調合27
「そこから先の話、私にするのは難しいんじゃないですか?」私は、シャルロッテに尋ねた。
「グランさんにも話せなかったことですよね?」
シャルロッテは溜息をついた。
「エリーチェちゃんは、それでもいいの? 私の秘書になるのはやめにする?」
「私はとにかく、仕事が必要なんです。だから、秘書になるのをやめる選択肢は今のところありません。だって、錬金術師の秘書ですよ。なんか、カッコ良くないですか?」
「参ったなぁ。カッコ良いかなぁ?」
「私に事情が話せる時が来たら、話してください。でも、その時には、グランさんに、まず話した方がいいと思います。」
「ごめんね。私1人で決められないの。その、当事者に了解を得ないとできない話だから……。」
私たちは、2人でお茶を飲み、その後、調合室に移動した。
「調合服はまだ届いていないので、今日は、エプロンで代用ね。袖のところは注意してね。あと、手袋と、ゴーグル。」
「ウサギ草、まだ光ってますね。」
支度をしながら、採取用の籠の中を見た。
「回復水の調合については、初級教科書に載っているので、もう確認済みだと思うけど、必要な材料は、リュウゼル湖水、ウサギ草、触媒剤の3つです。」
「触媒剤も……、今から採取ってことはないですよね。」
「触媒剤の調合は、中級者以上にならないと無理よ。最初は、でき合いのものを使います。今日は、私が準備したものを使うよ。」
「ウサギ草を調合用の容器に入れ、リュウゼル湖水を注ぎ、触媒剤を入れてから、調合のための魔方陣を描いた魔法紙を敷いた上に乗せるのですね。」
「よくできました。調合のための魔方陣の基本形は確認できてる?」
「初級教科書に載っていました。水属性と木属性の材料を合わせるための魔方陣ですよね。」
教科書を見ながら、魔法ペンという筆記具で、魔法紙に魔方陣を描いていく。
「基本形の魔方陣は、教科書を見ないでも描けるように練習してね。ちゃんと構造も理解して。応用を加えた魔方陣も、いずれは、使うようになるからね。」
いきなり、高度な要求をされてしまった。それにしても、魔方陣、複雑な記号の組み合わせで、描き写すのも大変だよ。
「う~ん、実は、まぁ、私もきれいな円形に描くの、結構苦手なんだよね。」
覗き込みながら、シャルロッテは苦笑いした。私の描き写した魔方陣は、楕円形に変形している。私、絵やデザインの才能は無さそうだ。
「構造を理解するのは必要だと思うのですが、これ、基本形のものだけでも、判子にしちゃダメですか?」
「ハンコ?」
「封書鳥のための登録印を作る話をしていたじゃないですか? 魔方陣も印にして、魔法ペンのインクを使って魔法紙に押すんです。魔方陣は誰か上手に描ける方に描いていただいて、それを職人さんに印として彫ってもらうんです。」
ダメですか?最初から、楽をしようとするなんて、やっぱり。
「そうすると、印の材料は……。ミスリルがいいかなぁ。残りあったっけ?」
今回は、私の描き写した歪んで楕円形になった魔方陣で、回復水を調合することとなった。
ガラスの容器に光るウサギ草を入れ、ゆっくりとリュウゼル湖水をひたひたになるまで注ぎ入れる。そして、30分ほど待ってから、触媒剤を1つ、静かに容器内へ入れた。
容器を魔方陣の中心の位置に静かに置くと、魔方陣が淡い緑に光り出し、容器ごと光に包まれた。
「これぐらいの量なら、1時間くらいで完成すると思う。光が消えるまで待つんだよ。」
1時間ほどして光はゆっくりと消え、ガラスの容器内には緑色の液体ができていた。




