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124 問題を解決しても予定通りに進められるとは限らない

 そんなこんなで発魔機を作成しましたよっと。

 中身はともかく外見はまんまモーターだ。

 サイズは大型バイクのエンジンくらいはあるのでゴツいと言わざるを得ないけれど。


 これを空を飛ぶ試作機に積み込んだ場合、国を横断するくらいは余裕で飛べるだけの魔力を供給できるだろう。

 無人島まで飛ぶにはまるで足りないけど試作機にそこまで求めるのは違うよね。

 それに、あんまりぶっ飛んだ性能にしてしまうと父や姉はともかく殿下たちが卒倒しかねない。


「こんなもので本当に魔力が増幅できるのか?」


 タッちゃんが発魔機の周囲をグルグル回るように飛びながら聞いてきた。


「稼働させれば分かるよ」


「どうすれば良いのだ?」


「中央の軸の部分を回すんだ」


 見た目がまんまなだけあって使い方もモーターと同じだ。

 回転させると発生するのが電気ではなく魔力という点が大きく異なるけど。

 魔石って高速回転させると何故か魔力が増幅されるんだよな。

 魔物の体内を血液のように循環している状態に近いからみたい。


「ほう。こうか?」


 触れた訳でもないのに発魔機の軸が回転し始めた。

 特級魔法のサイコキネシスを使ったな。


「おおっ! ほとんど感じなかった魔力があふれてくるようだぞ。これは面白い」


 初日はこんなものでいいか。

 あまり早く完成させてしまうと進捗状況を見に来られた際に面倒なことになりかねないからね。


「あ」


 面倒なことで思い出した。

 というより気がついたと言うべきか。


「どうしたのだ?」


「ひとつ問題がある」


「問題とな?」


「空飛ぶ輸送機を作る場所だよ。デカいから今までのようにはいかないんだ」


「場所なら外にいくらでもあるであろう」


「作っている過程を見せたくないんだよ」


「意味が分からぬ」


 俺は頭を抱えたくなっているのにタッちゃんは呆れている。


「いや、だって1週間も必要ないってバレるのはヤバいだろ」


「早いのがダメなのか?」


「1週間でも非常識扱いされたんだ。1日かからず仕上げられるって分かったら騒ぎになるどころじゃないって」


「人間は面倒じゃのう。その程度の日数ならば気にするほどの差ではなかろう」


「そんな訳ないだろぉっ」


「うるさいのう」


 俺の狼狽ぶりにタッちゃんはますます呆れてしまったらしく、溜め息までつかれてしまった。


「ならば地下に隠せば良いではないか。得意じゃろう?」


「あ」


 言われてみれば書庫の地下のことは未だに秘密にしているが誰にもバレていない。

 そりゃそうだ。出入りに空間ゲートの魔法を使うからね。

 偶然の侵入を許すことがないのは大きい。

 探知を阻害する結界も展開してあるから発見される恐れもない。

 タッちゃんには見せたけど秘密にしてもらっているし。


 ただ、今回の場合は最終的に披露しなければならないので製作完了まで発見されない出入り口が必要だ。

 それについては裏庭の林の奥に小さな小屋でも作ればいいか。

 いかにも前からありました的な偽装をしておけば建てた時期を誤魔化すのも難しくはあるまい。


 とはいえ完成した輸送機を外に出す方法も忘れてはいけない。

 ……そっちも、なんとかなかるか。

 要は何処かの国際的な救助隊や宇宙からやって来た警備隊のような感じにすればいいんだろ。

 えっ、趣味丸出しになりそう?

 俺もそう思うけど、そこは男のロマンというやつですよ。


「となると、あんまり悠長にはしていられないな」


 そんな訳で輸送機の試作だけでなく公開用の秘密基地まで作ることになってしまいましたとさ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 その後は大急ぎであれこれと物作りに励んでいましたとも。

 張り切った結果、約束の1日前にはお披露目可能な状態になっていた。

 仕様変更があったりして大変だったけどね。


 その日の朝も特に問題なく朝食を終えたのだけど昼時にイレギュラーが発生した。

 昼食の最中に姉がやって来たのだ。

 朝食時には父と一緒に来るのが日課になっているけど真っ昼間に訪れるとは珍しい。

 最近は特に領内の管理の仕事で大変だったからね。

 ガルフが書類仕事で無茶苦茶やってたツケが今頃になって追加で出てきたせいだ。


 もしかすると仕事に目途がついたから休憩がてらこちらに足が向いたのだろうか、などと最初は考えたのだけど。

 それにしては表情が晴れないというか重苦しさの感じられる雰囲気を漂わせている。

 今にして思えば朝食時からそんな感じはしていたような……

 その時は仕事のことで頭を悩ませているのかと思っていたのだけれど違ったみたいだね。


 どう考えても何かの厄介ごとが発生している。

 深刻な顔をして俺のところに来るくらいだからね。

 本人は愚痴りにくるだけのつもりかもしれないけど、俺にとっては協力要請みたいなものだ。

 話を聞いた時点で手伝うことは確定してしまうも同然である。


 エレオノーラが書庫内に入ってくる前から憂鬱な気分にさせられてしまいましたよ?

 食べてる途中だっていうのに面倒なのは勘弁してほしいなぁ。

 用意したシューマイ弁当がまずくなってしまうじゃないか。


 しかも先代の記憶の中ですら米は存在しないから御飯はストレージの魔法で回収しなきゃだし。

 大手を振って米が食べたいものだ。

 近隣諸国では存在しないみたいだけど、この世界にも米があるのは確実だからね。

 ここ最近は自重していたアカシックレコードを使って調べたから間違いない。

 何処にあるかまでは、あえて検索しなかったけど。

 探す手間を省いてしまうと現地産の米を食べる際にありがたみが薄れる気がしたからだ。

 クリエイションの魔法でいつでも──隠れながらではあるが──米が食べられるからこそ我慢できるところはあるのだけど。


「邪魔するわよ」


 やや不機嫌な声で言いながらエレオノーラが書庫に入ってきた。

 ズカズカといつもより大股で歩いて俺の前まで来る。


「あら、食事中だったのね」


 まるでランチタイムはとっくに終わっているかのような口ぶりだ。


「今がちょうど昼時ですよ。姉さんこそ食べないんですか?」


「それどころじゃないのよ」


 そう言った直後に姉の腹が盛大に空腹を訴える鳴き声を上げた。

 途端にばつが悪いと言わんばかりに赤面するエレオノーラ。


「姉さんも食べますか?」


 返事を聞く前に亜空間から熱々の湯気と匂いを放つ蒸籠を取り出すとギョッとした目を向けられてしまった。


「それ、何処から出したのよっ」


「何処って目に見えない空間ですよ」


 亜空間と言いたかったけど、この世界では一般的な単語ではないので分かりやすさを優先した返事をしておく。


「空間魔法のポケットを使うと御覧の通り状態維持ができるから便利なんですよね」


 本当はストレージなんだが刺激が強すぎるような気がしたので難易度が1段階下のポケットだということにしておいたのだ。

 そのおかげもあってか俺の返事を聞いた姉の表情から強張りが抜け落ちていく。


「空間拡張が使えるなら格納ができても不思議ではないわね」


「そういうことです」


 姉が納得したところで蒸籠のフタを開ければモワッと塊のように湯気が立ち上がり肉を蒸したとき独特の匂いが広がった。


「で、それは何かしら?」


「シューマイという肉料理です」


「これがお肉!?」


 エレオノーラは見慣れた焼き目の色がないために驚きをあらわにする。


「小麦で作った皮で包んでいますし蒸してあるから焼き目がつかないんですよ」


 俺の説明が耳に届いているのかいないのか、姉は遠い目をしていた。


「これは使えるかもしれない」


 意味深な呟きが聞こえてきた。


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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