表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/87

調合10

「では、始めましょう。まぁ、入学試験まで2週間しかないので、最低限の詰込みになりそうなんだけど……。」


そういうことである。

アルランメディエ王国で使われている文字は、元の世界では見たことがない文字だったが、書かれている内容はなぜか理解できる。そして、会話も通じる。しかし、書くことができない、ということが分かった。文法と単語の綴りがまったく分からないのだ。


基本文字は、アルファベットなどと同じ表音文字であった。数字と基本文字を覚え、最低限の単語を覚えることを目標とする。問題文は理解できるのだから、錬金術に必要な単語だけを可能な限り覚えて、書けるだけ書くという作戦だ。


時間無さ過ぎ。ほぼ、負け戦だな、こりゃ。まぁ、余計なことを考えても、仕方ない。


「錬金術は、簡単に言うと、材料を組み合わせて調合する技術なの。その調合に重要な要素が属性と呼ばれる性質です。」

シャルロッテは、そう言って、私のノートに単語を書き並べる。


「錬金術、材料、調合、属性、あぁ、書かれた文字は読めますね。」

どうしてこうなったのか不明だが、字が読め、理解できるだけでもありがたい。


「属性には火属性、水属性、木属性、風属性、土属性、無属性があり、それぞれの属性は色で表現されます。赤、青、緑、白、黄、黒の6色です。」

シャルロッテは、次に色を表す単語を、並べて書いてくれた。


「同じ属性のもの同士、相性の良いもの同士での調合は可能ですが、相性の悪い組み合わせ、火属性と水属性では調合はできません。」


シャルロッテは、確か、金の調合に成功したと言っていた。

そう、私の知っている『錬金術』と、こちらの世界の『錬金術』は別物なのだ。


私の知っている『錬金術』は、化学的手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精錬しようとする試みで、言ってみれば、未発達な化学だ。そして、卑金属から金を精錬することはできなかった。だって、元素が違うのだから。つまり前提が間違っていて、失敗した化学とも言える。

元素を別の元素に変える、つまり新しい元素を作ることは、通常の化学実験レベルでは無理なはずだ。

原子炉とかが必要なんじゃなかったっけ? 原子核に荷電粒子をぶつけるとか、そんな話がどっかに書いてあったなぁ。


「これらの属性を考慮して材料を組み合わせ、魔方陣により力を発動させ、調合を成立させます。」


魔方陣……。

妖精さんが存在するんだもん。魔方陣だってありだね。

あ、封書鳥だっけ? あれこそファンタジーな感じだったよね。教えてもらうの忘れてたけど。


「それぞれの属性の材料で、初級の頃から使われるものも、覚えておいた方がいいかもしれないね。え~と。」

材料の名前の単語も並べて書いていく。


「とりあえず、今日はここまで。文法が分からないみたいだから、文章として回答するのはもう諦めよう。その代わり、要点は理解してますよの表明として単語は間違えられないからね。しっかり覚えてね。」

シャルロッテは、勝算ありと見ているのか、それとも、やはり玉砕決定と見ているのか、さっさと初日分を終了としてしまった。


私は、明日までに今日習った単語を覚えるべく、その後の時間を、ひたすら単語を書いて過ごしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ