↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/87

調合76

広場内の空気が一変し、私は、ようやく、ゆっくり呼吸できるようになった。


「私も、……私に、あの場に立つ資格があるだろうか?」

隣で、呟かれた声。


「何言ってるんですか? ここまで来たのです。上に上がりましょう!」


人で溢れた広場の僅かな隙間を抜け、私たちは、目的の建物へ近付いた。

入口には、2人の近衛騎士が立っていた。


「止まれ。この先は進めぬ。」

「下がれ。この建物には近付くな。」

2人は叫んだ。


ジークフェルドと教育係の父親は、少しひるんだようだが、その場から退くことはなかった。

私は、深呼吸をしてから、2人の前に出る。


「私は、妖精の招かれ人、エリーチェ=コーにございます。急ぎ、参上仕りました。陛下にお取次ぎを。」


そう、余裕の無いところを見せてはならない。何時、如何なる時も。


私の言葉に、はっとした様子で、近衛騎士の1人は言った。

「暫し、お待ちを。」

そして、もう1人は、建物内に駆け込んでいった。


さして時間を待たずに、再び近衛騎士が戻ってきた。

「どうぞ、お入りくださいませ。」


ジークフェルドは、腰から剣を外し、近衛騎士に手渡した。

その剣に刻まれた印を見て、近衛騎士は、数歩、後ずさりした。


「しっ、失礼を。」

「構わぬ。」


フードが落ち、左眼を塞ぐ大きな傷跡が露わになったが、もはや、躊躇することなく、ジークフェルドは建物に入り、上へと階段を昇っていった。

私と、教育係の父親も続く。


ジークフェルドは、15年ぶりに、人々の前へその姿を見せたのだった。

新たな人物の登場に、ざわめきが広がる。


「ジークフェルド=ミッターフリーデン=ファン=アルランメディエである。長きに渡り、皆の前に出ることが叶わなかった。すまない。」


その言葉に、どよめきが広がる。


「今、陛下の話された通り、アルランメディエ王国は未曽有の危機にある。私からも、頼む。皆の力を貸して欲しい。この国のために。」


さらに、南側から、この建物を目指して進んできた人物がいた。


「通して! 通してください! ティナ様、アルベルティーナ=エルリカ=ファナ=アルランメディエ姫殿下が、通られます。道をお開けください。」


馬車から降りる姫殿下の姿に、ひときわ大きな歓声が上がった。

姫殿下を誘導してきたのは、シャルロッテだった。



3人が揃ってバルコニーに立った。

結局、アルベルティーナの国民的人気の前に、広場に集まった人々のネガティブな声は、完全にかき消されてしまったのであった。


「まぁ、美人の微笑みに勝るもの無しってこと。間に合って、良かった。」

シャルロッテは、レメリスからの封書鳥を受け取って事情を知り、その手紙をそのままアルベルティーナに送ったという。

エルリッヒとアルベルティーナの2人は、先代国王とは母親が違っており、それもあってか、特に仲が良かった。


「ティナ様なら、絶対に助けてくださるって思ってたの。」

果たして、アルベルティーナは、円形広場へと向かい、アルランメディエ王国の1輪の薔薇と称えられる微笑みを武器に、弟の危機を救ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。