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73 闇の祝福

 闇の精霊王から祝福を受けたものの、どうやって使えばいいのだろう。

 精霊王は闇と影が味方になる、と言っていた。上手く使いなさい、とも。

 祝は光、土、水、風の祝福がある。光の祝福の使い方は父から、風と土は有馬と風斗、水は水の精霊王が自ら教えてくれている。

 祝福というものは指導する人があってこそ、最大限に活かせるのだけれど、さて、この闇の祝福の使い方は誰に聞けばいいのだろうか。


 相変わらず頬杖をついて玉座に座っている闇の精霊王は、面白そうに楪と祝を見ていた。

 水の館や土の館、風の館も精霊王がいる館には、それぞれの属性を持った精霊たちが多く暮らしている。けれど、(ムラタマが言う所の)闇の宮殿にいる精霊は祝たちを連れてきたムラタマだけだった。


「人間に祝福を与えたのは数百年ぶりだ。どうだ、使えそうか?」

「身体に祝福が巡ったのは良く分かったのですが、使い方がイマイチ分からなくて。闇の祝福ってどんなことが出来るんでしょうか?」


 祝がそう尋ねると、精霊王は整った顔に呆れた表情を浮かべている。


「祝福というのはそれぞれの属性を味方につけることで、使い方はそれぞれの想像力によるのだ。例えば、お前は風の祝福を持っているだろう? 風の使い方は想像できるのではないか?」

「それは、想像できればその通りになるということですか?」


 精霊王は、何をいまさら、という顔をしている。

 祝は風を使うときのことを思い出していた。

 確かに、小さな竜巻を思い浮かべると風が集まりだすし、身体を覆う鎧を作るときも風を身体の周りに循環させているようにイメージする。

 空気砲は風の塊が飛び出すイメージだ。

 なるほど、祝福というのはイメージを具現化するものだったのか。


 四つも祝福を持っている割に、そんな基本的なことが理解できていなかった自分が恨めしい。

 誰かに教えることがあったら、きちんとそれを伝えよう。


「闇と影だから姿を隠したりできるのかな?」

「影が使えるならそれを誰かに貼り付けることも出来るかも」

「闇を使って相手の視界を奪うこともできますね」


 祝と楪は闇の祝福の使い方について知恵を出し合った。

 物騒な使い方しか思い浮かばないのは環境のせいだと思いたい。


「闇を霧のように広げたら姿が隠せるのではないか?」


 楪はそれを想像したのだと思う。

 彼の身体から黒い霧のようなものが湧きだし、楪の身体を隠してしまった。


「兄さま、すごいですよ。ちゃんと隠れています」


 黒い霧だということで、瘴気に近い物かと思っていたけれど、実際、まったくの別物だった。

 闇の祝福を使って出した霧は軽く美しい。

 瘴気のように重くねっとりと絡みつくような感じはなかった。


 楪と同じように想像して、祝もやってみようとしたけれど、どうしても楪よりしょぼいものしか作れない。

 やはりこれは相性があるのだろう。

 闇の祝福は祝より楪の方が適性があるようだった。


「闇と悪しきものはまったく違う。人間はいつのまにか我らが同じであると思うておるがな。闇はあくまでも聖なるものだ。そこに悪意はない」


 闇の精霊王は祝福を使っている祝たちにそう言った。

 その言葉は正しい。

 そして、隣りに立っている楪を見上げると、彼は目を見開いていた。

 その目はうっすら潤んでいるようにも見える。

 

 そっか。楪兄さまはずっと闇が多いことを悩んでたもんね。


 自分の中にある闇が聖なるものであり、光と同等の存在であると肯定されたことが嬉しいのだ。

 祝は楪の顔を見てにっこり笑った。


「闇の仙境である魔境に入るためには入り口を探さなくてはならない。お前たちには祝福を与えたから入り口さえ見つければ入ることができるであろう」


 仙境に繋がる淡いの森のような場所があるということだろうか。

 それを精霊王に聞くと、そうだ、と答えた。


「魔境に穴を開けている人はその入り口を見つけているわけですよね。だけど、その人は祝福を受けていないのに魔境に入れるんですか?」


 淡いの森に入るためには『鍵』であるかどうか、それに仙境の精霊王から祝福を得ているかどうかで判断される。

 同じことなら、入ってくる人は――。


「もしかしたら、魔境の『鍵』の番人の血を引いているのですか?」


 何百年も前に途絶えてしまった魔境の『鍵』の一族。

 だけど、もし、血脈として残っていてその血に反応して入ることができたなら。


「であろうな。それに魔境の『鍵』の一族に伝わる呪文があるのだ。それを使えるのは『鍵』の血筋だけだから『鍵』と認定されていなくても入れたのだろうよ」


 やはり、闇の精霊王が『鍵』だと認定している人間は存在しない。だけど、その血と呪文を引き継いだ子孫がいるのだ。


「楪、祝、そなたたちはこの魔境に害をなす狼藉者を見つけよ」


 闇の精霊王ははっきりとした口調で命令を下した。


 祝が、「それはちょっと……」と言おうとしたら、隣りで楪が片膝を着き、「必ず」と勝手に約束をしていた。


 ――向こうに戻ったら、絶対に、一回しばく。



読んでくださってありがとうございます!


楪、初祝福です。


今日も暑い一日でしたね。

どうぞ熱中症にお気を付けくださいませ。


少しでも楽しんで頂けると幸せです!

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