調合47
「ほんとに、ほんの少しですからね。」
結局、私は、シャルロッテにインクの材料候補として、醤油を提供せざるを得なかった。
「しかし、誰が、その黒い液体をエリーチェちゃんにって託したんだ? 」
グランは、味は認めてくれたが、“黒い液体”扱いである。
「おい、エル。お前、本当は何か知ってるんじゃないのか? お前、平民のフリしてるが、そうじゃないことぐらい分かってるんだぞ。」
グランは、エルリッヒに詰め寄った。
「ちょっと、グラン、やめてよ。」
「そういえば、当事者に了解が得られたら、事情ってやつを話すってことに、なったんだっけ?」
「当事者は……、エルも当事者には違いないけど、別の人よ。」
「何の話だ、一体。まったく見えんぞ。」
たちまち、険悪な雰囲気に変わる。
「あの、エルさんも当事者なんですか?」
私は、つい、口を滑らせてしまった。
シャルロッテは、しまったという表情をした。
「そう。でも、本当の当事者では、ないわ。ただ、そうね。これをエリーチェちゃんに託したのは、本当の当事者かもしれないわ。」
私にも、まったく話が見えない。
「ロティ、本当の当事者とは誰だ? 私には、どうやら聞く権利がありそうだな。違うか?」
エルリッヒの言葉に、シャルロッテは俯き、ポツンと呟いた。
「エルの年上の甥にあたる方。」
「どういうことだ? 意味が分からぬ。なぜ、幽閉されている身でそのようなことができる? ロティ、何を知っているのだ?」
エルリッヒが、立ち上がって大声を出した。
「え? 幽閉って。エル、まさか、知らないって、そんな……。」
シャルロッテも、様子が変だ。ここまで取り乱したところをはじめて見た気がする。
「頼む。ロティ。知っていることを教えてくれ。誰も、私に本当のことを教えてはくれないのだ。私が、若すぎると皆に言われていることを知りながら、今の状態に置いた兄上も、その周りの者たちも。」
エルリッヒは崩れるように、椅子に座り、続けた。
「私なりに、責を負う覚悟はしたつもりだ。しかし、全ては、兄上とその周りの者が決め、私は言われるがままだ。大事なことは何一つ、伝わってこない。」
ただならぬ様子を察したグランも、シャルロッテに言った。
「なぁ、ロティ。俺、席を外した方がいいか? どうも、その、俺の考えていた事とは違う雰囲気なんだが……。」
しかし、シャルロッテは何かを決意したように言った。
「いいえ。私が知っていること、話すから。グランも、エリーチェちゃんも聞いて。」




