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調合73

錬金術師養成学校の新学期が始まり、週に1回、シャルロッテは非常勤講師として、教壇に立つようになっていた。

その他に、実習時間の補佐として、主に、解毒水調合に立ち会い、さらに、同級生や他の卒業生たち共に解毒水調合、加工調合ガタパを用いた試作品作りを行うようになっていた。

その過程で革靴やブーツに被せて使う防水カバーを試作。靴職人サバドにも見てもらうことになった。


「このブニョブニョの半透明な靴下みたいなのを、被せるんですか?」

「そうです。少し青みが残りますが、半透明なので、下の靴の色やデザインがちゃんと分かります。最初に被せる時に、少し力が要るんですけど……。よいしょっと。」


私は、実際に、自分の靴の上から窮屈な靴下を履くように防水カバーを引っ張り上げてみせた。

防水カバーを被せた靴は、透明なゼリーに包まれたような見た目である。

サバドも、私に倣って、革靴に防水カバーを被せた。


「まぁ、これぐらいなら、一気に引き上げれば、普通に被せることができますね。違和感も無いようです。」

「では、水をかけますよ。」


私は、まず最初に自分の履いている靴の方へ水をざばっとかけてみせた。

そして、サバドの足元にも水をかけていった。

サバドは、しばらく濡れた足元を観察していたが、その場で飛び跳ねたり、歩いたりしはじめ、終いには、靴を脱いで中の様子を覗き込んだり、手で触れたりした。


「すごい、あれだけの水をかけたのに、まったく中に水が染みていない。」

「仮に、“雨の日靴カバー”と呼んでるのですが、靴工房で、お客さんに勧めていただくことはできませんか?」

「あぁ、これならいけるよ。でも、サイズ違いが要るね。革靴用とブーツ用も。」


サバドは、“雨の日靴カバー”の開発担当となったコリンズと打ち合わせを始めた。

これは、既存の靴とは別物ということで、念のためにギルドにも照会をしたが、独自開発品としてよいとのお墨付きを得ていた。

コリンズは、家具工房であるカブリオレ工房に属しているが、もともと様々な素材を研究するのが好きだったようで、加工調合ガタパにも興味を示し、畑違いとも思える靴カバーのアイデアをどんどん出してくれた。

シャルロッテは、コリンズ個人とサバドらのスティロン工房、および金型加工の技術を持つアルブレヒト工房のプロジェクトにするよう提案し、カブリオレ工房の方には、出向の見返りとしての謝礼金を払うことで決着していた。

ガタパの新しい需要掘り起こしの1つとして、期待できそうな予感がしている。


一方、アルブレヒト工房での会合に来ていたサルトリア工房のカリンカは、“濡れないエプロン”を独自にデザインし、一部は縫製を開始していた。

加工調合ガタパを布状に薄く伸ばしたものを縫製するため、金型は不要ということで、こちらは、シャルロッテとサルトリア工房のプロジェクトになった。


改良版の魔法インク開発の過程で登場した色インクは、解毒水調合の協力のために錬金術師養成学校に来た、シャルロッテの同級生の1人、チェイスが引き継いだ。

チェイスは、画材工房であるメロディ工房の職人だった。

色インクを用いた高級ペンを売り出そうと、ルリック工房と計画を立てているようだ。高級ペンに施す宝飾をモードリンが担当するらしい。


さらに、布状の加工調合ガタパで鞄を作ろうと、フリップとジェレップが奮闘していた。

2人は別々の鞄工房に属しているが、ガタパの新しい販路拡大は、国からの要請として近々正式に発表されるという情報は伝わっており、それぞれの工房も共同作業を認めたという。


果たして本当に、ガタパライムは異常増殖を起こし、災害が引き起こされるのか?

このまま、なんとなく、忙しく、そして慌ただしい日常が過ぎていくような気すらする日々に、気が付けば、ジークフェルドの私室で食事会をした日から、2か月が経過していた。

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