調合37
検索盤で、今度は、“ガタパ”を検索してみた。すると8件の表示が浮き出た。その内7件は、“ガタパライム”で検索して表示されたものと被っていた。
1件をなぞって、緑の石に職員証をかざす。そして赤い石にも職員証をかざした。
『錬金術材料辞典』というやたら分厚い辞典が運ばれてきた。
ガタパの項目は、わずか1行。“ガタパライムから採取されるゲル状物質。”それだけだった。
私は、机に運んでもらった本を、カウンターのところまで少しずつ分けて運び、セドリックに礼を言った。
「ありがとうございました。これからも、利用させていただきます。今後もよろしくお願いします。」
そして、ふと思い出して尋ねる。
「あの、こちらでは、手袋をはめて閲覧する必要のある本や資料もあるのですか?」
「そういう扱いをせねばならぬ蔵書は、基本的には閲覧不可になります。特別許可が降りないと閲覧はできないのです。許可が降りることは非常に稀です。校長が判断しますが。」
手袋を準備してくる必要は、とりあえずない、ってことだね。
私は、レポート作成は後日にして、学校図書館を出た。職員証をかざす。そして、錬金術師養成学校を後にした。
帰りに職人通りに寄り、買い物をした。もう、顔馴染みになったお店も数件あると思う。食材費は、シャルロッテから渡されたものがある。
掃除や洗濯は、妖精さんがするって言ってたけど、どうなっているんだろう?
相変わらず、妖精さんには会えていない。が、確かに部屋はいつも、きれいになっているし、洗濯もされているのだ。下着も含めた衣服やタオルが、何時の間にか、部屋のタンスに仕舞われている。
さすがに下着の洗濯は、自分でした方がいいんだけど、今、シャルロッテさんに、何処で洗濯したらいいかとか、説明聞ける雰囲気じゃないんだよね。例のオケアノスの瓶?だっけ、自動貯水瓶も、水の種類が全部違うみたいだから、どの瓶の水を洗濯に使ってもいいのか分からないし。
いろいろ、もやもやする部分はあるが、今のところ、シャルロッテから任せてもらえているのは、料理と食材の買い物ぐらいなのだ。
正式に秘書になったとして、秘書の仕事自体も、まだ、ちゃんと把握できていない。しっかり、上司に監視されているらしいのだが、必要最小限にしか情報が引き出せておらず、支えろとか守れとか、正直、どないしろっちゅうねん! と叫びたい気分だ。
まぁ、叫ばないけど。怖いもん、アンジェリド先生。こちらの世界にも監視カメラとか、あるんだろうか? ……ありそうな気がする。学校図書館、あれ、日本の図書館だって、あそこまでの管理になってないと思うもの。
私は、ソフ海老だけは切らさないようにと、心がけている。安くて、使える、有能食材だ。今夜の夕食は、野菜スープと、でき合いのお惣菜。こちらの世界の食材を学ぶのに、お総菜屋さんで、使われている食材と調理法を教えてもらいながら、食べて確認するのが、日課のようになっている。
安くて、おいしい、お惣菜屋さんが1件あって、私はそこの常連客となった。時間が無い今は、特に助かる。
「こんにちは。今日も来ちゃいました。」
「いらっしゃい。そろそろ、来る頃じゃないかって言ってたところなんだよ。」
「ヨシミョウガの酢の物、さっぱりしていて、おいしかったです。あれ、今度、参考にさせてもらおうって思って……。」
「おいおい。うちの総菜、ちゃ~んと買ってよ。味覚えたら、さよなら~とか、勘弁して。」
「ちゃんと買いに来てるじゃないですか。すっかりファンになってるんですから。今日のおすすめ、何ですか?」
「キノ舌平目のソース煮、あと、ミツマタ槍烏賊のソテーだね。」
「どっちもおいしそう。ソースって何が入ってるんですか?」
「それ、企業秘密ってやつだから。まぁ、ちょっとだけヒントね。オガサ山葵を風味付けに少し……。」
ふむふむ。オガサ山葵ですね。山葵あるんだ。今度、探さないと。
私は、キノ舌平目のソース煮を2人分買って、店を出た。




