調合14
入学試験の翌朝、私は、シャルロッテに、自分にできそうな仕事が何かないか、相談することにした。
朝食をいただきながら、思い切って、言葉にする。
「シャルロッテさん、私、何か仕事をしたいです。」
「あぁ、試験が終わったら食事当番を決めるって話だったね。」
「そ、それもなんですが、いつまでも御厄介になるわけにはいかないので……。」
シャルロッテは、少し考えている様子だったが、「うちで働けば?」と、言った。
「まだ単語が少し書ける程度でしょ。会話はできるし、書かれた文字は読める。計算も結構できそうだけど、作文が出来ないと事務仕事は無理だよ。」
「そうですね。」
「料理はできるんだっけ?」
「できるというほどではないです。そもそも、この世界の食材が分からないですし、道具も。私の元の生活では竈は使わなかったので、使い方を教わらないと……。」
「得意なことって何かある?」
「…………。私、何もできないんですね。」
朝から、更に落ち込みそうだ。
「よし、朝食が終わったら、まず、台所で、竈の使い方を覚えてもらいましょう。」
シャルロッテは、朝の予定を決めてしまうと、残りのパンを満足そうに食べた。
朝食を終えてから、台所に、使った食器をトレーに載せて運ぶ。
台所には、竈と、煮炊きが出来るコンロのようなものがある。
このコンロの方も使い方を教わらないといけない。
洗い場には水道の蛇口は無く、隣に水を貯める大きな瓶があるのだが、どこからか水を汲んできて貯めているわけではなかった。瓶の中に、自動的に水が溜まるのだ。これも錬金術で作り出されたものだという。
ちなみに、この自動的に水が溜まる瓶は、大きさは違うが、風呂場とトイレにもある。風呂場の方の瓶にはツサク温泉水というお湯が溜まる。
私たちは、食器類を洗って片付けた。
「さてと、まずは竈だね。」
レンガ造りの竈の前に立ち、竈の蓋を開ける。
「まず、ニトロン岩を中に並べます。そして着火器で火を点けます。」
ニトロン岩は錬金術の材料の1つとして教わっていた。着火器は日本で使われていた点火棒のようなものだ。
「竈の蓋を閉じて、温度が上がるのを待ちます。大体、30分ぐらいでパンが焼ける温度になるよ。中の温度は、ここに温度計が付いてるから見てね。」
竈の前面の右上のところに小さな丸いものが付いていた。
あれ、温度計なのか。
「どうやって見るんですか?」
ちゃんと確認しておかないと。
「100度になるとオレンジ色に、150度になると赤色に、200度になると黄色に、250度になると白色に、300度になると青色に変わります。」
色で温度が示されるらしい。
「いい温度になったら蓋を開けて、棒でニトロン岩を端っこの方へ寄せて、真ん中に食材を入れる場所を作ります。そして食材を入れます。」
なるほど、ピザ屋さんの石窯みたいな感じだね。
ケーキもこれで焼けるのかな。電気オーブンと違って温度の調節が難しいそうだ。
コンロの方も使い方を教えてもらう。
「この真ん中のところに、ニトロン岩を1つ置きます。そして着火器で火を点けて、鍋やフライパンをのせて使います。」
ニトロン岩、大活躍じゃん。
「ニトロン岩は火を近づけると燃える性質があるの。北のウォランジ山で採取できるんだけど、エリーチェちゃんも採取に行けるようになったら一緒に行こうね。」
そうだったのか。竈の使い方を早く教えてもらっておけばよかった。
ウォランジ山、北にあったんだ。
私は、全くできなかった【問2】を思い出し、溜息をついた。




