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61 パジャマパーティー

 楪の人質生活二日目の夜、離れにもずいぶん慣れた彼から提案されたのは『パジャマパーティー』というものだった。

 楪の見識が正しければそのパジャマパーティーなるものは、仲の良い者同士がパジャマでどちらかの部屋で語り合う、というものらしい。


「それってパジャマでしないといけない理由はなんですか?」

「さあ、リラックスできるとかそういう理由ではないか?」

「パーティーのタイトルになっているぐらいですからパジャマに何かしら凝らないといけないとかマナーがあるのでしょうか?」

「ああ、パジャマの自慢大会か」

「それなら自慢できるようなパジャマなど持っていませんよ」


 うーん、と二人で唸っていると、風斗が「千尋さんならそういうのに詳しいのではないでしょうか?」と、アドバイスをくれたので聞いてみることにした。


「パジャマパーティーですか?」

「ああ。親睦を深める為に本家の使用人同士でもやっていると聞いたことがあるんだ」


 楪が自分が知っているパジャマパーティーというものを説明していると、千尋は納得したように頷いた。


「ええ、それでしたら友人同士でするお泊りのときのちょっとしたイベントです」

「じゃあ、わたしと兄さまは友人同士ではありませんから最初から定義が間違っているということですね」



 パジャマパーティーの参加資格がないことが分かったので、この話は終わりとばかりに千尋の前を去ろうとした。


「お待ちくださいませ祝さま。べつに友人同士ではなく『仲の良い従兄妹同士』でも構わないのですよ。パジャマパーティーはその辺りの間口が広いのですから」


 それを聞いて楪の顔がパアッと明るくなった。


「こう言っては何ですけれど、楪様は初めてのお泊り。祝さまにとっては初めてのお泊り相手。パジャマパーティーをするにふさわしいではありませんか!」

「……それでそのパーティは何をしたらいいのでしょうか?」


 唯一、パジャマパーティ―の流儀を知っている千尋がその夜、部屋で監督をしてくれることになった。

 千尋のことを信じていないわけではないけれど、本家からの楪と千尋に対して祝が一人というわけにはいかず、風斗が同席することになった。

 祝も楪も就寝の準備を終え、客間である楪の部屋に集まった。

 なぜ祝の部屋ではないかというと、本来であれば泊っている家人の部屋が相応しいとのことだったのだけれど、パーティーを呼びかけたのは楪で彼はホスト役をやると言って譲らなかった。


「では只今より第一回パジャマパーティーを開催したいと思います」


 楪の開会宣言に、祝と千尋がパチパチと拍手をする。

 

 ……本当にこれが正しいのだろうか。


「それでどんな会話を楽しんだら良いのだろうか?」


 千尋の采配により床にラグが敷かれ、その上のクッションに楪は座っている。


「パジャマパーティーの醍醐味は普段出来ない会話をすることですわ。例えばクラスの好きな子だとか、秘密の話とか。まあ、でも本家で定番なのはやはり恋バナですね」

「それはこの場では不可能ですよ、千尋さん。兄さまと何が悲しくて恋バナなんてしなくてはならないのですか」

「恋バナというのをするほどの経験値が僕たちにはないから難しいな。そうだ、じゃあ、千尋は瑞祥叔父上と同じ時期に学院にいたのなら叔父上の話を聞かせてくれないか」


 千尋は父の一つ上の学年で七緒と同級生だから、学院時代のことはある程度知っているはずだ。

 けれど、そんな話を聞いても祝は面白くもない。


「兄さま、申し訳ありませんけれど、父の話なんて聞いても私にはなんのメリットもありません。もっと二人とも知らない話を聞きたいですよね」


 祝がそう言うと、それもそうですね、と千尋が同意した。


「それなら千尋さんが知っている情報でいいので、領地内の美味しいお菓子のお店でも教えてくださいます?」


 楪も祝も気軽に商業地区を独りで散策するようなことが出来る立場ではない。

 祝は母方の祖父母が洋食のレストランをやっているので、そこへは行くことが出来るけれど、それでもそこ以外は知らないのだ。


 千尋がにっこりと笑い、商業地区で今話題のスイーツのお店などを話し始めてくれた。

 楪も祝も千尋があまりにも話し上手なので、まるで散歩をしているかのような感覚で話を聞いた。

 

 まだまだ夜は続いていく。

 

 

読んでくださってありがとうございます。


今日はちょっと短くて、後編へ続きます。

すみません!


少しでも楽しんで頂けたらとても嬉しいです。

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