調合34
「当校への出入りは自由となりますが、非常識な時間帯の来校は避けて下さい。学校図書館の使用も許可します。」
「図書館使用の許可、ありがとうございます。」
「そこで、次の課題を出します。」
あぁ、次の課題、来ちゃったよ。
「学校図書館へ行き、司書のセドリックに図書館利用の方法を習うこと。魔物ガタパライムと、ガタパライムから採れるガタパという材料について、学校図書館から資料を探し、レポートにして提出すること。以上です。今日はご苦労様でした。」
「がっ、ガタパライムと、ガタパですか?」
「そうです。ガタパは、これまであまり錬金術の材料としては注目されてきませんでしたが、ここ数日で、な、ぜ、か、大量のガタパが某工房に購入されているのです。錬金術の材料の市場での流れは、常にチェックしています。学生の実習や当校在籍の研究者にとって、材料は必要ですから。」
こっ、怖い。アンジェリド先生、全部お見通しなんじゃない!
「図書館にもあまり多くの情報はないかもしれません。これからの材料ですから。しかし、古い記述に、意外なものがあるかもしれませんね。レポート、楽しみにしていますよ。」
私は、受け取った空の薬壜を鞄に突っ込み、逃げるようにして、アンジェリドの研究室を後にした。
学校図書館は、錬金術師養成学校本館とは別棟にあった。アンジェリドから手渡されたカードは、職員証であり、図書館の入館証としても使われるものだった。
「初めまして、エリーチェ=コーです。来年度から非常勤講師となるシャルロッテ=ベロアの秘書に配属されました。」
「初めまして、錬金術師養成学校学校図書館司書のセドリック=ペルガモンです。おや、職員証に個人登録がまだお済みでないようですね。」
「個人登録ですか? 先程、アンジェリド先生から受け取ったばかりなんですが。」
錬金術師養成学校の職員証は、個人登録を済ませないと有効にならないという。
「こちらで、それも説明しろということでしょうね。図書館の利用方法を聞きにきたのでしょう?」
「はい。お願いします。図書館で資料を探してレポートを書く課題も出ているんです。」
「職員証の裏面に、魔法紙が貼られていますね。それを、注意して剥がし、利き手の指紋を重ならないように順番に丁寧に押し付けて下さい。失敗すると利用できなくなるので気を付けてください。」
私は、図書館入口のカウンターの上に、自分の職員証を裏返して置き、言われた通り、魔法紙をゆっくりと剥がし、右手の指紋を親指から小指まで、重ならないように押し付けた。すると、職員証に押された指紋が淡く光り、そして、消えた。
「個人登録が終了しました。これで職員証として機能します。学校図書館に関しては、入館証となります。入館する時と退出する時は、入口のカウンターの所定の位置にかざしてください。入館履歴として記録されます。館内の本、資料の閲覧の際も、本、資料の整理箱外側の蔵書印の部分にかざしてください。個々の蔵書利用履歴が記録されます。」
「かざし忘れたらどうなるのですか?」
「職員証をかざさなければ、本も資料も閲覧できません。そういう仕組みになっています。」
うわぁ、なんかすごい厳重管理されてる。
「職員証は、給与振り込みと学校内での購買部利用にも使われます。個人登録されていて他人が使用することはできませんが、絶対に失くさないようにしてください。」
「万が一、失くしてしまったらどうなりますか?」
私は、念のために尋ねた。
「アンジェリド先生の下へ、報告がいきます。」
絶対、失くせない! 失くしません!
「入館時間は、夏期と冬期とで異なりますので注意してください。こちらに、書かれていますので、ご確認を。」
カウンターの後ろの壁に、入館時間が書かれてあった。
「では、職員証をかざしてください。バーが開いて入館できるようになります。」
わたしは、入口のカウンターの“入館時の提示はここ”と書かれたプレートに職員証をかざした。すると、入口を遮っていたバーが開いた。




