調合67
私は、カポチェットに、干しオドリタケと干しジャコ貝を水で戻して、戻し汁も料理に使うことを説明した。
「さっと洗ってから、かぶるくらいの冷水に浸して、半日くらい待つのが一番良いのですが、時間が無いときはぬるま湯に浸けて2~3時間待ちます。」
「なるほど、これは、前もって準備が必要ということでございますね。重要なポイントです。」
餃子に関しては、ミンチ肉が必要になるため、これまた、新鮮な肉とそれをミンチにする手間が必要になる。
カポチェットが背負い籠に入れて工房に持ち込んだ他の材料も見せてもらいながら、あれこれと打ち合わせをし、餃子は、もう一度作ってみることになった。
シャルロッテが、職人通りの肉屋に行ってくれることになり、以前に、私が肉屋にお願いした内容を伝えた。
「これは、パリパリっとした感触と、さらにモチモチした皮の絶妙な合わせ技! そして、中の具が素晴らしい。柔らかくジューシー。刻まれた野菜とのバランスもいい。醤油でなければならない、というのも納得です!」
さすがは王宮料理人。前回の時は、見事なまでに不揃いだった餃子が、大きさも形も完璧に揃っていた。
そして、醤油の色にケチを付けなかった。
焼き方のコツもすぐに理解してくれ、焼きたてを摘まみつつ、手際よくフライパンを動かした。
さらに、数品をあっという間に仕上げてみせ、打ち合わせ兼試食会は、滞りなく終了となった。
「では、確かに、お預かりいたします。」
カポチェットは、私から醤油壜を受け取り、呼んだ箱型馬車に乗り込む。
「本日は、誠にありがとうございました。また新しい味について、是非是非、エリーチェ殿と語らいたいです。次の機会が待ち遠しい。」
カポチェットは、馬車の窓から、満足そうな顔を覗かせ、帰っていったのだった。
「なんか、すごい人だったね。」
「王城で働く方たちって、濃い、ですよね。」
シャルロッテと私は、妙な疲労感を感じつつ、それでも王宮料理人の料理を食べるという貴重な経験ができたことに満足した。
グランたちがザラに戻ってきたのは、6日後だった。
シャルロッテから食事会の決定を知らされたグランは、今回も平服で、という条件に、頭を抱えたらしい。
「前回はマグダレスに、変な勘違いをされたようだからな。今回のは、問題なければいいんだが……。」
「ん、間違ってはいないように見えるけど、……。」
「不安を煽るような言い方はやめてくれ!」
おそらく、間違ってはいない。
ただし、堅苦しいその服装が、グランにあまり似合っていないだけなのだ。
「まぁ、エルさんだけならば、ともかく、ヴォルフガング殿下の前ならば、間違っていないと思います。」
「エリーチェちゃん。位は、エルの方が上なんだよ、一応……。」
「……そうでした。」
「ジークフェルド殿下も、お出ましになるんだよな……。」
「お出まし、というより、殿下の部屋に、こちらが乗り込むんだけどね。あはは。」
シャルロッテの乾いた笑い声が、なんだか、虚しい。
「会話、成り立つのでしょうか?」
「エリーチェちゃん、皆が、考えないようにしてたことをズバリ言ったね。」
「もう、今日のことなんですよ。」
「多分、ヴォルフガング殿下が何とかしてくださるよ。ジークフェルド殿下のお創りになった詩だったかを、朗読なさるんじゃないかな?」
自分たちで蒔いた種なのだが、私たち3人は、出発前から、頭が痛いのだった。




