調合31
私は、初級教科書の記載を何度も確認し、調合室の机の上に、道具と材料を揃える。
左から2番目のオケアノスの瓶に付いている蛇口を捻り、ガラス容器に精製水を入れた。
リッカ吸収炭は、調合室にある炭でいっぱいになった箱からいただいた。炭でいっぱいになった箱は、気が付けば3箱に増えていた。乳鉢と乳棒で炭を粉になるまですり潰す。
触媒剤は、前回の調合の時に確認した棚の容器から1つ取り出した。
魔法紙を広げて、魔法ペンで魔方陣を描く。
まだ、教科書を見ずに描くことはできないため、水属性と無属性の材料を合わせるための基本形魔方陣をちらちら見ながら、描き写す。
やっぱり、きれいな円形にはならず、歪んだ楕円形になってしまった。
シャルロッテは、同じ調合室の中にいるのだが、私の方には目もくれず、自分の調合に夢中になっている。
私は、解毒水の調合を始める前に、声をかけるべきか迷ったが、結局、そのまま、開始することにした。
粉になったリッカ吸収炭をガラス容器に入れ、精製水をゆっくりと注ぎ込む。そして触媒剤を1つ入れ、魔方陣の中央に静かに置いた。
すると、今回は魔方陣は全体が黒ずみ、容器は魔方陣から立ち昇った黒い闇に包まれた。
何これ? 黒魔術? ちょっと、まずくない?
私は慌てて、シャルロッテに助けを求めようとした。瞬間、黒い闇は消え、ガラスの容器内には淡い紫色の美しい液体ができていた。
「やったね。大成功! もう1人で基本調合はできるね。」
シャルロッテは、紫色の液体を眺めて言った。
「これ、本当に解毒水ですか? 色はきれいですが、あまり飲んでみたい気にはなれない色ですよね。」
「これでも、見た目的には妖しさ低めの薬なんだよ。もっと、毒々しい色の薬もあるんだから。」
やっぱり、見た目って大事ですよね。
「エリーチェちゃんが言ってた通り、ガタパにツサク結晶の粉やリッカ吸収炭の粉を混ぜて調合したものを加熱すると固まるし、粉の配合を変えると硬さが変わるね。水を撥く性質があるみたいでいろいろ応用できそう。こんな面白い材料、今まで放っていたなんて信じられないくらいよ。」
ここ数日間に試した粉末ツサク結晶と粉末リッカ吸収炭の配合比率と、できた加工調合ガタパの性質を書いたメモを見せてくれた。
「できたサンプルを、光に当てたり、水に浸けたり、乾燥させたり……、色々試さなきゃならないわ。あと、多孔質ガタパにするのに一番いい条件のものも選ばなきゃ。あぁ、魔法インクの改良もしなきゃならないし、時間が倍でも3倍でも欲しい。」
錬金術師の魂、絶賛炎上中である。さすがは火薬姫。燃え上ったら制御困難だ。
私は、完成した解毒水を薬壜に移し替え、ラベルを貼り、保存用の棚の回復水の隣に入れた。
使った道具は、一旦すべて浸けておくように指示された薬液の入った水槽に入れておく。
そして、調合室内のあちこちに散らばり落ちているメモを拾い集め、まとめて整理することにした。
シャルロッテは、まず、ガタパの方に専念することに決めたようだ。魔法インクに関してのメモも数枚混じっているが、ほとんどがガタパに関するものだった。しかし、所々に魔法インクのアイデアの走り書きがあったりして、見逃せない。
とりあえず、魔法インクの方は、走り書きを見たら、抜き出してまとめる方がよさそう。これ、書かれた順番は、もう分からないよ。仕方ないか。
ゲル状の加工調合前のガタパ自体の性質も、いろいろ試したらしい。メモを読むと、ガタパは、見た目涼しい青い色をしているが、実は火属性だということが書かれていた。撥水性の性質は、その影響と判断している。
別のメモには、粉末材料を混ぜて調合したものは、ある配合比率からは、無属性に変わることが書かれていた。粉末リッカ吸収炭の無属性としての属性が強力であるために起こる現象らしい。無属性に変化した加工調合ガタパは、しかし撥水性を保っており、“撥水性は火属性とは関連しない可能性”と書かれていた。
何これ。素人が見ちゃったらまずいメモなんじゃない? 校長先生やアンジェリド先生にバレたら大変だ。




