調合57
「原因は、まったく分からぬのか?」
「はっ。残念ながら。しかし、ガタパライムを捕食する魔物が減ったのではないかと……。」
「ガタパライムを捕食する魔物?」
「残念ながら、それが不明なのであります。」
結局のところ、ガタパライムの生態を含め、まだ、謎だらけということであった。
「ガタパライムの討伐自体は、現時点では、問題ないのだな。」
「はい。要請回数は増えていますが、全て滞りなく完了しております。」
「ガタパライムの討伐要請が増えたことで、他に不都合が出ているということは?」
「それも、現時点では。ただし、出動回数が増えたことで、出動手当の総額が上がっており、一方で、その……、たかがガタパライムに……と、財務部からクレームが出て……。」
「ギルドを通じての、民間への討伐要請の方を増やせ、ということか?」
「すでにギルドにも協力は要請を出しております。が、なかなか、うまくいかないようで……。」
ギルドの方で募集しても、ガタパライムの討伐の引き受け手が集まらない、という話は、以前にドルファーから聞いている。
初級者レベルの冒険者であれば、引き受け手もいなくはないが、ガタパライムも数が増えた状態であると、そう簡単には退治できない。
しかし、魔物レベルが低く設定されてするため、レベルが高い冒険者にとっては邪魔くさいだけで、報酬もわずか。採れるガタパは、現時点であまり使い道がないため、そちらの方でも儲けが少ない。
「ギルドから、アルブレヒト工房に、ガタパの利用方法の研究依頼が出ているようだな。」
「はい。ガタパは、これまで、その利用価値が低いとされてきましたが、面白い性質を持っていることが分かってきました。」
ドルファーは、ようやく、今日、自分たちがこの場に呼ばれた理由が分かったとばかりに、立ち上がって、説明を始めた。
「まず、これは、シャルロッテが調べたのですが、このガタパ、見た目が青色で、一見、水属性を思わせますが、火属性の性質を持っております。」
「そんな馬鹿な。ガタパライムは水に入るぞ。火属性であれば、水は苦手とするはずだ。」
マグダレスが反論した。
「いえ、確かに火属性なのです。しかし、一方で、火属性とは直接関与しないものの、撥水性、つまり水を撥く性質を持っているのです。」
「ということは、火にも、水にも耐性があるということか?」
「そうです。また、粉末リッカ吸収炭や粉末ツサク結晶を混ぜて調合すると、強度や弾力が変化します。」
「その性質を利用して、何か作ろうとしているようですね。シャルロッテとアルブレヒト工房、それとルリック工房が共同で。」
アンジェリドはどこまで把握しているのか、いつも通りに、表情一つ変えずに、言った。
「ふむ、面白そうだな。何ができるのだ? よもや、食べ物ではあるまいな?」
ヴォルフガングが、とんでもないことを言い出した。
「ガタパを食べる? いえ、そのような発想は、ありませんでしたが……。」
さすがの、ドルファーも、口籠る。
「そうか。最近、陛下は食糧事情に興味が御有りのようだからな。王城の食事も改善されて、私としても喜ばしいことなのだが……。」
「何を言っている。私の何を知っているというのだ?」
エルリッヒが、声を上げた。顔が、少し赤い。
「いえ、最近、スープの味が格段に良くなったのですよ。料理人が代わったのかと、ローレンツに探らせたところ、陛下自らがレシピを持ち込んだとか。あと、料理人たちや、側近に、変わった調味料を調べさせていましたね。」
「殿下、本来、そういったことは司書の役割ではないのです。」
「陛下が、醤油やミソ? とかいう調味料を調べているらしい、という情報を持ってきたのは、ローレンツ、其方だぞ。まぁ、私も興味を持ったので。醤油は、東方の国ヤバナで作られているということが分かりましたよ。」
「殿下は、それを、学校の方に送り付けてこられました。」
つまり、“とある方”はヴォルフガング殿下だったわけですね。しかし、この会合、話が、あちこち飛び過ぎだよ……。




