調合16
ギルド登録が完了し、私は登録証を手に入れた。登録証は、金属製のプレートで、こちらの文字で『エリーチェ=コー』と記されている。そして、小さな石が嵌め込まれていた。
失くさないようにしないと。
私たちは、帰り道をやや速足で歩いた。昼食を作るのにまだ慣れていない私が、今日の担当なのだ。
円形広場から工房の方へ向かう道に入り、もう少しというところで、1人の男に声をかけられた。
「やぁ。」
「なっ、ル。」
「君がロティの家に来た子だね。エルリッヒだ。エルって呼んでくれ。」
どうも、シャルロッテとは顔なじみのようである。
服装は先程の野菜を売っていた農家の人たちのものによく似ていたが、肌はつるっと女の子みたいにきれいで、サラッとした褐色の髪も爽やかな感じだ。
「こんなところで、っていうか、待って下さるのではなかったのですか? 本人の意向を尊重すると聞いていますけど。」
「だから、正式な面会は、まだ行わないことにした。」
「とりあえず、工房まで来ていただけますか? ここではちょっと……。」
シャルロッテは周囲を見回し、少し声を落としてエルリッヒに同行を求めた。
「お忍びは、やめることにされたのではなかったのですか?」
「そのようなことは、言ってない。私にも少しは息抜きが必要なのだ。誰にでも息抜きは必要だと言ったのは、其方ではないか。」
「……。やっぱり大変なのですか?」
「本当なら、私が責を負うはずではなかったの……。否、もう、これは言わぬことに決めたのだった。すまぬ。ロティに無様なところを見せるのに、少し慣れ過ぎた。」
「それは、お互い様というか……。」
工房に戻ってから、2人は、私の存在など無いかのように話し出した。
そこで、私は、台所へ行き、昼食を作り始めた。初めてということもあり、やや難易度の高そうな竈の使用は諦めて、コンロを使うことにした。
買ってきた食材を確かめる。
まず、お店の人がマルネギと呼んでいた玉ねぎのような野菜を取り出す。それからキャベ人参。
マルネギをくし形に、キャベ人参をいちょう切りにする。
ベーコンを出して、ひとくち大に切る。
そして、3つあるコンロのうち、1つの中央にニトロン岩を1つ置く。着火器で火を点けて、鍋を置き、油を引いて、ベーコン、ソフ海老を軽く炒め、切った野菜も投入、そして水を入れて蓋をした。
で……、ワイバーンのもも肉である。
鶏肉っぽい?
私は意を決して、ワイバーンのもも肉を大きめのひとくち大に切り分けた。塩を振り、軽めに小麦粉に似た粉をまぶした。
鍋を置いたのとは別のコンロの中央にニトロン岩を1つ置き、着火器で火を点けた。フライパンを乗せ、油を馴染ませてから、肉を並べていく。そして、いい感じに焼き目が付いてきたところで、ひっくりかえした。
野菜を買った時に、おまけで入れてもらった藁シメジというキノコの汚れを軽く拭き取り、手でちぎりながら、フライパンに投入。
このキノコは踊らない……はずだ。
蓋をして軽く蒸し焼きにし、味見をして、塩で整える。これで、1品完成。
ワイバーン肉と藁シメジのソテーでいいかな?
鍋の方も煮立ってきたので、灰汁を取り、塩で味を調える。
それから、カイザー芋の皮を剥き、薄いいちょう切りにする。マルネギの残りも同じくいちょう切り。
両方の野菜に油を馴染ませて、フライパンに投入し、炒める。軽く色付いてきたところで、ボウルに卵を割り入れて溶く。そして、炒めた野菜を入れて混ぜた。塩を少し入れる。
そして、フライパンに油を引きなおし、ドバっと野菜入りの卵を流し入れた。蓋をして蒸し焼きにし、丸い形の卵焼きができたところで、お皿を使ってひっくり返す。焼き目が付いたところで、完成だ。
これ、どうやって火を消したらいいんだろ。ニトロン岩はまだ燃えている。
これ以上加熱すると焦げてしまうので、鍋もフライパンも外しているが、自然に火が消えるまで待つわけにもいかない。
悩んでいたところに、シャルロッテが来た。
「おいしそうな匂い。あぁ、おなかすいた~。」
「これ、どうやって火を消したらいいんですか? フライパンの位置とか高さとか変える以外に、火の調節ってどうすればよかったんでしょうか?」
「あ。ここのつまみを左右に動かすと空気の取り入れ口の大きさが変わるのよ。で、このボタンを押すと、火が消えるの。」
先にちゃんと聞いておくんだった。




