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異世界転生してやっぱ中世ヨーロッパっぽいなって思ってたら近世ヨーロッパに転生してました…  作者: あああ


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第66話 エジプト遠征

荒れ狂う波が甲板を叩く地中海沖。

 イギリス地中海艦隊の旗艦『ヴァンガード』の船橋で、名将ネルソン提督は手に持った望遠鏡を固く握りしめていた。


「なに……? フランスのマサト総裁自らが率いる主力艦隊が、ジブラルタル方面へ向けて西進しているだと?」


「はい、提督! 諜報部からの緊急の連絡です! 漆黒の船体にフランス総裁政府の旗が翻る大型旗艦を中心に、厳重な警護を固めた船団が西へと舵を取ったとのこと!」


「……総裁自らが、だと?」


 ネルソンは独り言のように呟き、片目で海原を睨みつけた。

その鋭い戦感が、脳裏で警鐘を鳴らしていた。

あの男は狡猾だと聞いている。そんな男が、わざわざ自分の身を危険に晒してまで目立つように西へ向かうだと……? 妙だ。私を誘い出すための『囮』ではないのか……?


 ネルソンの眉間に深い皺が刻まれる。だが、仮に囮だとしても、相手はフランス最高の権力者にして改革の核心人物。もし本物であれば、この手で討ち取るか捕獲することで、フランス政府に壊滅的な打撃を与えられるのだ。


「……提督、いかがいたしますか!?」


「……クソッ、乗るしかないか! 仮に囮だとしても、奴の本陣を叩ける好機に変わりはない!」


 ネルソンは惑いを断ち切るように片腕を振り上げた。


「全艦、マサト総裁を追撃せよッ! 逃がすな、一隻残らず追い詰めるのだ!」


 名将ネルソンのあまりに鋭い洞察力と「絶対に敵のトップを逃さない」という執念ゆえに、マサトという巨大すぎる罠に見事にはまり込み、イギリス艦隊は西の海原へと引き寄せられていったのだった。


 その裏で、パリのラ=ファイエットによる裏交渉は見事に結実していた。

イスタンブールとの秘密裏の打ち合わせにより、オスマン帝国から「反逆者マムルーク討伐の認可」と「現地での優先的な食料・水の供給協力」を取り付けることに成功。

ネルソン艦隊の脅威が西へ去った地中海を、ナポレオン率いる本隊は悠々と東進。誰にも邪魔されることなく、アレクサンドリアの港へと無傷で上陸を果たした。


 そして、ギザの荒野。


照りつける灼熱の太陽の下、遥か彼方には太古の建造物、巨大なピラミッドが静かに佇んでいた。


「ハハハ! 青ひょうたんのフランス兵どもめ! オスマンの威を借る狐が、我らマムルークに勝てると思うか!」


 先頭に立つのは、現地の軍閥「マムルーク」の騎兵隊だ。

絢爛豪華な甲冑に身を包み、鋭利な三日月刀を掲げた数千の馬群が、地照りつく砂塵を巻き上げながら地響きとともに怒涛の勢いで襲いかかってくる。

その姿は、まさに中世から続く「世界最強の突撃騎兵」そのものだった。


だが、前線で馬上に立つナポレオンの表情には、焦りどころか冷徹な笑みすら浮かんでいた。


「ラ=ファイエット総裁が勝ち取ってくださった水と食料、そしてマサト総裁が自らの命を賭して作ってくれたこの千載一遇の勝機……無駄にはせん!」


 ナポレオンは腰の軍刀を鋭く抜くと、天高く掲げた。

「全師団、『師団方陣』を組めッ!!」


 号令一発、訓練し抜かれたフランス兵たちが流れるような手際で陣形を展開する。

歩兵たちは四方を向いた整然とした「箱」の形を作り上げ、三列に重なる重厚な防壁を構築した。


角には大砲が配置され、中央の空洞には弾薬と指揮官が守られる。背後も死角も存在しない、完璧な防御陣形だ。


「一番列、構え……放てッ!」


『バババババンッ!!』


 荒野に一斉射撃の轟音が響き渡り、白煙が巻き上がる。

猛スピードで突撃してきたマムルークの先頭集団が、銃弾の雨を浴びて次々と落馬していった。


「怯むな! 横に回り込め! 奴らの背後を突け!」


 叫びながら旋回する騎兵隊。しかし、彼らがどこへ回り込もうと、方陣(箱)に「背後」など存在しない。常に正面から銃口が向けられているのだ。


「二番列、放てッ!」


『バババババンッ!!』


 交互に繰り出される切れ目のない連続斉射。

命からがら肉薄した騎兵も、箱の表面から隙間なく突き出された長大な「銃剣の壁」に馬が怯え、陣形内部へ一歩も侵入することができない。


「な、なんだこの箱型の陣は!? どこから攻めても隙がないぞ!?」


「馬が近づけん! 銃剣に阻まれるッ!」


 パニックに陥るマムルーク騎兵隊。その密に固まった敵集団に向け、ナポレオンが冷静に方陣の角を指差した。


「大砲、射撃開始。敵の集団を粉砕せよ」


『ドドズドォォォンッ!!』


 角から放たれた散弾が、密集する敵を一瞬でなぎ倒していく。

オスマン帝国から正式に供給された潤沢な水と食料で士気最高のフランス軍と、ナポレオンの神がかった方陣戦術の前に、最強を誇ったマムルーク騎兵隊は手も足も出ずに崩壊していった。


「勝利だ! エジプトは我らの手にあり!」


 ピラミッドの足元で、フランス兵たちの割れんばかりの歓声が響き渡った。

マサトの「囮」、ラ=ファイエットの「外交」、そしてナポレオンの「戦術」。

三人の知略が見事に噛み合い、フランスは歴史的な圧勝でエジプトを手中に収めたのだった。

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