調合26
「ごめんね。お茶の準備してもらったのに……。」シャルロッテの表情は曇ったままだ。
「ウサギ草、調合室に籠ごと置いてきたんですが、保存とか、何か処理は必要ですか?」
「あぁ、大丈夫。でも、早いところ、回復水の調合をやってしまおうね。」
そう言って、シャルロッテは立ち上がりかけたが、首を振って、また、椅子に座ってしまった。
「大丈夫ですか? 具合が悪いのだったら……。」
「そうじゃないの。ただ、フェアじゃないっていうのは、そうだよね。ちゃんと話しておかないと。私の秘書になったら、エリーチェちゃんは巻き込まれる可能性が高いもの。」
シャルロッテは、私も座るように言った。
「何処から話したらいいのかな?」
私には、シャルロッテ自身も、整理がついていないのかもしれないと思えた。
「グランさんが怒っていらした理由。シャルロッテさんには分かるんですか?」
「うん。」
「それでも、事情は話せないのですか? 私よりもむしろ、グランさんに話すべきじゃないかって、思うんですが……。」
「エリーチェちゃんは、怒っていないの? その、私が、エリーチェちゃんの希望とか聞かずに、どんどん進めちゃって……。」
「私、既に、こちらの世界に連れてこられた時点で、もうよく分からない状態に巻き込まれてるんですよ。まぁ、もちろん、事情は知りたいですけど。これ、口にすべきではないのかもしれませんが、国王陛下の評判はあまり良くないんですか?」
「えっ。エリーチェちゃん、どうして?」
シャルロッテは、青い瞳を大きく見開いて、私を見た。
「当たり……、だったですか? 今朝、お会いしたティナ様、アルランメディエを名乗っておられましたよね。王族の方ですね。」
「現国王ルドルフ2世陛下の王姉殿下。2代前のノイヴィセント4世陛下の第3王女にあたるの。」
「先代国王は確か、ノイヴィセント5世陛下でしたよね。」
「ノイヴィセント5世陛下はノイヴィセント4世陛下の第1王子、ルドルフ2世陛下はノイヴィセント4世陛下の第5王子よ。」
う、もう、分からなくなってきた。世界史の世界だわ、こりゃ。
私は、紙を貰い、家系図を書いて整理することにした。
「つまり、現国王陛下は、先代国王陛下の末弟にあたられるんですね。先代国王陛下にはお子様がおられなかったのですか?」
「いいえ、2人。第1王子ヴォルフガング殿下、第2王子ジークフェルド殿下がおられるわ。」
家系図に書き足す。
先代国王ノイヴィセント5世は、錬金術に興味を持ち、アルランメディエ王国に取り入れることを決めたと聞いている。
「もともと、アルランメディエ王国では、国を守る力として魔力量の多い者がずっと重用されてきていたの。王族も貴族も魔力量が多い者を輩出する血筋だしね。」
錬金術は、僅かしか魔力を持っていない者でも魔力を扱うことができる技術だ。揉めるだろう。
「第1王子ヴォルフガング殿下は、あまり体が丈夫ではなく、王責を負うのは困難と見られていたの。聡明な方ではあるんだけれどね。第2王子ジークフェルド殿下はお生まれの時から膨大な量の魔力をお持ちということで、皆に期待されていたのよ。」
15年前、ノイヴィセント5世は、そのジークフェルドだけでなく兄のヴォルフガングをも幽閉してしまったという。
「その1年後に、錬金術師養成学校を設立したの。ご自分の希望を無理に通すため、守旧派が担ぎ上げそうな王子2人を犠牲にしたと見られているの。」
「それは……。」
「でも、真実は違ったのよ……。」
シャルロッテは苦しそうに呟いた。




