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調合63

数日が経って、グランからシャルロッテの下へ封書鳥が飛んできた。


「もう、全然連絡が来ないから、心配したんだからね。」

シャルロッテは、封をペーパーナイフで丁寧に切りながら、愚痴をこぼした。


「どうですか?」

「フール川東岸側への道中でも、明らかに、ガタパライムとの遭遇が増えてるって。あと、やっぱり、解毒水は、ガタパライムの動きを鈍らせる効果があるみたい。あっちこっちに跳ね回られず、討伐がかなり楽になったって書いてある。あと無属性の魔力でも動きを止められるって。」

そして、グランの報告とほぼ同じものが、ヴェゼリからエルリッヒへ送られると書かれていた。


「結局は、人手が要るってことだけど。」


解毒水や無属性の魔力で、動きを抑えることはできるが、最終的に、核の部分を物理的に破壊しなければ、ガタパライムを倒すことはできないようだ。


「そんでもって、死骸の回収も必要ってこと。そのまま、捨て置いたら、結局、水路に詰まったり、農地の地面に貼り付いたりして害を及ぼすことになっちゃう。」


問題は、回収したガタパの死骸をどうするか? という点だ。


「魔方陣判子の材料ってだけではね。もっと、一般に売れる商品を考えないと……。」


ドルファー達、アルブレヒト工房の方でも、色々、試しているが、本来、金属細工を得意とする工房である。

加工調合ガタパのための金型作りに関しては、ほぼ、丸投げでも、問題はないだろうが、新製品のアイデアとなると、中々、難しいようだ。


「既存の製品を、加工調合ガタパで作る場合、それらをもともと扱ってた工房と揉めることになるからね。」


なるほど。加工調合ガタパが優れた性質を持っているとして、それで、既存の製品を作れば、不満は出るよね。


「撥水性や防寒の効果を狙って、ブーツやコートの素材にならないかって、考えたんですけど……。」

「靴職人や、裁縫師を敵に廻しちゃうかな? やっぱり。」

「靴の工房や、仕立ての工房を巻き込んじゃったらダメですか? ドルファー親方の人脈とか、ありそうな気がするんですけど……。」

「う~ん。直接聞いてみた方が、早そうだね。行ってみますか?」


ドルファーに向けて封書鳥を飛ばす。しばらくすると、ドルファーからの封書鳥が飛んできた。


「エリーチェちゃん、うまくいくかもしれないよ。とりあえず、集合って、ことで……。」


私たち2人は、グランからの手紙を持って、アルブレヒト工房へ向かった。


アルブレヒト工房では、ドルファーとデュラーの兄弟、見習いのヴェルンド、ルリック工房のモードリンとその弟子のヴェヴィ、そして、初めて会う人物が2人待っていた。


「エリーチェは、初めてだったな。スティロン工房のサバド=ウエルタと、サルトリア工房のカリンカ=メイだ。」


スティロン工房は靴工房、サルトリア工房は婦人服工房で、2人の職人はドルファーとは親しいようだった。


「グランからの報告が届いたの。解毒水の増産は決定になると思うわ。で、増産のための魔方陣判子、魔法紙、改良版魔法インクも同様ね。」


「その改良版魔法インクなんだけど。」

モードリンが声を上げた。

「ロティからの手紙に書かれた調合だと、時間が経ったら退色するんじゃない? アカシア油は使わないの?」


「魔方陣判子専用なら問題ないと思う。判子を押して魔方陣を完成させたら、すぐに調合で使っちゃうもの。」

「それも、既存の魔法インクの関係者と、揉めないためですか?」

「うん。あと、一時的に増産しなきゃいけない事情からも、一工程でも少ない方がいいし、材料の確保の点だけでもね。」


アカシア油はインクの退色を防ぐのに有効だが、シャルロッテは、あえて使わないつもりでいるらしい。


「そっか。勿体ないわね。私も色々試してみたんだけど。」

モードリンは、シャルロッテと封書鳥のやり取りをしながら、独自で、改良版魔法インクを研究していたらしい。


「これ、一応見せとくわ。作ったサンプル。オークいぼの代わりにジルべいぼ、アチェロいぼを使ってみたの。」


それは、鮮やかな緑色のインクと赤色のインクだった。


「これは、すごいわね。色インクか。……う~ん、これは、確かに勿体ないなぁ。」

「と、すると、文具・画材工房も巻き込まないと駄目だなぁ。まぁ、今日のところは、ガタパの方の話を進めなきゃならんから、次だな。」


最終的に、どれだけ多くの人を巻き込むことになるのか? 会合も、アルブレヒト工房の奥の部屋では、もはや窮屈になりつつあった。 

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