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異世界転生してやっぱ中世ヨーロッパっぽいなって思ってたら近世ヨーロッパに転生してました…  作者: あああ


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第75話 東部戦線

東部国境、そして南部ピレネー山脈。フランスの運命を分ける二つの戦線が、同時に動き出そうとしていた。


「集められる主力をすべて引き連れていけ。その数、およそ十五万だ」


 パリの軍本部で、俺はナポレオンにオーストリア・プロイセン連合軍と相対する、東部戦線の指揮権を託した。


「十五万……! これほどの兵力を一気に運用できるとは」


 ナポレオンが不敵な笑みを浮かべ、地図上の東部国境を力強く指差す。そこには侵攻を開始したオーストリア・プロイセン連合軍十万が陣を構えている。


「総裁の言う通り数で勝っているからと、だらだら戦うつもりはありません。マサト総裁が準備してくれたライフルと弾薬、そして鉄道網での補給があれば……一戦で奴らの息の根を止めて見せましょう」


「ああ、頼んだぞ。だが、勝つだけじゃダメだ。『一瞬で粉砕する』ことこそが、この作戦の絶対条件だ」


「分かっています。長引けば、それだけ他の戦線の崩壊する確率が上がりますからな」


 ナポレオンは鋭い眼光で頷くと、十五万の大軍を率いて東部前線へと疾風の如く出撃していった。


 そして、残された問題。


「マサト……本当に大丈夫なのか?」


 ナポレオン率いる軍を見送った直後、ジャンが血相を変えて俺の元へ駆け込んできた。


「東部に十五万の主力を全投入したせいで、南部のスペイン国境は完全に空っぽだぞ?敵はピレネーを越えて怒涛の勢いで北上してきているのに、あそこに残っているのは、各地の治安維持に当たっていた数千の現地部隊だけだ」


「分かっている」


 俺は冷静に自警団の軍服に腕を通し、革の手袋を嵌めた。


「だから、南は俺が行く」


「!? やはり直接行くのか」


「ナポレオンが東部で敵を叩き潰し、鉄道で折り返して救援に来るまでの『時間稼ぎ』だ。他の誰に任せるより、俺とアラマサ自警団で防衛線を構築するのが一番手堅い」


「だが、相手は数万のスペイン正規軍だぞ?現地部隊とアラマサ自警団を率いても敵の半分も兵力はいないぞ?」


「正面からぶつかり合う必要はないさ」


 俺は口元を歪め、アランソンから南部へ向けて急ピッチで敷設された路線図を叩いた。


「敵は『フランス軍の主力が東部に集中している』と知って油断している。なら、俺にやれる事は色々ある。ジャンついて来てくれるな?」


「……当たり前だ。マサト、お前の背中は俺が守ってやるさ」


 力強く頷くジャンの言葉を背に、俺は南部戦線へと向かう列車に飛び乗った。

 

そして、東部戦線。


 地鳴りのような怒号と、黒煙が天を覆う惨烈な戦場。

 オーストリア・プロイセン連合軍十万は、圧倒的な威容を誇りながら重厚な陣を敷いていた。


「……ハッ、フランス軍め。慌てて全軍を東部に集結させたか」


 連合軍の総司令官は、本陣の高台から望遠鏡を覗き込み、蔑むように鼻を鳴らした。


「数だけは揃えたようだが、急造の兵など恐るるに足らん! 膨大な兵力と物資を急ごしらえで運んできたのだ、どうせ前線は混乱し、疲弊しきっているはず。全軍前進! 数の圧力で押し潰せ!」


 重厚な軍服を着た連合軍の大軍勢が、地響きを立ててフランス陣地へ向かって進軍を開始する。


 だが、その高台を見下ろす丘の上で、ナポレオン・ボナパルト将軍は冷徹な眼差しで敵の動向を見つめていた。


「見事に誘い出されたな。……愚か者め」


 ナポレオンが軍刀の柄に手をかける。

 連合軍の予想は、最初から完全に外れていた。


 鉄道で最前線へ送り込まれた十五万のフランス軍は、行軍の疲労など一切なく、温かい食事と万全の休息を取った「完璧な状態」だったのだ。しかも彼らが手にするのは、アランソンのライフルと弾薬。


「全砲門、開火! 敵の出鼻を挫け!」


 ナポレオンの一声とともに、陣地に並べられた最新鋭の大砲が一斉に火を噴いた。


 地動説を疑うほどの炸裂音が戦場を揺らし、精密に計算された砲弾が連合軍の密集陣形を正確に穿つ。


「な、なんだこの射程と正確さは!? 大砲の位置が遠すぎるぞ!」


「怯むな! 陣形を乱すな! 前進せよ!」


 混乱する敵をあざ笑うかのように、最前線のフランス兵が一斉に銃を構えた。


「撃て!」


 ――ドドドドドォン!!


 従来の下限射程をはるかに超える遠距離から、弾丸の猛風が吹き荒れた。


 弾丸は敵の兵や盾を軽々と撃ち抜き、第一陣のオーストリア・プロイセン兵は、何が起きたかも理解できぬまま粘土細工のように崩れ落ちていく。


 一瞬で瓦解するかに見えた敵陣。だが、相手はヨーロッパに名を馳せる大国であるプロイセンとオーストリアの精鋭だ。


「下がれ! 騎兵隊、迂回して敵の砲兵陣地を突け! 歩兵は重装方陣(ファランクス)を組んで耐えろ!」


 敵の将校たちが血煙の中で怒号を上げ、すぐさま陣形を再構築する。


 凄まじい被害を受けながらも、敵は百戦錬磨の粘り強さでじりじりと前進を再開し、分厚い肉の壁となってフランス軍の進撃を食い止め始めたのだ。


「チッ……流石に一筋縄ではいかんか」


 ナポレオンは鋭い眼光で戦況を睨みつけた。

 こちらの火力と機動力は圧倒的だが、敵も十万の大軍。徹底的な防衛陣形に固まられると、削り切るには相応の時間がかかる。


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