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調合40

午前中、私はレポートをまとめた。


ガタパライムは、森林や水辺などに生息し、時に大発生する。手足は退化したグニャグニャの体を持ち、跳ねて移動する。生態は不明な点が多い。刀剣類で切断することが難しい。

大発生の原因は不明である。しかし、その結果、水害の被害を大きくした事例が報告されている。

王国29年初夏、ヤヴァ川の支流フール川の東岸側で、原因不明のガタパライムの異常発生が起き、その結果、付近の農村だけでなく、ヤヴァ川下流域にまで及ぶ広範囲に水害が生じた。

当時の記録には“大量発生したガタパライムが川岸の地面を覆ってしまい、まるで敷石のようになった。ガタパライムで覆われた地面は水を吸わず、雨期に入った悪条件も重なり、水はまるで滑るように四方へ溢れた。下流側にも短時間で大量の雨水が流れヤヴァ川の両側の農地が水に浸かり、甚大な被害となった。”とあり、地面の保水力低下を招くことが、水害の被害を大きくした一因と推測される。

冒険者エンリコ=マールは、洞窟探検時に、ガタパライムと度々遭遇したと記録しており、また、ゴンドラ大陸の極北地方に近いクヌーム遺跡の遺跡から、ガタパライムの死骸が貼り付けられた衣服残欠が出土しており、ガタパライムの死骸の加工の様子と見られる壁画や餌やりの様子と見られるものも見つかっていることから、生息域はかなり広範囲であることが予想される。

古代遺跡発掘調査を多数手がけたミケーナ=シュリーは、古代クヌーム人は、極北地方に近い極寒の地で生活をするにあたり、ガタパライムを利用していたと考えている。防寒、凍結防止を目的とし、初期の頃は、狩猟や落ちていた死骸の収集で得たガタパライムを住居の壁や衣服に貼りつけるという方法を採っていた。

次第に高度化した技術を用いるようになり、ある種の防水能を持つ樹液とガタパライムから採取した物質を加工し、ニスのような使用もしたと推測されている。

また、壁画の様子から、古代クヌーム人は、ガタパライムを家畜化していた可能性がある。


ガタパライムから採取されるゲル状物質は、ガタパと呼ばれる。

詳しい性質は、まだ報告がないが、撥水性を有することが伺われ、今後の更なる調査と新しい用途の開発が期待される材料である。


要するに、よく分かりませんが、撥水性、防寒のあたりがキーワードになりそうな材料ってことで、勘弁してください。アンジェリド先生!


参考文献を並べて表記し、私は、レポート作成を終了した。


シャルロッテは、結局、明け方近くに、長椅子の上で目覚めたらしい。私が起きた時には、再び、調合室の中の人と化していた。

私が整理したメモ類の中に、耐性試験結果の表を見つけ、更に項目を増やそうと、あれこれ、やっていた。


「学校図書館の本に、古代クヌーム人が防寒のため利用したらしいって記録がありましたから、凍るかどうかは調べてもいいかもしれませんが……。」

「それは是非、調べたいな。ねえ、これ、ハンコ以外に、何に使えそうか、考えてよ。あぁ、防寒具は候補になりそうね。」


なんだか、更に、面倒なことになったようだ。私は、午後に、アルブレヒト工房で進捗報告会をする予定を再度確認し、風呂と衣服の準備を念押しする羽目になった。


昼食を摂った後、私は整理したメモ類を、シャルロッテは加工調合ガタパのサンプルを入れた壜を準備した。壜を入れた箱は2つになったため、私たちは1つずつ抱えて、工房を後にした。


アルブレヒト工房では、ドルファーだけでなく、弟のデュラー、見習いのヴェルンドが待っていた。モードリンは、弟子のヴェヴィを連れてきており、奥の部屋は、会合が始まる前から、何だか熱い雰囲気に包まれていた。

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