調合79
カポチェットだけでなく、シュヒテルも近くに寄ってきて、興味深そうにしている。
芽ニョッキの入った鍋を指してシュヒテルは尋ねた。「これ、本当に食べるの?」
「うん。」
もちろんだよ。だって、これタケノコじゃない!
私は、シャルロッテに錬金術で調合してもらった、“塩の入った醤油”の壜を出した。
「これは、錬金術で作られた醤油なので、王城では使えないんですけど……。」
私は、芽ニョッキが冷めるまで時間があるので、前日買ったリューブル山羊チーズを醤油漬けしたものも、出してきた。
「なんだいこれ? せっかくのリューブル山羊チーズが、変な色になっちゃてるじゃないか!」
シュヒテルは、泣きそうになっている。
私は、表面に残った醤油を拭き取って、シュヒテルの前で食べてみせた。
「いい感じだよ。お一つどうぞ。」
シュヒテルは、不満そうではあったが、チーズを口にする。カポチェットも同じく。
「あれ? なんだろこれ?」
シュヒテルは目を丸くして、見上げた。
「これは、素晴らしく濃厚な風味! リューブル山羊の癖がむしろ、いい感じになって、なんというか、あぁ、上等のワインが要りますね。うん。これは、是非是非、試さねば。しかし、そうすると……。」
カポチェットは、残った“王城でも使える貴重な醤油”をどう使うか、いろいろ考えているようだった。
私は、次に、マルネギを出してきて、くし切りにした。そして、ベーコンを出してきて、これは一口大に切る。
コンロに残ったニトロン岩に再度、火を点けた。フライパンを乗せ、バターを入れて溶かす。メル粉を入れる。粉っぽさが無くなるまで混ぜる。
その後、弱火に調節し、リューブル山羊ミルクを入れた。ゆっくりと混ぜ、とろみが出るのを待つ。塩で味を調える。
別の鍋を用意し、バターを溶かして、マルネギが透明になるまで炒め、ベーコンも投入。
そしてフライパンに作ったソースを入れて混ぜ、さらにミルクを入れて伸ばした。
最後に、醤油をぐるっと一かけ。
味見をしてみる。
「ねえねえ。それも、ちょうだい。」
シュヒテルは、よだれが出そうになっている。
小さめのスープ皿によそい、スプーンを手渡すと、つま先立ちになって、手を伸ばし、食べ出した。
ちょっと台が高すぎるようだが、夢中になり過ぎていて、まったく気にしていない。
カポチェットの方はと見れば、鍋に小さなスプーンを入れてすくい、味見をしていた。
「う~ん。これも、最後に入れた醤油がいい感じに引き立っていますね。具は2種類しか使っていないのに……。是非是非、殿下には、ヤバナ国から早急に醤油を購入していただかないと……。」
冷めた芽ニョッキはよく水洗いしてからスライス。油で炒め、醤油で味付け。さらに、ちょっとだけバターを入れる。
「あ、いい匂いがしてると思ったら……。ズルい。なんで呼んでくれないの?」
シャルロッテが来た。
後はもう、行儀はよくないが、皆でつまみ食いである。
「これ何?」
「芽ニョッキの炒め物です。」
「これは、また。またもや醤油! 芽ニョッキの、こりっとした食感も素晴らしい。これは、干しオドリタケを加えてもいいかもしれません。」
「芽ニョッキって、食べてもよかったんだ。薬の材料だと思ってた……。」
シュヒテルによると、妖精さんたちは、芽ニョッキを薬の材料にするのだという。熱を下げたり、むくみを取る効果があるらしい。
「なるほどね。熱冷ましか……。」
シャルロッテは、残りの芽ニョッキを見ながら、ぶつぶつ呟いている。……危険だ。




