4.愛しい誰か
レストランで食事をし、お店を出る頃には、既に周囲は夜の闇に飲み込まれようとしていた。
街頭の光る大通りを歩いていると、クリストフ様が思い出したかのように口を開いた。
「そうだ、今の時間でも開いてるアクセサリー屋さんがあるらしいんだ。せっかくだし、行ってみない?」
「行きたいです!」
思わず即答してしまう。
そんな私を見て、楽しそうなクリストフ様に案内されたお店は、その言葉通り暗くなりかけた街の中でも明るく賑わっており、店内では若い女の子達がみんな楽しそうにアクセサリーを眺めていた。
「クリストフ様も中に入られますか?」
「…いや、僕みたいな大男がいたら邪魔かもしれないから、外にいるよ」
「そんなことはないと思いますが…では、私だけ少し見てきますね」
「ゆっくり見ておいで、ほしいものがあったら言うんだよ」
「そんな、お金だけみたいな言い方はやめてください!」
いたずらっぽい笑顔を浮かべ冗談を言いながら手を降るクリストフ様を尻目に、私は店内に足を踏み入れた。
実は、こういったお店に一人で買い物に来たことはない。
いつもは母や侍女など、誰かと買い物に来ることが多かったため、一人でのお買い物という、新しい経験に少しワクワクした気持ちのまま店内をフラフラと見ていたところ、一つの商品が目に留まった。
「これ…」
思わず足を止めてじっと見つめていると、店員に声をかけられる。
「そちら、気になりますか?」
「あ…はい。これ、男性用のカフスでしょうか?」
「そうなんです!うちのお店な女性向けのお品が多いんですが、こちらは、このイヤリングと対になった男性向けのデザインになっており、プレゼントにぴったりなんですよ」
「対に…素敵、ですね」
思わず、イヤリングとカフスを手に取り並べ、光に当てながら見つめる。
細かなデザインに光が反射して、とても素敵だった。
「外にいらっしゃるのは恋人様ですか?」
「え!?」
「よろしければお二人でいかがですか?もうこちらがラスト一点なんです!」
「いえ、あのですね」
「イヤリングのカラーもお客様の髪色に馴染んでおりますし、こちらもきっと、恋人様に似合うかと思います!」
「あ、でも…」
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(買ってしまった…!!!)
完全に圧に負けた。
気がついたときにはご丁寧にラッピングまでされていた。
しかもカフスは私の髪色、イヤリングはクリストフ様の目の色なのだ。
お互いのカラーのはいったアクセサリーなんて、女の子の憧れだし、私も当然その一人だ。
(…クリストフ様、貰ってくれるかしら)
ラッピングされた袋を見つめながら、少し緩む頬を必死に保つ。
そんなことを考えながら、どこかそわそわした気持ちでクリストフ様の待つ場所に戻ろうとしたその時だった。
クリストフ様の綺麗な髪が見えたその横に、見知らぬ女性が立っていた。
思わず反射的に壁に隠れてしまう。
(クリストフ様と、キレイな女性…?)
「…だからね。…そう、うん。」
「……なのよ!もう、本当に……」
「……わかった、とりあえずまた…にしてくれる?」
「うん、また。………も…しくね?」
二人から距離のある位置のため、なんの話をしているのかは聞こえなかった。
ただ、きっと、親しい中、なのだろう。
(あの人が、一緒に住むお相手なのかしら)
胸の奥がずきりと痛む。
そうだった。
クリストフ様は、もうすぐ自分の家を買い、愛しい誰かと一緒に住むのだ。
絵画を選ぶならまだしも、こんなプレゼント…ましてや対デザインのアクセサリーなんて、大迷惑だろう。
キレイにラッピングされたプレゼントを見つめ、零れ落ちそうな涙を必死にこらえた。
プレゼントがバレないようにそっと隠し、女性が立ち去ったのを見届けてから、平然を装ってクリストフ様のもとへと戻った。
長くなってしまったので2話に分割します。
残り3から4話程です.*(。•◡•。)




