調合25
「まぁ、とにかく、ロティは少し走り過ぎ。エリーチェちゃん自身に選ばせてないのはダメだ。あと、連中には、用心しろ。」
グランは忌々しそうに言う。
「グランさんは、私がシャルロッテさんの秘書になることは反対なんですか? それとも、錬金術自体が、私には合っていないのでしょうか?」
私には、グランが何に苛立っているのか、よく理解できない。
「俺は、錬金術に関しては、良いとも悪いとも評価できない。正直、そこまで詳しくはない。ロティがやってるので、まぁ、便利なところがあるのは知ってる。」
グランの言葉は、私の問いとは少しずれている。
「学問自体、俺にはよく分からない。ただ、問題の無い学問なんていうものも、おそらくは存在しないんだろ。もしも、問題の無い学問なんていうものがあるとしたら、それは、もう大きくも広がりもしないんじゃないか?」
少しの間、沈黙が流れた。
「だから、錬金術だって、可能性と同じくらい危険を持ってると考えてる。エリーチェちゃんが、それを承知の上で選ぶのなら、それは応援したいって思うよ。だけど……。」
グランは、何かを抑え込むように、言葉を選びながらゆっくりと続けた。
「錬金術をこの国に持ち込んだ連中には、正直、わだかまりがある。ロティにも、あまり、その……、複雑な立場の人間とは……、関わり合いになって欲しくないんだ。」
「グランさんは、シャルロッテさんと私が、近過ぎるのが問題だと思っているんですね。私は、その……、妖精の招かれ人で、国王の賓客らしいですから。」
グランは、はっとしたように、私の方を見た。
「すまない。そうだったね。エリーチェちゃんは、もともと向こう側だったんだな。」
「向こう側って何よ。エリーチェちゃんは悪くない。グランが、そういう風に考えてるなんて、知りたくなかったよ。」
「あいつらは、俺たちとは違うんだよ。立場とか考え方とか……。いくら表面上は親切そうにしたり、こっちに理解があるような振りをしてても、いざとなったらあっさり切り捨てる。身内でさえ、そうしたじゃないか。」
「あれは、事情があるの。仕方がなかったのよ。」
「事情って何さ?」
「それは……、言えない。」
「知らない、じゃないんだな。言えない、なんだな。」
グランとシャルロッテの言い合いの言葉の端々から、どうも、お偉いさん達の事情が絡んでいるらしいことが伺えた。
グランの態度が変わったのは、あの、施療院の責任者アルベルティーナが現れてからだ。そして、アルベルティーナは、アルランメディエを名乗っていた。
「俺には言わなくていい。ただ、巻き込むんだったら、エリーチェちゃんには事情とやらを話しておけよ。そうでなければ……、そうできないなら、フェアじゃない。」
グランは、絞り出すように言うと、そのまま、工房から出ていった。




