


 本陣の丘の上で、ナポレオンが冷徹に軍刀を抜き放つ。


「合図の信号弾を上げろ! 全軍、反撃開始!」


 ヒュゥゥゥゥ……ドォン!


 暗転する空に、鮮烈な赤い光が弾けた。


 次の瞬間、連合軍の無防備な右側面、完全に手薄となっていた横腹から、けたたましい咆哮が響き渡った。


「な、なんだ!? 右翼から攻撃!? 湿地帯から大砲だと!?」


 突如として真横から叩き込まれた、最新鋭砲兵隊の極大火力。


 さらに、アランソンの鉄板によって足場を確保した新式ライフル部隊が一斉にミニエー弾の集中砲火を浴びせる。


 正面の削り合いに全神経を注いでいた連合軍の右翼は、反撃の機会すら与えられず、わずか数分で完全に粉砕された。


「ひ、悲鳴を上げろ! 側面が突破されたぞ!」


「横からフランス軍の大軍が雪崩れ込んできた!!」


「正面部隊、押し返せ! 挟み撃ちだ!」


 ナポレオンの疾風のような采配により、正面で耐えていたフランス軍主力も一斉に突撃を開始する。


 正面からの火力と、横腹からの電撃的な挟撃。完璧な「包囲陣」の中に閉じ込められた十万の連合軍は、パニックを起こしてドミノ倒しのように瓦解し始めた。


「バカな……! 湿地帯を大砲が通れるはずがない! やつらはどんな魔法を使ったのだ!?」


 崩れ去る自軍を前に、連合軍の総司令官は絶望の叫びを上げた。

だが、彼らが見たのは魔法などではない。マサトが創り出した「鉄道インフラ」と、ナポレオンの「天才的機動力」が融合した、近代戦術の必然だった。


 勝負は決した。

ヨーロッパ最強を誇ったプロイセン・オーストリア連合軍十万は、数万の捕虜と無数の物資を残し、潰走していったのだった。


 凄惨な戦場の中心で、ナポレオンは血煙を吐く軍刀を鞘に収めた。

勝利の歓声が上がる中、彼は一切の無駄を省くように時計を取り出す。


「勝利を祝うのは後だ! すぐに負傷者を収容し、全軍、仮設駅へ移動せよ!」


「将軍! まだ敵の残党が――」


「残党など放っておけ! 我々の真の勝利条件は、このオーストリア・プロイセンを倒すことではない!」


 ナポレオンは南の空を睨みつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。