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調合43

「エリーチェちゃん、ひとまずは、就職おめでとう。何にしたらいいのかよく分からなくって……。これ、貰ってよ。」

グランは、緊張が解け切らないような表情のまま、私に小さな包みを渡してきた。


「ありがとうございます。開けてもいいですか?」

私は、包み紙をなるべく丁寧に剥がして、中の箱から、プレゼントを出した。

それは、金属の細やかな透かし加工の髪留めだった。中央に、黒い石が嵌め込まれている。ショールクリスタだ。


「女の子に何をあげたらいいのか……、いや、その、あんまり、詳しいこと分からなくって、店の勧めだったんだけど。……こういうの、エリーチェちゃん、使ったりする?」

明らかに、プレゼントをし慣れていないグランが、今日のために、これまた慣れていないだろう種類の店で、アクセサリーを選んでる様子が想像できて、ちょっとおかしかった。


けど、グランさん。こういうのは、私じゃなくて、ちゃんと贈るべき人が、すぐ前にいるじゃないですか!


「本を読むとき髪が邪魔になるんで、髪留め、欲しかったんです。ありがたく、使わせていただきますね。」

私は、それでも、グランの気持ちは嬉しかった。箱に髪留めを戻して、一旦、部屋の壁際の棚のところに置いた。


「ふう~ん。グランが、こういう気遣いをするとはね。」

シャルロッテの声が、どことなく、寒い。


「では、お待たせしました。ソフ海老入り具だくさんスープです。あと、ミツマタ槍烏賊のリングフライに、ワイバーンの唐揚げ、サラダはオガサ山葵で風味付けしたドレッシングでどうぞ。」

私は、料理を簡単に説明し、2人に勧めた。


「あぁ、やっぱり、エリーチェちゃんのスープ、最高! ワイバーンのお肉もお~いしい。」

シャルロッテには、錬金術の呪いにかかっていた間にも、スープは出していたのだが、その間、味は分からなかったのだろうか? 今日は、ちゃんと、おいしく食べてくれていて何よりだ。


「へぇ。これは……。」

グランは、黙々と、皿の上のものを片付けていった。


う、あんまり、会話が弾まない……。仲直りして欲しいのに……。


私は、2人の様子が気になり過ぎて、夕食の味がよく分からなかった。

あっさりと食べ終わり、デザートの時間。私は、ヨーグルトのベリーコンフィチュールがけを、無作法にも、ぐちゅぐちゅとスプーンでかき混ぜつつ、どうにか話題のきっかけを見つけ出せないか、頭を悩ませていた。


「あのさぁ。」

場の空気に耐えられなくなったグランが、声を上げた。


「はぁ、俺が悪かったよ。もともと、ロティに押し付けたのは俺だったんだよな。突然、訳の分からない状況に巻き込まれたエリーチェちゃんのこと、この街でうまく生活できるように、ロティは必死で考えてたのに……。」

「……私も、焦り過ぎてた。それと、……何か、グランが、やたらとエリーチェちゃんにばっかり気を遣ってるのが、ちょっと、イラっとなって……。」

「え? 別に、普通だろ? 初めての採取が夜だなんて、さすがに、あれくらいは……。」

「あれが普通? うそ、ぜ~ったい、絶対違うと思う。」

「いや、いや、いや、普通だね。 不安しかないじゃん。ああいう場合は。」

「私が夜の採取に行くとき、そんな気遣いしてくれたこと、一度もないよね。 すっごい差。」


私も、イラッとなってきたんですけど……。


「あぁ、もう、仲直りするんですか? しないんですか? いい加減にしてください!」

私は、ちょっとだけ、キレた。

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