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調合21

「秘書として、あなたは、スケジュール管理をはじめとしてシャルロッテの仕事がスムーズに運ぶよう、各種の手配について精通しなければなりません。」

「はい。」

「調合に必要な材料の準備、道具類のメンテナンス、調合依頼に関しての日程調整、非常勤講師に関する業務連絡等の秘書の業務を行うためには、基本的な調合自体を知らねば務まりません。」


アンジェリドは、錬金術に関して経験がない私を助手として扱うことはできないと言った。そして、シャルロッテを非常勤講師として招聘するにあたり、個人秘書のいないシャルロッテと滞りなく連絡を取り合うために、学校側から秘書を紹介する必要があると。

「つまり、あなたは、当校からシャルロッテに派遣されるという形になります。」


新学期までに、秘書として働けるよう、アンジェリド先生自らがご指導下さるそうである。


「正直、時間がありません。しかし、当校から派遣した秘書が使い物にならないなどということは、断じて認められません。」


うわぁ、何か大変なことになっちゃった。


私は、特別に、新入生に与えられる初級教科書を与えられ、課題の提出物の期限が書かれたメモを渡された。


「あ~あ、巧いこと、丸め込まれちゃったなぁ。やっぱり、向こうが断然に上手だわ。」

門を出たところで、シャルロッテが溜息をついた。


「私を監視するつもりなんですよね、学校側は。シャルロッテさんを、巻き込んでしまって……。」

「あ、違うって。非常勤講師の話は以前からあったのよ。でも、……先生って柄じゃないから、私。」

「アンジェリド先生、厳しそうですよね。」

「それは否定しない。でも、エリーチェちゃんが本気で錬金術を学ぶのであれば、適任者だと思う。まぁ、覚悟はしといて。」


ソフ海老どころではなくなり、私たちは、さっさと工房に帰ることにした。


シャルロッテの工房の調合室に入るのは、今日が初めてだ。

「今までは、危険なものも置いてあるから、入室禁止にしてたけど。こうなった以上は、ここも、使い方を覚えてもらうよ。」


「まず、服装ね。燃えやすい材質のものは禁止。ヒラヒラしてたり、動きずらいもの、あと、肌の露出が多いものもダメ。調合時には、調合服って呼ばれてる服に着替えてもらうのが一番なんだけど、今、余分なのが無いんだよね。」

シャルロッテは、私用の調合服が届くのに、最低でも1週間かかると言った。

「ここで使うのと、洗濯の関係で予備が1枚は欲しいかな。あと、学校へ持っていくのも要るから、とりあえずは3枚、注文するね。」

注文票を封書鳥で飛ばす。


「封書鳥用の登録印も、秘書の業務に必要ですよね。シャルロッテさん、かかった費用、全部まとめて下さいね。時間はかかると思いますが、絶対、お返ししますから。」


借金がどんどん膨らんでる感じだよ。調合服、高価いんだろうな。


「今日は、燃えにくい材質のエプロンを付けてもらうね。で、手袋はこれ使って。素手で材料を扱うのも禁止だからね。それと、ゴーグルも付けて。」


手袋もゴーグルも、特殊なのだよね。さらに、借金追加なり。


「最初の課題は、回復水と解毒水の調合だね。じゃあ、初級教科書を開いて、それぞれの材料について調べて。」


初級教科書の最初の方は、属性についての説明など総論的な内容が書かれていて、具体的な調合については第3章『調合の初歩』からだった。

「回復水の調合に必要な材料は、リュウゼル湖水、ウサギ草、触媒剤です。解毒水の方は、精製水、リッカ吸収炭、触媒剤です。」


「リュウゼル湖水は、リュウゼル湖で採取できる材料なんだけど、属性は水属性。通常は、新入生が最初の採取実習でリュウゼル湖まで実際に行って、採取してくるんだ。けど、時間が無いので、調合室のものを使います。」

調合室には、台所や風呂場、トイレにあるのと同じような大きな瓶が7つあった。


「この瓶は、オケアノスの瓶という道具です。水属性の材料は、液体の状態のものが多く、はっきり言えば、重いのよ。そう何回も採取に行ってられないんで、利用頻度が多いものは、この瓶に自動的に溜まるようにしてあるの。」

「台所と風呂場とトイレにも、これと同じような瓶がありますよね。」

「台所の瓶には井戸水、風呂場の瓶にはツサク温泉水、トイレの瓶にはランスベルク銀鉱水が溜まるようになってるんだ。」


全部、違う水が入ってるんだ。覚えないと。


「で、リュウゼル湖水はこの瓶、精製水は隣の瓶に溜まるようになってます。」


材料採取は、今回、省くんですね。アンジェリド先生にズルをしたと怒られたり……は、しないですか?


「次に、ウサギ草ですが、木属性の材料です。これは南の森にたくさん生えています。というわけで、採取に行くね。」

「今からですか?」

「もちろんだよ。」


私は、初めての材料採取に出ることになった。

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