204 上位種は思った以上に頑丈だった
可変型ゴーレムアーマーのグリフォンゼロで巨大化グールの残り2体を始末しに飛んで来た。
ちなみにグリフォンゼロの型式番号はGAX-T01だ。
可変機だから分類できるようにした方がいいだろうってことでナンバーの前にTをつけている。
ゼロなのに1とはこれ如何に、というツッコミが聞こえてきそうだな。
量産のベース機にはならないのでネーミングにゼロを入れた一方で将来的に量産する予定なので試作1号機としてナンバーをつけた訳だ。
別の言い方をするならプロトタイプなんだが語感の良さを優先した。
可変機にしたせいでサイズは人の身長の3倍程度になってしまったけど現状ではこのサイズに抑えるのが限界だったんだよね。
標準装備は魔法銃とビームソードで飛行形体時はビームソードも射撃武器のビームガンになる。
空から一方的に攻撃できればと思っているんだけど、果たしてどうなるかな。
「いたいた。残敵を発見!」
魔法の霧は俺が飛び立つと同時に解除したので現在の視界はクリアだ。
森の木々が遮蔽しているので何もかもが見えるという訳ではないが。
「すっかり簀巻き状態だな」
2体とも全身をGタイラントスパイダーであるアディの粘着糸でグルグル巻きにされて首から上だけが外気に触れているような状態だ。
なぎ倒された木の一部が張り付いて骨折を応急手当てする際の添え木のようになっているため身動きも満足にできないようだ。
「じゃあ、まずはポーション投下!」
ストレージから引っ張り出したポーション樽を上空から次々に落としていく。
勿体ないとか贅沢だと非難を浴びるかもだけど躊躇はしなかった。
コイツらがラストということもあるけど、他の巨大化グールよりも強力な上位種であることを考慮してのことだ。
投下した樽をビームガンで破壊していき中身のポーションを空中でぶちまける。
いい塩梅に振りまかれて奴らの全身よりも広い範囲を水浸しならぬポーション浸しにした。
ポーションがかかった2体に大きな変化はない。
何の痛痒も感じていないのだから当然か。
問題はここからだ。
少なくとも1体は上位種なのでポーションの効きがさらに悪くなる恐れがある。
上空でグリフォンゼロを旋回させながら様子を見る。
片方は他の巨大化グールとさほど変わらない感じで溶け始めた。
だが、上位種の方は様相が異なる。
「溶けて……ない?」
これは厄介なことになったぞ。
弱点のひとつが完全に潰されたことになるからだ。
無線のスイッチをオンにする。
「こちらシド」
『アルブレヒトだ。何があった』
「上位種であると目されている巨大化グールにポーションが効きません」
『なんだとっ!?』
驚愕の声を発する父アルブレヒトだが、それも無理はないか。
『危険だ。引き返せ!』
「これを放置する方が危険ですよ。何しでかすやら分かりゃしない」
『そうは言うがな──』
「そもそもポーションが効いてないってだけです」
なおも説教くさいことを言い募る気配を感じたので言葉を重ねてシャットアウトした。
「奴は身動き取れないんだしまだ慌てる時間じゃないでしょう」
そのあたり、もう少し冷静になれないものかね。
ホント親馬鹿なんだから。
俺も何度かは親になったことがあるから気持ちは分からなくもないのだけどね。
こういう会話をしている間にも機体を上昇させてからの急降下で攻撃態勢に入る。
目標は上位種の頭部。
照準が合ったところで引き金を引けば、バルカンモードに変更したビームガンが発射される。
次々と命中していくものの風穴が開く様子は見受けられない。
毛を失った頭が反射をしているとでも言うのかなどと下らないことを考えてしまったのは内緒だ。
大体、反射しているなら跳弾がそこら中に被害をもたらしているはずだが、そういうこともなかった。
まさか吸収しているのかとさえ思えるほど何もない。
念のためにビームガンでの攻撃を中止して上昇に転じ高度を確保する。
その上でガンカメラの映像を拡大して再生。
本当はうつ伏せになった小太りなオッサンの毛を失った後頭部なんて見たくないのだけど、これも仕事だ。
割り切って流れる映像を観察するのみ。
で、見れば見るほど不可解な現象が起こっていた。
反射と思ったのはあながち間違いではないかもしれない。
命中した直後にビームが弾けて一気に減衰しながら四方八方に飛び散っているのだ。
まるで硬い石の上に水滴を垂らしたかのように。
何らかの魔法的な防御をしているのか。
それとも単なる石頭なのか。
巨大化と度重なる強化によって防御力が倍増したと考えれば後者の説もないとは言えない。
そこまでビームガンの出力が低いとは思えないんだけどな。
そうなると前者の説が有力か。
これはこれで色々と疑問が湧き上がってくるのだけど。
通常であれば後頭部へ着弾する前に魔法的な防御が発動しているはず。
じかに当たる状態で防御を展開するのは安全マージンがないので賢いやり方とは言えないはずなんだが。
これでは次の手を打ちづらくなる。
ダメージを与えるどころか攻撃を受けることで魔力を吸収しパワーアップする恐れが出てきたからだ。
およそ荒唐無稽と言わざるを得ないのだけど、魔法を弾く後頭部を見せられた後だと強く否定できない。
ビームがダメなら物理で殴るしかあるまい。
こういう時にデアリングベアであれば突撃して大型ナイフで斬りつけているところなのだが、グリフォンゼロの近接武装はビームソードだ。
ビームガンと同じ結果になりそうで、おいそれと試せないんだよなぁ。
武器がないなら拳で殴れと言われそうだけど、それができれば躊躇などしていない。
変形と飛行の両方を実現させるため機体の強度には少しばかり目を瞑っているというか妥協しているのだ。
故に近接武装も機体に負担の少ないビームソードなのである。
グリフォンゼロのスピードと飛行能力は敵に対する大きなアドバンテージになるが、同時に脆弱性と非力さを合わせ持ってしまった。
軽量化するためにやったあれこれが今回に限って言えば裏目に出てしまっている。
サイズを小さくしたのも、そのひとつ。
飛ぶ際の魔力消費は減ったけれども、こうして実戦投入するとやり過ぎたのがよく分かる。
それでも自分の専用機なら魔力をふんだんに使ってゴリ押しで強度を上げる手もあるのだけれど。
ただ、いま搭乗しているのは量産機のベースになる試作機だ。
量産型は魔力の総量が豊富とは言えない者が搭乗することもあるため搭載する魔石の量も必然的に多くなる。
しかも空を飛ぶためにも魔力は必要になる訳で。
結果的に他の部分にシワ寄せが行った結果が現状である。
それを嘆いたところで事態は何も好転しない。
行動あるのみだ。
物理がダメなら物理を魔法で作り出す。
岩か氷を奴の頭上に形成して落下させればさすがに潰せるでしょ。
念のため地面も凍らせて確実にプレスできるようにすれば仕留め損なうこともないはず。
「んじゃあ、頭を潰すとしますかね」
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