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178 説明するのも楽じゃない

 さすドラの後だと何を聞かれても大したことじゃない。

 色々と驚かれはしたけど誤魔化しのきく範囲だったので些細な問題だと思うことにしておく。

 でないと胃によろしくないからね。


 そんなこんなで延々と続く質問に答え続けることしばし。

 この世界に時計があったならどれだけ経過していただろうね。

 さすがにヘロヘロになってきた。

 体力的には問題ナッシングでも気疲れからくる消耗には抗いようもない。


「そのくらいにしておきましょう」


 レイチェル殿下がそう言って止めてくれなかったらどうなっていたことやら。

 さすがの辺境伯たちも殿下の御言葉を無視することはできないようで引き下がってくれた。


「そういう細々したことは口頭で聞くよりも書類で見た方が良いのではなくて?」


 ちょっと待てぇーい!

 その書類を作るのは誰なんでしょうね?

 普通に手書きなんかした日には日単位で時間が潰れるんですが?


 まあ、間違ってもこの世界標準の手作業ではやらないけどさ。

 タブレット型の魔道具を作っておいて連動する入出力装置を用意しない訳がないのだ。

 音声入力で文書を作成しつつキーボードで修正してプリンターで紙に打ち出す。

 プリンターにはサイズのそろった普通紙が必要になるけど、そこも製紙機をゴーレムの技術で作成するので問題ない。


 それでも面倒なことに変わりはないのだけど。

 余計な仕事は増やさないでもらいたいよ、まったく。


「しかし、由々しき事態だな。まさか殿下以外の王族がすべて消えてしまうとは」


 フォレー辺境伯が渋面を浮かべている。


「あんな連中のことなど、どうでも良いわ」


 フンと鼻を鳴らしたタルネー辺境伯も渋い顔をしているが、それぞれ別のものに対する感情の表出であるのは言うまでもあるまい。


「おい、不敬だぞ」


「なんと言われようと敬う気のない相手に払う敬意などないわ」


 とがめられても一向に気にする様子を見せないタルネー辺境伯に表情をさらに渋くさせるフォレー辺境伯である。


「お主とて連中に敬意など抱いておらんかっただろう」


「口を慎め。殿下の前だぞ」


「今更よな。レイチェル殿下には悪いがワシは王族の前でもこれで通してきたからな」


 おお、すげえな。ブレないオッサンだ。

 頑固者ぞろいだと言われるドワーフなだけはある。

 こういう態度が許されてきたのは国内の武器生産を一手に担ってきたことと軍事力で他国の侵略を防いできた実績があるからだろう。


 あと、あんなことを言っている割に殿下にはわきまえた言動をしているので敬意を払うに値する人物かを見極めて態度を変えているみたいだね。

 でなきゃ護衛のオリビアが静かにしているはずがない。

 なんにせよ地位だけで人を判断しないのは好感が持てる。

 敵も多そうだけどね。


「良いのです。身内のこととはいえ褒められるような者がいなかったのは事実ですから」


 とまで言われてしまうとフォレー辺境伯も引き下がるしかないようだ。


「しかし、本当に王城がもぬけの殻になっておるのか?」


 自分の目で確認していないと疑念を抱くのも無理からぬこと。

 そんなのは百も承知なので準備していましたよ。


「それでは御覧いただきましょうか。はい、ドン!」


 ストレージの魔法を使い亜空間から大型モニターを引っ張り出す。

 影から引っ張り出したように見せかけるのも忘れてはいない。

 それでもフォレー辺境伯には驚かれてあれやこれやと質問攻めにあいそうになったけれど、そこは笑顔でスルーさせていただいた。

 タルネー辺境伯のように「便利よな」の一言で終わらせてくれれば楽なんだけど。


 こういう所は魔法に強い関心を持つエルフと使えるものは何でも気にせず使うドワーフの気質の差が出るみたいだ。

 これが酒の話になったりすると、まったく逆の状態になるらしいので気をつけないといけない。

 要は種族特性みたいなものってことだな。


「でもって、これが偵察用のゴーレムを使った現在の王城です」


 スマホ型魔道具のリモコンアプリを使って受信した映像を表示させた。

 それだけで「おおっ!?」とか「なんと!?」みたいな驚きの声が次々と沸き起こる。

 両辺境伯だけじゃなく従者たちもこらえきれなかったみたい。

 こっちの世界じゃ遠隔地の映像がリアルタイムで流れれば無理もないのか。


「こんな魔道具があるとはのう」


「いつの間にこんなものが……」


「あー、そういう話は後にしてくださいね。今はドローンが送ってくる映像を確認していただければ」


「「どろーん?」」


 両辺境伯がハモっているな。


「偵察用ゴーレムのことをそう呼んでいます。お二方であれば見覚えのある場所だと思うのですが」


「確かに王城のようだが、これは……」


「見事に人がおらんな。わずかにスケルトンはおるようだが」


「しかし、これが事実かどうかを判断する材料がないな」


「そんなものは必要なかろう。アルの息子が見せたものということで充分だ」


「それのどこが充分なんだ」


「忘れたのか、リーアルよ。アルたちはワシらに助力を求めてきたのだぞ。こんなことで信用を失えばどうなるかくらい分からぬはずがあるまい」


「そういうことか」


「もし偽りであったなら、その時に考えれば良いのだ」


「確かに」


 一応は信用してもらえたと思っていいのかな。


「シド少年、他の場所は見られぬのか」


 そう聞いてきたのはタルネー辺境伯だ。


「シドでいいですよ、シューバ様。そうですね。いま自領以外で他に確認できるのは隣領だけです」


「少なくないか?」


 疑問を呈したのはフォレー辺境伯であった。


「他の地域まで把握するのは結構大変ですからね」


「そうなのか?」


 今ひとつピンときていないみたいだな。


「この画像を御覧になれば分かると思いますが、ドローンを多数使っているんですよね」


「ふむ、なるほどのう。貴重な魔道具を簡単には増やせぬか」


 タルネー辺境伯が誤解したみたいだね。

 ドローンはさほど貴重でもないんだよな。

 他の人はどうか分からないけど俺にとっては作るのが難しいということもないし。

 まあ、誤解を解いて説明するのも手間がかかりそうだし今は訂正しない。


「数が多いと情報を把握するのも大変なんですよね」


「まさか……、すべて1人で確認しているのか」


 フォレー辺境伯もなんだか妙な誤解をしてくれている。


「まさか。そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りませんよ」


「そ、そうだな」


「細かい説明は省きますがゴーレムの技術を駆使することで古い情報を確認したり条件付けた情報をピックアップしたりできるんです。ゴーレムに報告を上げさせれば楽ですよ」


 普通に端折って説明しただけなのに両辺境伯に絶句されてしまった。

 解せぬ。


「あー、2人とも、これがシドの平常運転だ。いちいち驚いていたら切りがないぞ」


 固まっている両名に対し父が苦笑しながら助言する。

 俺のフォローをしてくれたのは分かるんだけど何気にディスられてね?


 この調子だと抗議してもまともに取り合ってもらえそうにないしスルー推奨か。

 甚だ不本意ではあるのだけど。


「とりあえず話を進めましょうか」


 レイチェル殿下が促してくれたことで仕切り直した格好になったのは正直なところ助かった。

 辺境伯たちも何か聞きたそうな様子だったけど話を聞く体勢になってくれたし俺も気持ちの切り替えができたからね。


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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