調合62
魔方陣判子が一応の成功となった翌朝、シャルロッテと私は解毒水を入れた壜10本を籠に入れ、ザラ城壁の南門へと出かけた。
そこには、グランと王城騎士団員のマグダレス、そして私とは初対面の男が3人待っていた。
「おはよう。解毒水、持ってきたよ。」
「ああ、ロティ、エリーチェちゃん。朝早くから、ありがとな。確かに、受け取った。」
「シャルロッテさん、請求書は王城騎士団第4部隊宛でお願いします。あと、紹介しますね。こちらは、近衛魔術師のヴェゼリ=マルレ。」
「お初にお目にかかります。陛下よりこの度の同行を命ぜられました、ヴェゼリ=マルレにございます。微力ではございますが、よろしくお願いします。」
「シャルロッテ=ベロアです。こちらは、エリーチェ=コー。私たちは、後方支援として、協力させていただきます。」
「エリーチェ=コーです。よろしくお願いします。」
ヴェゼリは、王宮図書館での会合で、無属性の魔力持ちだと言われていた魔術師だった。
「あと、この2人は俺の部下。ペレス=ラッケとジェリク=ラッケ。双子なんだ。」
「王城騎士団第4部隊のペレス=ラッケです。よろしくお願いします。」
「同じくジェリク=ラッケです。解毒水の調達、ありがとうございます。」
5人は、実際にフール川東岸側に行き、最近増加しているというガタパライムに、解毒水が効果を持つか? また、無属性魔術に対しての反応はどうか? を調査しに行くことになったのだった。
「気を付けてね。」
「御無事のお帰り、待っています。行ってらっしゃいませ。」
途中の状況も見るため、あえて歩きでの遠征となるらしい。定期的な連絡は封書鳥で行うことになっており、グランはシャルロッテから、ワックスとレターセットの入った袋を渡されていた。
そして、私たちは、5人が南門を出ていくのを、見送った。
「えっと、本日、この後の予定を確認いたします。」
「エリーチェちゃん、何だか、秘書っぽい感じだね。」
「秘書なんですが……。えと、では、本日午後、アルブレヒト工房での会合に出席。会合に続き夕食会も予定されております。」
魔方陣判子計画は、王国の重要案件にされてしまったため、色々、方針転換が必要になったのだった。
今朝、現地に向かった5人の報告次第で、解毒水増産が優先されることになる。
魔方陣判子もセットではなく、解毒水調合に役立つものものを優先。また、魔法紙や、塩無し醬油もどきを利用した改良版魔法インクの方も、必要量を確保しなければならない。
当初は、装飾的な部分の担当をすることになっていたモードリンのルリック工房も、今回は、実用部分優先を承諾していた。
そもそも、前日の集まりは、エルリッヒの希望で開かれた会合ではあったが、集められたメンバーを決めたのは、アンジェリドだった。
私のレポートは、少しは役に立ったのかもしれないが、ああいう展開になるとは予想外である。
そういえば、私は、ギルドの登録証の件で、シュバルツデュエルに礼を言っているうちに、アンジェリドに話すタイミングを逸した。つまり、優先順位が色々ひっくり返ったにも関わらず。レシピの課題の提出期限は変更してもらえていない。
私は、シャルロッテのスケジュール管理と、自分の課題、さらに急に決まったあれこれの把握で、手一杯の状態だが、アンジェリドは、どうやって、うまく廻しているのだろうか? 一度、コツを教えていただきたいものである。
「お昼の食材を買っていきますから、シャルロッテさんは、先に工房へ戻っていてくださいね。」
「え~。せっかくだし、私も行くよ。残った醤油を使って、レシピの課題も済ませなきゃでしょ。何か、もう、考えてるの?」
期待している青い瞳によって、さらなるプレッシャーが、私にかかったのを感じた。




