調合9
結局、私は、しばらくの間、シャルロッテの工房に居候することになった。日本に帰れないなら、帰れないで、こちらの世界で生活できるようにしなければならない。国王の賓客として、生活は保障されるような雰囲気だが、お偉いさんとの距離はあまり近くない方がいい。如何せん、礼儀作法的に自信が無い。
シャルロッテは、何気に、程よく、こちらの世界のお偉いさんと親しい様子だ。一方、本人は、堅苦しさは皆無で、明るく親切。彼女とならば、うまく付き合えそうな気がする。
まぁ、火薬姫っていうのが、気になるんだけど、本当にマズい人なら、それこそ王城騎士団の方々が放置しないでしょ。
錬金術師養成学校から帰る際、ふと思いついて、コーネルとアンジェリドに、希望すれば、私が錬金術を学ぶことができるか尋ねたところ、募集要項の書類が手渡された。今年の入学試験は2週間後。出願手続きは、既に締め切られた後だったが、特例で、受験は認めるという。が、最低基準を満たさないと合格にはできないと言われた。
募集要項の書類は、こちらの文字で書かれているのだが、なぜだか、内容が理解できた。
シャルロッテと私とグランは、馬車で、工房近くまで送られることとなった。
中央の円形広場で、グランだけが馬車を降りる。
「これ、ほんとは、騎士団の詰め所で渡すつもりで準備したのだけど、持ってって。」
シャルロッテは、持ってきた籠を、グランに手渡した。
グランは、掛けられていた布を捲って中身を確認し、
「遠慮なく、貰っとく。皆で分けて食べるよ。」
と言った。中身は、おいしいものらしい。
「エリーチェちゃん、俺たち、力になるから。何ができるか、まだ分からないけど。」
グランは、手を振って、馬車から離れた。
「明日から、受験勉強だね。」
再び動き出した馬車の中で、シャルロッテに言われ、私は頷いた。
「あの、改めて、よろしくお願いします。あと、お薬頂いてたんですね。ありがとうございました。」
思い出して、礼を言う。
「や、まぁ、回復水なら、いっぱいあるし。私が作ってるから。」
「ごめんなさい。シャルロッテさん。迷惑ばっかりで……。」
「違うよ。この世界とは別の世界って、興味あるし。エリーチェちゃんが錬金術に興味を持ってくれたのも、嬉しいんだ。こちらこそ、よろしくね。」
シャルロッテは、にっこりと微笑んでくれた。




