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明日父の決めた相手と婚約する侯爵令嬢ですが、最後に憧れの公爵様とデートします!  作者: 千翔りさ
番外編

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8/8

兄とクリストフの関係

エマがクリストフをデートに誘いに来たときの、エマの兄とクリストフのやり取りを単話としてまとめました☆

兄の名前が初登場です(笑)

その日は僕にしては珍しく、仕事もつつがなく終了し、元々予定していた午後の休みのために、さっさとここを離れて家に帰ろうとしていたところだった。


荷物をまとめ、迎えの馬車が来ているかを確認しようとしたところ、部屋の扉が叩かれた。


「はい?」


「どうも。悪いな、午後休みのところ」


「なんだ、お前か…びっくりした。また面倒くさい仕事が降ってきたのかと思った」


遠慮なく開けられた扉の前には、僕の婚約者の兄であるノードが立っていた。


「おい、まだなんにも言ってないのに部屋に入るなって」


「お前にとっての緊急事態だよ。しかも、多分あんまり他の人に聞かれないほうがいい」


「はぁ?なんだそれ」


ノードはそう言いながら、執務室に遠慮なく入って来るやいなや、室内にある応接用のソファーにどかっと座り込んだ。


「…なにか飲む?」


「いらないいらない、急ぎだし。…用件だけ単刀直入に言う、エマがお前をデートに誘いに来た」


「…えっ、エマが?」


エマというのは、この男──ノードの妹であり、僕の婚約者でもあるエマ・グレゴリオのことだ。


エマとの出会いは彼女が生まれた頃まで遡る。


僕とノードの父親同士が古くからの友人で、その関係もあって、僕らも幼馴染のように育ってきた。


そんな中、ノードの妹として、エマが誕生した。


最初の頃は、赤ちゃんを見るのが初めてだった僕にとって、ふにゃふにゃしているだけの赤子は、得体のしれない小さな生き物だと思っていた。


けれど、成長するにつれて、エマは彼女の母親に似て美しく育ち、活発な性格なのに、頭も良くて、つまるところ、聡明で素敵な女性に成長した。


僕の名前を呼びながら、小さい足で必死に追いかけてくる彼女がかわいくて。…このふてぶてしい男と、なぜ血縁の関係があるのだろうと何度思ったことだろうか。


そして僕は、エマを他の男に取られたくない一心で、彼女の父親である侯爵に頼み込み、エマとの婚約にこぎつけた。


ちなみに、その時もこいつは

『エマなんて子供のどこが好きなんだ?なんかそういう趣味なのか?お前は』

とかふざけたことを言ってきたせいで、大喧嘩になったのを覚えている。


そんなエマが、僕に、デートのお誘いをしに来た。


これがなぜ緊急事態なのか。

それは、僕らの関係性にある。


婚約を申し込んだときにノードと喧嘩をした際、さすがに僕も、彼女が小さいのに未来を縛り付けるのは良くないのではないかと、こいつの考えに一理あると思った。


だから、彼女にはまだ、婚約の話を伝えていないのだ。


そして、こいつの話のよると、エマとエマの父親とのすれ違いによって、彼女は明日、僕ではない見知らぬ男と婚約をすると思い込んでいるらしい。


「エマは、僕が婚約相手だって気付いたってこと?」


「いや、気付いてない。明日、どこぞの知らない男と婚約するから、今日最後に大好きなクリストフ様とデートして一生の思い出にする!!って意気込んでた」


「反応に困るな…」


かわいい。可愛いけど複雑だ。

婚約するの僕だし。

婚約のことを、エマにだけ秘密にしているみたいなのも正直嫌だ。

…元をたどると、僕のせいではあるけれど。


「…まぁ、どうせ今日は、エマと住む家に飾る絵画を買いにいく予定だったしな」


小さくため息を吐いて、ラックにかけていたコートを手に取る。


「せっかくのお誘いだから、デートはぜひエスコートさせてもらおうかな」


「じゃあそのままうちの馬車の方に向かってくれ、エマが乗ってるから」


「ノードはどうするんだよ」


「そっちの馬車に乗って家に帰る。適当なタイミングで迎えに行くように伝えておくから任せろ」


「人の家の馬車を勝手に自分のもののように使うな」


呆れた顔をした僕に、こいつはまたニヤニヤとした顔を向けてきた。


「でもお前、エマとデートできるって内心嬉しいだろ?俺のおかげ──っうわ!バカ、危な!クッション投げるな!」


「断じてお前のおかげではない。くそ、エマの兄じゃなかったら、絶対に縁を切ってたのに…」


投げたクッションを拾いながら、精一杯の呆れた顔を向ける。


「それは良かった。俺はクリスのこと結構好きだからな。エマの兄であることに初めて感謝したよ」


「おい、気持ち悪いことを言うな。お前に好きとか言われても嬉しくない」


「俺も自分で言っていてなんだが、ちょっと寒気がした」


思わず二人で顔を合わせて呆れ笑いをする。

本当にどこが兄弟なんだ。

似てなさすぎるだろう、主に性格が。


そんなことを考えながら、可愛い婚約者の夢を叶えるために、エマの馬車へと足を進めた。


…できることなら、今日こそ、本当の事を伝えるために。


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